第6話 かこ




 お偉いさんや研究用の庭に生えている竹の盗み食いを今はお金で解決しているが、お金で解決できなくなる時が来る。

 借金はもとよりその忠告も頭に強く刻まれていた和音は決意した。

 魔法使いに依頼することを。


(そう。師匠の庭の竹を無限に生えさせてもらうか。もしくは)


 笙斗のお腹の中にいる微生物を取り除いてもらって、竹を食べることを止めさせる。


 よりよい竜の玉を作ってもらいたい。

 だから、竹ではなく、とうもろこし石を食べてもらいたい。

 借金を返したい。

 この気持ちも無論ある。


 ただ。

 笙斗の身体を変化させてまですることなのか。

 いやもちろん、微生物を取り除くのは、金稼ぎのためだけではなく、いつか訪れるだろう未来を回避するため、竹が食べられなくなる苦痛を取り除くためでもあるのだが。


(やっぱり、微生物を取り除くのは、違う、かなあ。う~ん。竹、食べるの、好きなんだし)


 竹さえあれば。

 竹さえ、


 頭を抱えていた和音の脳裏に閃きが駆け走った。


(そうだ。もし、師匠の庭に無限に竹を生えさせることができないなら、過去に、竹があちらこちらに生えていた過去に時間移動してもらえばいいじゃん!で。過去で暮らそう!)


 そうだそうだそうしよう。

 膝を抱えていた和音は立ち上がって、ぴょんぴょん飛び跳ねると、竹を一本食べ終えた笙斗に言ったのであった。











(2023.12.8)



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