第17話




「え!? こ、こんなにですか!?」

「はい……今日はたまたま、運が良かったようなので」

「す、すぐに確認しますね」

「お願いします」

「それと、オレたちのランクアップも忘れんじゃねぇぞ」


 レヴィートが冒険者カードを差し出し、ゴーグルも同じく出す。

 それに合わせてミリナたちも出すのだが、俺は少し迷う。

 

「なあミリナ。俺のランクってどうなるんだ?」

「大丈夫よ。パーティーで攻略したんだから、もちろん一緒に更新できるわよ」


 そうか。

 冒険者のランクがあって何かメリットがあるのかどうかは分からないが、もらえるものはもらっておきたい派だからな。

 しかし、そこに口出してきたのは、不満そうな表情のレヴィートだ。


「はあ? 追放者何もしてないのに、更新するつもりかよ。図々しいな」


 ……そうはいうが、別に否定しているわけではないようだ。

 ミリナが再び何か言いそうだったが、フィアがそれを押さえる。人も集まってきたし、ここで喧嘩していると見世物にされるからな。

 俺たちはギルド職員に冒険者カードを預け、受付から離れた場所で素材の鑑定が終わるのを待ち――


「お待たせしました」


 ギルド職員に声をかけられ、俺たちは再び受付へと集まる。

 そして、一人ずつ冒険者カードが返還される。

 俺のにもちゃんとCという文字が追加されている。

 Gから一気にここまで上がれるのはいいな。


「素材に関してですが、すべて鑑定しまして合計で109000ゴールドになりますね」

「おっ、マジか。一回でこんだけ稼げるなんて珍しいな」

「今夜も遊びに行けそうだな」

「へへ、だな」


 レヴィートとゴーグルはにやにやといやらしい笑みを浮かべ、ミリナが呆れた様子でそちらを見る。

 報酬を受け取った俺たちはギルドを出たところで、レヴィートが足を止めた。


「今後の方針だが、この街の近くにBランク迷宮がある。ひとまず明日は休みにして、明後日からそこに潜るからな。ちゃんと準備しとけよ」

「それはこっちのセリフよ」

「今日のゴールドだが、宿の代金を省いた分を五人で山分けだ。宿はそろそろ更新だったよな? いくらだ?」

「一部屋食事つきで、3000ゴールドね。一週間まとめて借りたら一日分お得に借りられるから、18000ゴールドね」

「んじゃひとまず一週間分だな。三部屋借りたら……うげ、もしかして全然ねぇのかよ? いくらだ?」

「55000ゴールドでしょうが。……ねぇ、本当に五人で割るつもりなの? 今日の攻略ってどう考えてもレンのおかげでしょうが?」

「当たり前だろうが。そういう契約だからな。それと、追放者のおかげじゃねぇだろ。オレの攻撃でボスを弱らせたんだからな。どっちかっていうとオレのおかげだろうが」


 ちらと俺を見てくるミリナだったが、俺は別にそういう契約だから構わない。

 むしろ、簡単にCランクまで上げられたし、レベルも今は18まで上がっているのでそっちのほうが嬉しいくらいだ。

 一人で自力であげようとすると、たぶんもっと時間かかっただろうし、危険もあっただろう。


 五人でゴールドを山分けしたところで、俺たちはそれぞれで別れた。

 レヴィートとゴーグルは夜の街へと消えていき、俺たち四人は宿へと戻っていく。

 帰り道、俺はレベル18に上がって獲得したボーナスポイント25ポイントを、ステータスに割り振っておいた。

 ……ボス戦のときに削った分を戻しておきたかったからな。

 余った一は、とりあえず運に割り振っておいた。


 レン レベル18 筋力:7 体力:7 速度:15 魔法力:7 器用:0 精神:7 運:8

 ボーナスポイント:0(合計278)

 Sランク:【鑑定眼】、【ボーナスポイント獲得量アップ】、【魔力アップ】、【詠唱時間短縮】、【魔力自然回復量アップ】、【感知力アップ】、【筋力強化】、【体力強化】、【速度強化】、【速度弱化】【支援魔法強化アップ】、【偽装】、【魔法力強化】、【器用強化】、【精神強化】、【運強化】、【マナリジェネ】、【スタミナリジェネ】、【筋力弱化】、【並列魔法】、【隠密】、【体力弱化】、【精神弱化】、【武器強化】、【与ダメージ強化】、【スキル威力強化】、【支援魔法強化アップ+】

 Aランク:

 Bランク:

 Cランク:

 Dランク:【アイテムボックス】、【短剣術】、

 Eランク:

 Fランク:【ドロップアップ】

 Gランク:

 ユニークスキル:【ボーナスポイント再割り振り】




 

 次の日の朝。

 今日はこの世界に来てから初めての休日だ。

 休日は完全に個別で活動できるので、色々と試しておきたかったんだよな。


 そんな興奮もあってか、いつもよりも早くに目が覚めてしまった。

 ちらと窓へ視線を向けてみると、まだ外から日差しも入っていない暗い時間んだ。

 ……まったく。

 子どもじゃないんだからとか考えながら体を起こした俺は、ちゃぷん、という水音が聞こえた。


 なんだろうか? 軽い疑問とともに視線をそちらへ向けると――


「……」


 イルンがいた。

 彼は上機嫌な様子で体を洗っている。

 街には風呂などもあるにはあるが、入浴にお金がかかる。

 

 入浴に用意するお湯などは、スキルもあって比較的簡単に用意できるそうだがそれでもこういう世界なのだそうだ。

 だから、普段は水だけで汗を流す人も多いのだとか。

 もちろん、こだわる人は風呂まではいかずとも、個人で石鹸などを用意しもう少し丁寧に洗うそうだ。

 そして、週に一、二回程度、近場の銭湯などを利用して、きっちり洗う……というのがこの世界の基本らしい。


 女性陣はそのあたり気になるようで、ミリナとフィアは二日に一度は利用しているそうだが、レヴィートとゴーグルはまったく利用しないらしい。

 香水で誤魔化す、というのが基本ではあるが、イルンについては聞いていなかった。


 い、いや……今はそんなことはいい。

 俺はベッドで横になりながら、薄めで彼の様子を確認する。

 背中と僅かにだが見える体の前面……。


 イルンの容姿は整っている。男の目から見ても、中性的なイケメンであり羨ましいとひそかに思っていた。

 ……今は、そうじゃない。

 綺麗な肌、という感想だけでは終われない。


 僅かに見えた胸の膨らみ。

 まるで、女性であることを示すかのような胸の膨らみがあり、俺は驚く。

 

 男でも太っていると確かに胸の膨らみのようになることもあると思うが、イルンはどこからどう見ても痩せている。

 適度に鍛えられた体はとても健康的であり、その胸の膨らみは明らかにおかしい。

 ……彼の脱がれた女性物の下着がベッドに置かれている。


 それは、別におかしくない。いや、おかしいのだが……彼の趣味の一つで女性物の下着を身に着ける、というのがある。

 だから別におかしくはない。いやおかしいだろ……。ひとまず、それは脇に置いておく。


 だが、その胸の膨らみはありえない。


 一体何が、どうなっているんだ?



―――――――――――

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!


楽しかった! 続きが気になる! という方は☆☆☆やブクマをしていただけると嬉しいです!

ランキングに影響があり、作者のモチベーションの一つになりますのでよろしくお願いします!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る