第5話 けつい




『申し訳ありません。竹の生育関連の情報は機密に当たりますので、研究職や議員職、魔法使いなど特定の職業の方しかご覧になれません。竜の育て人は該当しておりませんので、閲覧はできません』


 和音が竹の生育に関する書物を見つけられなかったので司書に訊いたところ、こう返答されたのである。

 当然かと納得すると同時に、和音は一つの疑問を抱いた。

 師匠の庭に生えている竹である。

 あれはどのようにして生えてきたのか。

 自然発生か、人工発生か。

 人工発生だとしたら、師匠はどのようにして発生させたのか。

 研究してどうにか発生させたのか。

 誰かから譲り受けたのか。


 和音が師匠から笙斗を託されてすぐに、師匠は産卵する竜に付き添うため竜木にこもったので、困ったことに笙斗のことをまったく尋ねることができない状態なのだ。


(あああもう!どうすりゃあいいんだあ!)


 図書館から戻り師匠の庭の前で膝を抱えていた和音は、師匠の庭に入って竹をもりもりと食べている笙斗を見た。

 自分まで手を伸ばしてかじりつきたくなるほど、実に美味しそうに食べている。

 けれど、師匠の庭の竹ももうなくなりそうだ。

 つまり、盗み食いは必須、ということだ。


(こ、こうなったら。しょうがない)











(2023.12.7)



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