第9話 タイムパラドックス

「何という魔力じゃ!! 師匠の魔力の上限がわからない。キノ様の攻撃力も防御力も数値の上限がわからない」


「ヒナ様にもわからないのですか。では、やはり相当なものですねえ」


 私が目覚めると、枕元で冥とヒナが話をしている。

 宿屋での一泊は、私の魔力を全快にしてくれました。


「ふん、あなた達程度じゃあ、そんなものです。キノ攻撃力を下げますよ」


「はい」


「おおおお、すごい、キノ様の攻撃力がどんどん減っていく」


 冥とヒナが驚いています。


「キノ、木の棒を両手に持って冥とヒナを叩いてみてください」


「はい」


「冥どうですか」


「大丈夫です。最低ダメージです」


「ヒナはどうですか」


「わらわは、冥より強い、冥が大丈夫ならノーダメージに決まっている」


「ひよっ子女神でも、神の端くれと言う事ですか。わかりました。これで二体のモンスターと戦えるのですから、成長も二倍というわけですね」


「ぐぬぬぬ」


 ヒナはひよっ子と言われたのが気に入らないようです。


「師匠、俺の補正を忘れています。二割増しです」


「ふん、二割なんてどうでもいいです。誤差みたいな物です」


「ぎゃははは、わらわは補正が五割増しになるぞ」


「大笑いするほどではありません。五割程度無いのも同じです」


「ぐぬぬぬ」


「さあ、朝食が終ったら。修行にもどりますよ」






 森に入り、キノはお坊さんのように、冥とヒナをポクポク木の棒で叩きます。

 冥とヒナも、キノを叩きます。

 これでキノの攻撃力と防御力が上がります。

 しかも二体なので倍の効果で上がります。

 おかげで私の魔力もザクザク必要となり、成長が止まりません。

 でも、やがてキノの成長に私の魔力の成長が追いつかなくなります。

 さすがに勇者と言う事ですね。


「ぎゃーーー!!!」


 冥が悲鳴を上げます。


「どうしました」


「師匠、キノ様に攻撃力ダウンを掛けて下さい。死んでしまいます」


「さすがに、私の魔力が追いつきません、休みが必要ですね。ヒナは大丈夫ですか」


「わらわは、まだ大丈夫じゃ。冥とは訳が違う」


「そうですか。キノ、ヒナだけは叩き続けて大丈夫です」


「はい」






 久しぶりに修行を休暇にして町に移動します。

 町は、いつもと変わらない……。

 人が増えているようですねえ。

 とりあえず、冒険者ギルドへ行ってみましょう。


「あら、師匠!! 久しぶりです」


 受付嬢まで私を師匠呼びします。

 まあ良いですけどね。


「ギルドの中に人がほとんどいませんねえ。どうしたのですか」


「町のまわりからなぜか魔獣が消えました。そうなると、低ランクの薬草採取程度の仕事があるだけです。多くの高ランク冒険者はこの街から出て行きました」


「わらわのおかげなのじゃ。わらわの聖なる力で、魔物は近寄れないのじゃ」


「あなたのせいなのですか。直ちに消してください」


 受付嬢が怒っています。


「ヒナ、消せるのですか」


「くそーーっ、わらわは偉いのに、怒られてばかりじゃーー」


「そんなことはどうでもいいです。聖なる力を消しなさい」


「わかったのじゃーー」


「すみません。うちのヒナが迷惑をかけました」


「い、いいえ。消してもらえば大丈夫です。ところで、ご存じですか。王都で再び、勇者召喚が行われたことを」


「えっ!? そうなのですか?知りませんでした」


「いよいよ魔王軍の侵攻がきつくなってきました。それなのに勇者が行方不明なので、大金を払って外国から魔導師を呼び寄せて、再度召喚をしたそうです」


「そうですか」


 いよいよ、歴史が変わってしまったようです。

 私の知らない事態が起きました。

 こうしてはいられません、王都へ行きましょう。

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転生したのはかつて自分が召喚された、自分のいる世界でした 覧都 @runmiyako

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