第2話 ほん




 今は昔、竹があちらこちらに生えていました。

 筍は食べられますが、筍が成長した竹は消化不良でお腹を痛めるので人は食べることができず、また、他の植物を喰らい尽くすうえ、成長も早く繁殖力も強く生息範囲を広げるため、厄介な植物として、国をあげて伐採をしたこともあるほどです。

 そんな悩みの種にもなったことがある竹を食べていた動物がいました。

 パンダです。

 パンダのお腹の中にいる特別な微生物が、消化して栄養分に変えてくれるので、竹を食べることができたのです。

 このパンダのお腹の中にいる特別な微生物を、竜に迎え入れることができたら、竜も竹を食べることができるんじゃないか。

 そうしたら、行動範囲が広い竜がたくさん竹を食べてくれて、竹問題は解決するのではないか。

 竜を育てる人がそう考えて、いっぱい研究をして、失敗に失敗を繰り返して、結果、失敗に終わったのでした。

 やっぱり、竹を栄養分に変えてくれるあの特別な微生物は、パンダのお腹でしか生きていられないのです。






「いや。成功してたんじゃないかな」


 師匠は産卵する竜につきっきりで世話をするため、あと一か月間は竜木から出てこないので、図書館に通い詰めて調べた結果、私は『竹とパンダと竜』という一冊の本に出合い、読み続けていく中で、雷が頭を直撃した。

 これだ。これに違いない。

 あのこが竹ばかり食べるのは、パンダのお腹にしかいないはずの特別な遺伝子が、お腹に住んでいるからだ。











(2023.12.6)



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