嫌われ者の悪役王子に転生した俺、今生こそ好き勝手に生きようと思ったら、無自覚に聖人ムーブをしていた件 〜悪の王国を作ろうとしているのに、なぜか皆に尊敬されてるんだが〜
私はエスメラルダ様におっぱいを触られたい
私はエスメラルダ様におっぱいを触られたい
――ブラッドデスドラゴンを倒してから三週間。
私ことローフェミア・ミュ・アウストリアは、エルフ王国の目覚ましい発展に驚きを隠せなかった。
王国軍兵士のレベルはいつの間にか平均40を上回った。
もともとの平均値はレベル10あたりだったので、単純計算で防衛力が4倍になったと考えられる。
ここエルフ王国の周辺はみな強いモンスターばかりだから、悪鬼によって精鋭エルフがほぼ動けなくなってからは、効率のよい特訓ができなくなっていた。
強いエルフに付き添ってもらい、強い魔物を倒して、効率よく経験値を稼ぐ――。
このような「鉄板の特訓方法」が、まったくできなくなってしまったのである。
エルフ誘拐を目論んでいたヴェフェルド王国に手が出せなかった理由もそれだ。
平和主義というのもあるが、単に軍事力が足りていなかったのだ。
――でも。
親愛なるエスメラルダ様がエルフ王国に来てから、その事情は変わった。
エスメラルダ様はまず、悩みの種だった悪鬼をたった一撃で打ち倒した。
それによって呪いにかかっていた精鋭エルフが以前通りに動けるようになり、この時点で国力の大幅な回復に繋がった。
それだけじゃない。
エスメラルダ様は効率の良いレベルアップ方法を知っているようで、この三週間で軍事力を4倍にしてみせた。
しかも非戦闘員に対しての教育も惜しまない。
まだ年端もいかぬ子どもたちが、軽々とラストエリクサーを作り出していた時は本当に驚愕したものだ。
こんな高価なもの、きっと大国たるヴェフェルド王国でさえそう簡単にはお目にかかれない。
それをまさか子どもたちが量産しているとなると、まずすべての国が腰を抜かすはずだ。
――そしてさらに、エスメラルダ様のすごさは他にもある。
なんとこの世界の成り立ちにも非常に詳しいらしく、世界中の国にどんな歴史があるのか、どうしてエルフは平和主義的な考えを持つようになったのか等々、私でさえ知らない知識を沢山広めてくれた。
そう。
エスメラルダ様は全知全能の神様。
世界の裏側をも知り尽くしている、とてもかっこいいお方。
本当にエスメラルダ様がこの国に来てくれてよかったと、私は強くそう思っている。
――だからこそ、もっと彼に興味を持たれたい。
エルフの王女というだけじゃなくて、女として私を見てほしい。
次第にそう思うようになった。
ミルアさんも時おりエスメラルダ様に艶っぽい視線を向けることがあるけれど、その気持ちが痛いほどによくわかる。
「…………」
だから私は、今夜もエスメラルダ様の客室前で立ち往生していた。
日中はエルフ王国の発展のために頑張ってくださっているのに、ご自身は贅沢な生活を送ろうともしない。本来はエスメラルダ様専用の部屋を作るべきところを、「必要ない」と突っぱねたままなのだ。
そうした謙虚なところも含めて――私は、彼を愛するようになっていた。
その手で触られたかった。
破廉恥だと思われても構わなかった。
彼に抱きしめられて、淫らな目で見られたかった。
私だけのエスメラルダ様になってほしかった。
でも。
――俺たちが真に結ばれるべき時は、ユリシアを倒し、エルフ王国に本当の平和を取り戻してからだ。そうじゃないか?――
エスメラルダ様のその言葉を思い出して、私は扉に触れようとしていた手をそっと降ろす。
そうだ。
彼におっぱいを触られるのは、もっとやるべきことをやってから。
今はこんなことに現を抜かしている場合ではない。
エルフ国民だって、自分を高めるために頑張り続けているのだから。
「ああ……わかってるのに、この切ない気持ちはなんなの……」
そう呟きながらも、私はもうこれ以上、エスメラルダ様に迷惑をかけたくない。
国力がここまで強化されているのであれば、ユリシアと相対する時は近いはず。今はそれに専念しなくてはならないだろう。
「愛しています、エスメラルダ様……」
そう言って、私は泣く泣く客室の前から離れるのだった。
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