第4話 たま
竜は基本的に人間の姿に変化しているが、頭には宝石珊瑚の原木のような形で、色はそれぞれ違う角を二本生やしている。
笙斗は十歳くらいの子どもの姿に、少しくすんだ朱の小さな角が二本、頭から生えていた。
「おーい!
両腕を大きく振って自分の育て人である少年、和音に向かって走ってくる笙斗はその手に一つの玉を持っていた。
竜の玉である。
創造過程は不明だが、竜は玉を作り、竜の育て人はその玉を、装飾品や衣服、薬、調味料などに加工して売って、生計を立てているのだ。
「ほい」
「ありがとう」
和音は笙斗から竜の玉を受け取った。
にこやかに笑いながら、内心では少し、かなりがっかりして。
今日も今日とて緑色だった。
大きさも重さも、ほかの竜より小さくて軽い。
とうもろこし石を食べているほかの竜は、両の手では収まり切れない大きさで、多種多様な色の竜の玉を創造するのだが、笙斗が創造するのは片手で収まる小ささで持てる軽さ、緑一択だ。
竹を食べているから。だろう。
有難いことに笙斗の竜の玉と自分の腕を買ってくれる固定客がいるので、売れていることは売れているのだが、それを上回る支出(竹支払い)。
(は、早く。図書館に行って、竹の増やし方を調べよう)
和音は笙斗に手をつなごうと言って、笙斗が自分の手をしっかり掴んだのを確認してから、ゆっくりと歩き出したのであった。
(2023.12.7)
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