悪役王子、あまりにも強すぎるチート能力を手に入れる



 さて。

 ストーリーが一定まで進んだことで、俺は改めて下記のエクストラスキルを手に入れた。


――――――――――


【 使用可能なエクストラスキル一覧 】


・意識操作(小)

・身体操作(小)

・重力魔法 使用可


―――――――――――


 このエクストラスキルというのは、端的に言えばそのキャラだけが扱える固有能力だ。


 たとえばゲームの主人公の場合、「会話を思い出す」「地図化」といったような、まあよくありがちなスキルを覚える。


 ゲーム初心者にはありがたい能力とはいえ、さんざんやり込んできたゲームプレイヤーにとっては、もはや不要といってもいいスキルだな。


 だがこのエスメラルダ・ディア・ヴェフェルドは、作中屈指の闇落ちキャラ。


 だからどんなエクストラスキルを覚えるのかと思ったら――なんともダークすぎる能力ばかりだな。


 さすがに俺も使用したことのないスキルだったので、いったん確かめていくことにした。


 まずは意識操作のほうからだ。


「……とびきりうまい飯を作ってきてくれないか」


「かしこまりました」


 自室にて。


 若い召使いに対し、《意識操作》を使用しながらこんな命令を下したところ――。


 めっちゃうまい飯が運ばれてきた。


「…………って、こんなん当たり前じゃねえか‼」


 前世と比べれば信じられない状況だが、今の俺はエルフ王国でもトップに君臨している。


 普通に命令を下せば、それに従われるのは当然の話だった。


 ……仕方ない。

 じゃあこれをおっぱいの大きい女エルフに使用して、ムフフな命令に従わせるか……。


 いやいや、いかん。

 それではユリシアとやっていることが変わらないではないか。


 俺の憧れる悪役像というのは、自身の能力をそんな卑しいことには使わない。


 そういうこと・・・・・・は必要な時にだけ使うとしよう、うん。


 ということで、お次は絶対に俺の命令を聞かない相手――モンスターにこのスキルを試してみることにした。


「その場でダンスしろ」

「ピィ♪」


 エルフリア森林地帯にて。

 本来ならエンカウントと同時に逃げ出すはずのゴールデンアイアントが、俺の命令を受けて、愉快なダンスを繰り広げ始めた。


「おお……」


 もちろん、このようなことは過去に一度も経験がない。


 ゴールデンアイアントは獲得経験値が異様に高い代わりに、警戒心も高めに設定されているからな。


 敵前で無防備な姿を晒すというのは、普通なら絶対に考えられないことだった。


 じゃあこれがすべてのモンスターに通用するのかというと、そんなこともないらしい。


 結論から言えば、レベルの低いモンスター(現時点ではレベル50まで)の敵に通用するらしい。


 スキル名にわざわざ【(小)】という記載があることからも、これは成長型のスキルなのだと思う。

 レベルが上がっていくにつれ、対象範囲が広がっていくというあれだ。


 では一方で《身体操作》のほうはどうかというと――。


 こっちは《意識操作》と比べて、数段エグいものだった。


 最初に答えを言うと、意識だけ正常に保ったまま、身体だけを俺の意のままに操るスキルだ。

 本当は右に行きたいけど、身体がまったく動いてくれないとか……。

 そんなイメージである。


「こ、これ使い道あるのか……?」


 結果的な効果としては《意識操作》とそんなに変わらないしな。


 使い分ける意味が正直わからないが、このゲームは精巧に作られたストーリーRPGだ。もしかしたら何かに使えるのかもしれない、知らんけど。


 それから重力魔法。

 こちらのほうはわかりやすいな。


 対象者を定めて、重力の負荷を何倍にするかを定めることができるらしい。


 しかも自身に重力をかければ、戦闘勝利時に手に入る経験値も倍になることがわかった。


 重力を二倍にすれば経験値も二倍、重力を三倍にすれば経験値も三倍……といったように、倍増させた重力に応じて獲得経験値も増えるようだ。


「クックック……」


 そうとなれば話は早い。

 本来ならエルフリア森林地帯はもうレベリングに訪れる価値のない場所だが、経験値を倍増できるなら話は別だ。


 しかも《意識操作》を用いれば、ゴールデンアイアントの動きを封印できるからな。


 重力倍増によるデメリットを完全に帳消しにすることができる。


「もっと強くなってやろうじゃねえか、クックック……」


 ゲームのストーリー的には、はっきり言ってユリシアの陰謀は序の口。


 ここからかなり盛り上がっていくし難易度も上がっていくので、俺自身のレベルも上げていかないとな。


 ……まあもちろん、本当は廃ゲーマーとしての血が騒ぐだけだけど。

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