第38話



 十五階層は円形だ。

 コロシアムのような造りになっていて、障害物などはない。

 レヴィートとゴーグルがずんずんと進んでいくと、霧が集まっていく。

 まずはネオワーウルフが出現した。

 そして……それより一回り大きい体躯をし、王冠を頭にのせたキングネオワーウルフが出現した。


「来やがれ!」


 【挑発】を発動したゴーグルが、一歩を踏みこんだ瞬間。

 キングネオワーウルフがゴーグルへと突進する。

 まさしく、一瞬だった。一瞬でゴーグルまでの距離を詰め、キングネオワーウルフが背中全体でぶつかった。


「ガハ!?」


 まったく止めることなどできず、ゴーグルが吹っ飛ばされた。


 ……マジか。

 すべてのバフ魔法とデバフ魔法を使っているので、今の一撃でゴーグルでは荷が重いと分かる。


 すぐに立ち上がったゴーグルだったが、ネオワーウルフたちに襲い掛かられ、全身を殴り、蹴られていく。


 ……まったく反応できていないな。

 しかし、ミリナが魔法を即時発動していき、ネオワーウルフたちを弱らせていく。

 魔法の連発でミリナに注意が向くが、ゴーグルも【挑発】を連発しているので何とか時間は稼げている。


 ネオワーウルフたちを倒していくが、すぐにまた出現する。

 再出現されると、ゴーグルとの距離が離れているため、ミリナの範囲魔法も当てにくい。


 そのとき、レヴィートが背後からキングネオワーウルフへと突っ込んでいく。


「喰らいやがれ!」


 振りぬいた一閃が、キングネオワーウルフの背中を捉えた。

 だが、その筋肉に攻撃は阻まれる。

 ……かなり体力が高い魔物なのかもしれない。かすり傷程度で、刃は深くない。


 ぎろり、とキングネオワーウルフの視線がレヴィートへと向く。

 ゴーグルが【挑発】を放つが、僅かに遅れてしまう。


「あがっ!?」


 拳が振りぬかれ、レヴィートはもろに腹へと喰らう。

 それでも、フィアの【痛覚遮断】と回復魔法を受けていたレヴィートは、すぐに立ち上がる。


「おい! ちゃんとバフをかけろよ!」

「……もう全員に絶えず使ってるぞ」

「ちっ、相変わらず弱ぇな! 作戦変更だ! 追放者が使い物にならねぇから、前回のようにゴーグルが雑魚六体を引きつけろ!」

「任せろ! ったく、ほんと使えねぇな!」


 苛立ったようにレヴィートが叫び、ゴーグルも頷いた。

 ……やはりそうなるか。

 今回は俺から提案しなくても、レヴィートが言ってくれたな。


 イルンが動き、キングネオワーウルフへと攻撃を叩きこむ。

 関節を的確に狙っていて、それなりにダメージも与えているようだ。

 キングネオワーウルフの視線もイルンへ向く。


 その隙にゴーグルは六体にだけ【挑発】をあて、うまく二つのグループに分断できた。

 ……こうなれば、あとは耐久勝負だ。

 イルンはその速度でキングネオワーウルフを翻弄し、ミリナの魔法が叩きこまれていく。


 一撃で仕留めることはもちろんできない。だが、ミリナのやむことのない魔法の連撃に、キングネオワーウルフの動きも徐々に鈍っていく。


 ……やっぱり、後衛を強化するほうがいいよな。

 一方、ゴーグルは必死に耐えていた。

 フィアの回復魔法を受けながら、急所を外すように攻撃を受けていく。

 ……それでも、傷は増えている。


 レヴィートはキングネオワーウルフに攻撃をするのだが、どうにも相性が悪いのかかわされ、反撃をもらっている。


「レヴィート。ゴーグルの援護に向かったほうがいいんじゃないか?」


 レヴィートがネオワーウルフを多少引き付ければ、それだけゴーグルが動きやすくなるはずだ。

 キングネオワーウルフのほうは、イルンとミリナで十分押さえられている。

 あとは、時間の問題だろう。それよりも、いくら回復魔法を受けているとはいえゴーグルが危険だ。

 

「ちっ、てめぇが無能なせいでオレもゴーグルも危険じゃねぇかよ!」


 苛立った様子でレヴィートがゴーグルの援護へ向かう。

 レヴィートはネオワーウルフの背後から斬りかかる。

 中々の一撃で、ネオワーウルフは怯む。突然の攻撃にネオワーウルフたちは視線を向けるが、ゴーグルが【挑発】で再び引き付ける。


 ……十分だな。

 イルンはキングネオワーウルフの攻撃をかわしきり、ミリナが魔法を叩きこんでいく。


 ミリナの何発目かという魔法を浴びたところで、キングネオワーウルフは倒れた。


「……はあ、はあ……ちっ。かなり時間かかったな」

「……くそっ。もっとちゃんとしたバフ使えよな……」


 疲れた様子で息を吐くレヴィートとゴーグル。

 イルンは涼しい顔をしているが、この違いはなんだろうか?

 ……たぶんだが、イルンは普段から鍛えているからスタミナがあるのだろう。


 ……俺も、あまりスキルに頼りきりではいけないな。

 イルンが朝、走り込みをしているのは知っているので、今度から同行させてもらおうかな。


 とはいえ、無事戦闘は終了した。

 キングネオワーウルフが落とした素材を拾っていく。

 ……これをもっていけば、俺たちは晴れてBランク冒険者だな。


―――――――――――

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