悪役王子、なぜか子どもたちに尊敬される

「さて、それではラストエリクサーの作り方だが……」


 エルフの生徒たちは、俺の授業を超真面目に聞き入っていた。


 前世では当然、学校生活なんてクソだるいだけだったけどな。

 みんな俺の授業を聞きたくて仕方なかったと、話を始める前からうずうずしている様子だった。


 クックック……これもまた、俺への信仰心を高めさせているおかげか。


「この世界では希少アイテムとされているラストエリクサーだが、これ自体の生成はそう難しくない。調合スキルを5まで高めた上で、“エリクサー”と“世界樹の薬草”を組み合わせるだけだ」


 そう言って、俺は《エルフリアの森林地帯》から採取してきた二つのアイテムを懐から取り出す。


“世界樹の薬草”はなかなか見つからないレアアイテムだが、三百周もやり込んだ俺ならもちろん、アイテムのリポップ場所を知っている。


 だから特に何を思うでもなく“世界樹の薬草”を生徒たちに見せたのだが――。


「す、すごい……!」

「え、あれ本物……⁉」

「パパが一生に一度手に入ればいいくらいの薬草だって言ってたのに……!」


 美しい煌めきを放つその薬草を見て、生徒たちが一斉にどよめきをあげる。


「エ、エスメラルダ様。そんなに珍しい薬草を、まさか調合に使っちゃうんですか……?」


「ん? 当たり前だろ。温存するようじゃ持ってきた意味がないじゃないか」


 やはり子どもというだけあって、飛んでくる質問も可愛らしいものばかりだな。


 真に強い国を作り上げるためには、質の高い教育は必要不可欠。


 特にエルフ王国の周辺には優秀な素材が沢山あるので、この調合ができるようになるだけでも、飛躍的に国力が発展していくだろう。


 そうして無敵の王国を築き上げたあとは、もちろん、俺だけが利する体制を敷いていく。


 クックック……この子どもたちにも奴隷のように働いてもらう予定だからな。


 そのための先行投資は惜しまない。


 わざわざ調合スキルを5まで高めてきたのも、すべて子どもたちに正しい教育を広めていくため。決して中途半端な授業にはしないためだ。


「それじゃあ、見ていろよ。スキル発動――【調合】」


 俺がそう唱えると、それぞれ片手に持っていた“エリクサー”と“世界樹の薬草”が淡い光を放ちだす。


 ここで調合レベルが足りていないと失敗に終わるが、5まで達していれば、ほぼほぼミスることはない。


 果たしてその数秒後には、二つのアイテムが空中に消え――。

 俺の目の前には、瓶に詰められた“ラストエリクサー”が出現していた。


 味方全員のHPを全回復した上で、瀕死以外の状態異常をも完全に治してしまうチートアイテムだ。


 瀕死を回復できない点では、《世界樹の雫》には劣るけどな。


 それでも戦闘時では役立つこと間違いないので、これだけでも充分、世界の誰もが欲しがる希少アイテムと言えるだろう。


「す、すごい……!」

「ほんとにラストエリクサーだ……!」

「かっこいい……。エスメラルダ先生、本当になんでもできるんですね……」


 一気に驚きの声をあげる子どもたち。


 まあ、ラストエリクサーはどこのショップに足を運んでも滅多に見かけない希少品だからな。

 しかも値段もべらぼうに高いので、おいそれと購入できるものではない。


 子どもたちが興奮するのも至極当然のことと言えた。


「ふふ、そんなに驚くことではない。おまえたちもその気になれば、このラストエリクサーを大量に作れるようになるんだぞ」


「え……? 私たちが……?」


「当然だ。おまえたちは才能がある。調合レベルなどすぐに上がるだろう」


 俺がそう言うと、子どもたちが「わああああああっ!」と目を輝かせ始めた。


 まあ、スキルレベルは努力次第で誰でも上げられるもの。


 そこに才能の有無はないんだが、こうして生徒たちのやる気を引き出すのも、教師として大事な役目だからな。


 将来この子どもたちを奴隷のように働かせるためにも、今のうちに個々の能力を高めておいたほうが色々と得だろう。


「私たち、頑張ります!」

「一生エスメラルダ先生についていきます!」

「先生大好きです!」


 そう言って目をキラキラさせてくる生徒たちに、俺はやはり笑いが止まらない。


 クックック……。

 おまえらを徹底的に成長させて、立派な奴隷にしてやるからな。

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