第3話 あかん




(さて、理由はわかった。から。好きなだけ食べればいいさと言いたいところだけど)


 言えない。

 竹があちらこちらに生えていたのは、今は昔の話なのだ。

 国をあげての竹狩りが功を奏したのだろう。

 竹は減って、減って、減りまくって。

 今や立場が反転して、貴重で高価な植物になってしまったのだ。


(お金が。お金が。飛んでいく)


 あのこが、笙斗しょうとが、国立公園やら、お偉いさんの庭やら、研究用立ち入り禁止区域やら、保護区域やら、師匠の庭やらから、竹を盗み食いするたびに、お金がどんどんどんどん飛んでいく。

 自分は竜の育て人だ。

 確かに、竜のためならば、お金がどれほど飛んでいこうが、構わない。

 そう、公言できたらどれだけいいか。

 手元にある分はいい。どれだけ飛んでいこうと構わない。いや、本音は嫌だけど、しょうがない腹をくくろう。

 だけど、借金はあかん。借金だけは、


(うう。しかも、お金で解決できなくなりますよって忠告されているし)


 お腹に住んでいる微生物をなくせば、竹を食べなくなって、ほかの竜たちのようにとうもろこし石を食べてくれるようになるのではないか。

 魔法使いに頼めば解決できるのではないか。

 法外な金額を要求する魔法使いに。

 まず、魔法使いを紹介してくれる紹介人にも法外な手数料を支払い、その上で魔法使いに会って相談料を支払い、その結果、引き受けてくれるかどうかがわかり、引き受けてくれた場合、法外な成功報酬を支払わなければならない。


(いかーん。借金まみれになる)


 それならば、竹を育てる方に舵を切ってはどうか。

 幸い、師匠の庭で竹が育てられているのだ。

 これをもっともっと増やせば、どこぞの庭やら区域やらから盗み食い、しなくなる。


(といいなー)


 遠のきそうになった意識を身体に留めてのち、まずは笙斗を探してから図書館に行くかと、しゃがみこんでいた身体を立ち上がらせた。











(2023.12.7)



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