悪役王子をおっぱいで落とす大作戦

 一方その頃。


 私ことミューラ・カーフェスは、着々とあの方・・・と出会うための準備を進めていた。


 あの方というのは、もちろん第五王子エスメラルダ様のことだ。


 ……いや、もうじき国王になるらしいから、正確には国王エスメラルダ様と呼んだほうがいいか。


 私が住むバージニア帝国もまた、国内外に様々な問題を抱えている。


 特に現大統領のコーネリアスには何人もの政敵がおり、それにともなって現体制に不満を訴える者も多い。

 ザレックスを筆頭とする帝国神聖党などはまさにその筆頭だろう。


 ヴェフェルド王国に大きな変化が訪れた今、バージニア帝国にもなにかしらの変容が訪れるのは必然。


 本当はいけないことだが、ひっそりとエスメラルダ様にお会いすることはできないものか……。


 私の名刺は渡したし、エスメラルダ様もいつでも連絡してくれていいと言ってくれていた。


 けれど、その優しさに甘えてはいけない。

 国王となったばかりでお忙しいエスメラルダ様に、なんのメリットもなくお会いすることはできないだろう。


 ……でも私は、エスメラルダ様の趣味趣向を知っている。


 実際に彼の口からそう聞いたわけではないが、彼女は女の子の胸が大好きだ。それも大きいおっぱいが。


 だからこそ触ってほしいアピールをしていたのだが、さすがに公共の場でおっぱいを触るわけにはいかなかったらしく、一生懸命に我慢しておられた。


 さすがは私の大好きなエスメラルダ様。

 一時的な欲に捉われることのない、まさに最強のご主人様である。


 ならばこそ、私は秘密裏にエスメラルダ様のファンクラブを作っておいた。


 やっぱりエスメラルダ様は超モテる男で、私から布教などせずとも、エスメラルダ様のファンがまわりにちらほらいた。


 だから私のほうでファンクラブを結成し、いつかエスメラルダ様とお会いする時に、彼を喜ばせてさしあげたい。


 みんな可愛くておっぱいの大きい子だけれど、願わくは、私だけを見てほしい……。


 そう思うようになっていた。


 いずれにせよ、時がきたらまた、ファンクラブを連れてエスメラルダ様とお会いしたい。


 今度こそ、私のご主人様となってもらうために……‼

 政治の話よりも、大事なのは彼に私の胸を触ってもらうことなのだから。


★  ★  ★


 チュン、チュン……。

 のどかな鳥のさえずりで、俺は目を覚ました。


 俺の両脇では、際どい恰好をした剣帝ミルアに、エルフ王国の第一王女ローフェミア。


 二人がすやすやと寝息を立てながら、俺の片腕に抱き着いていた。


 ……ああ、二人のおっぱい最高に柔らかかったな。


 また聖戦をおっぱじめたい気持ちはあるが、しかし欲に溺れてしまっては真の悪役失格だ。


 いつでも泰然自若として、気を引き締める時はしっかりとせねばなるまい。


 …………けどまあ、なんだ。

 それはそれとして、このおっぱいは魅力的だよな。


「あっ……♡」

「ん……♡」


 俺はこっそりその柔らかさを堪能すると、その後は何食わぬ顔で衣服を身にまとうのだった。


 その後は召使いが持ってきた料理に舌鼓を打ち、そしてその後は、エルフ王国にて最高と呼ばれる露店風呂にて身を癒す。


 まさに不安ひとつない、贅の限りを尽くした一日を送っていた。


 ひとまずは三大国代表会議にて蓄積した疲労を癒して、きたるべきXデーに備えていきたいところだ。

 ヴェフェルド王国の使者からも手紙が届けられたので、近々、故郷にも王として顔を出す必要があるだろう。


 そんなふうに、露天風呂の湯に浸かりながら物思いに耽っていると――。


「エスメラルダ陛下・・、何か考え事ですか?」


 ふいに隣にいるミルアが声をかけてきた。

 ちなみにローフェミアは反対側にて俺と腕を絡めている。


「いや、なに。エルフ王国とヴェフェルド王国に大きな動きがあった以上、他国からも何かアクションがあるのが必然だと思ってな。そうじゃないか?」


「それは……たしかにそうですね」


 軍事力だけで見ればヴェフェルド王国をも上回る、オーレリア共和国。

 そして水面下にてユリシアに侵略され続けてきた、バージニア帝国。


 この二国は特に、ヴェフェルド王国の発展をよくは思っていないだろう。今後なにかしらの動きがあるのは必然だ。


 ひとまず、あのおっぱいの大きい巨乳・・・・・・・・・・秘書――二重表現ではない、大事なことだから強調したまでだ――ミューラからはしれっと名刺をもらってある。


 あいつも俺に心酔しているようなので、彼女を伝ってバージニア帝国の動向を探ってみるのが一番いいだろう。


 ゲームの物語的にも、バージニア帝国は重要な立ち位置を占めているしな。


 そしてその暁には……クックック、さらなるおっぱいハーレム要員を増やしていくのだ。


「大丈夫ですよ、エスメラルダ王子殿下なら」


 そう言って、ミルアが俺の腕を優しくさする。


「……私はやっぱり、強く思うのです。あのとき王国を捨ててまで、あなたについてきて正解だったと。エスメラルダ陛下こそが、世界を変えてくれるお方であると」


「…………」


「その直感は、なにも間違っておりませんでした。世界の中心はエスメラルダ陛下であり、エスメラルダ陛下なくして世界はない。だからきっと、今後なにがあったとしても、陛下なら切り抜けられる。そう感じるのです」


「ふ……そう思ってもらえるならなによりだ」


「わ、私もそう感じますっ!」

 ローフェミアもまた、俺の腕をぎゅっと握り締めて言った。

「エルフ王国も、精一杯エスメラルダ様に尽くします! だからどうか、私たちを見捨てないでくださいね……?」


「なにを言う。見捨てるわけがないだろう。絶対に」


 エルフという優秀な種族がいて、有用なレベルアップスポットが周辺にあって、レアアイテムも入手しやすい……。


 こんな超貴重な国を捨てるなんてとんでもない!


「はぁあ……。よかったです」


 ヤンデレのローフェミアはそう言って、ほっと安心したように胸をぎゅっと押し付ける。


「私たちもエスメラルダ様に一生ついていきます。ですから今後も、よろしくお願いします」


「クックック……。ああ、もちろんだ」


 二人の美少女に囲まれ、俺は極楽な露天風呂を満喫するのだった。

 露天風呂に入り、美少女に挟まれ、次の領地拡大の策を考える――。 

 クックック、最高に悪役っぽいじゃないか。


 またストーリーが一定まで進んだ恩恵か、ゲームと同じようにいくつかエクストラスキルが開放された。


―――――

【 使用可能なエクストラスキル一覧 】


・身体操作(小)

・意識操作(小)

・重力魔法 使用可

―――――

 

 そしてこれがまた、悪役王子の名に恥じない極悪っぷりなのだ。


 エクストラスキルというのは【調合】のような普遍的なスキルと違い、そのキャラだけが覚えられる固有スキルを指す。


 主人公では当然こんなの覚えなかったので、このスキルを今後使えるかと思うと……ワクワクするじゃねえか。

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