第24話



 結局一日Bランク迷宮に潜り、俺のレベルは23まで上がった。

 とりあえず余っていたポイントで【筋力強化+】、【速度強化+】、【体力強化+】をとってからは、レヴィートも攻撃を当てられるようになってだいぶ改善した。

 ゴーグルも前よりは耐えられるようになったが、それでも敵の数が増えるといつもどおりのゾンビ戦法になってしまっていたが。


 ギルドへと戻り、素材の入ったリュックサックを渡す。ギルドに入る前くらいに【アイテムボックス】の中身をリュックサックに戻すのだが、かなり重たい。

 これをずっと迷宮内で持ち歩くことはまずできないな。

 精算が終わるまでギルドで待ち――


「124500ゴールドになりますね」


 ……稼ぎ自体は前回とあまり変わらないか。

 まあ、Cランク迷宮だと六体とかまとめて戦えていたからなぁ。

 Bランク迷宮に上がり素材の価値は上がったが、単純に討伐数が減ってドロップ数が減少したため、結果的に同じくらいの値段に落ち着いたということだろう。


 ゴールドを受け取ったレヴィートだったが、そこでギルド職員に呼び止められる。


「申し訳ございませんレヴィート様。少しお話がありまして……」

「ああ? なんだよいきなり?」

「レヴィート様方に依頼を受けてほしいのです。ギルドマスターがお呼びなので、二階まで来ていただけませんか?」

「はぁ? 依頼?」

「はい……。その今若い冒険者の面倒を見てくださっているリーナリア様が……迷宮の突然変異に巻き込まれてしまったんです」


 突然変異。

 ……迷宮のランクが急に変化してしまう現象だ。

 場合によってはGランク迷宮がSランク迷宮に変わることもあるそうで、冒険者たちにとっては命に関わってくる問題だ。


「リーナリア……だと……?」


 びくり、とレヴィートが反応した。

 人の名前に反応するということは知り合いなのだろうか?


 ただ、苛立った様子なのが気がかりだ。仲は……良くないとかだろうか?

 ギルド職員も慌てた様子で言葉を続ける。


「は、はい。リーナリア様が持っていた魔石から連絡が来まして……Eランク迷宮が、Cランク迷宮程になってしまったそうなんです……。今は何とか階段地帯に避難していますが、食料などもないそうなので……一刻も早く休日に行かないと全滅してしまいます。この街でCランク迷宮を攻略した実績があるのは……レヴィート様方のパーティーだけですので、お願いできませんか? もちろん、報酬もありますので……」


 Cランク迷宮なら、何とかなりそうではある。

 ……それに、困っている人がいるなら、助けたほうがいいだろう。

 俺もこの世界に来てから皆に助けられている。だから、純粋にそう思ったのだが……しかし、レヴィートは面倒くさそうな表情をしている。


「おい、魔石通話は今できるのか?」

「え? は、はい」

「ギルドマスターと話す前に、リーナリアと連絡させろ」

「わ、わかりました!」


 そこですぐにギルド職員が手配をする。

 やがって持ってこられたのは、加工された魔石だ。それを受け取ったレヴィートは、すぐに声をかける。


「おい、リーナリア。聞こえるか、レヴィートだ」

『レヴィート? ……どうしたの?』


 落ち着いた綺麗な声。

 これがリーナリアのもののようだ。


「おまえ、突然変異に巻き込まれたんだってな」


 小馬鹿にしたような声が響く。

 いつものレヴィートの様子に、さすがに空気が凍り付く。

 ただ、通話先にいたリーナリアは冷静な口調で話していく。


『うん。こちらの状況は何階層にいるか、分からない。【ダンジョンワープ】も変異した迷宮だと未到達エリア扱いされてしまって、帰れない』


 ……そうなんだな。

 となると、例えば二十階層にいて、突然変異に巻き込まれた場合……下手したら高ランク迷宮の奥地に取り残される、ということか。


「へぇ、それはざまあねぇな」

『……巻き込まれたのは、私だけじゃない。まだ冒険者なりたての子たちもいる。……お願い。助けに来て』

「それならおまえ、オレと付き合うか?」

『……は?』


 困惑の声だ。……いや、当然だよな。

 俺も同じ心境だ。


「助けてほしかったら、オレと付き合えよ。高額な報酬とかは別にいらねぇよ」

『……レヴィート。本気で、言ってる?』

「ああ、本気だぜ。いや、まあ別に付き合わなくてもいいや」


 そことで言葉を区切ったレヴィートは、下卑た笑みを浮かべる。


「一回ヤラせろ」

「おっ、レヴィートいいなそれ。オレも混ぜろよ」


 レヴィートの言葉に、ゴーグルも笑みを浮かべている。

 こいつらクズか?




―――――――――――

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