第15話
「くそっ!」
フィアの魔法のおかげで、痛みはないのだろう。それでも攻撃を叩き込まれてよろめいたゴーグルは、結局背後のエリートハイゴブリンの攻撃もまともにくらってしまう。
「っ!?」
後ろからの攻撃に、ゴーグルの体が吹き飛んだ。
……隙だらけだ。
ゴーグルはそれでもよろよろと立ち上がり、フィアの回復魔法で治療される。
血みどろだったゴーグルだが、その回復魔法ですぐに傷は治療される。
立ち上がったゴーグルが再度【挑発】を放ち、さらに二体を引き寄せる。
エリートゴブリンたちに囲まれながらも、ゴーグルは果敢に戦う。
【挑発】の効果もあって、すべての魔物たちを引き付けたところで、レヴィートが動いた。
「喰らいやがれ! 【閃剣】!」
レヴィートの鋭い剣技が、エリートゴブリンの首を捉える。完全に隙をついた一撃だった。だが、エリートゴブリンは倒れない。
その一撃によって、一体の注意がレヴィートに向かうが、イルンがさらにその魔物の背後から両手の短剣を交差させるようにして、切り裂いた。
エリートゴブリンはそれで倒れたが、すぐにまた新しいエリートゴブリンが出現する。
「おい、切りねぇぞ!」
「……ただ、魔物の数を減らさないとさすがにゴーグルが耐えられないね」
「ちっ、くそっ! おい追放者! もっと支援魔法の効果を上げやがれ!」
……そう無茶を言われてもな。
今の俺の支援魔法は限界に近い。
……仕方ない。もう少し俺のステータスを削るとしようか。
【ボーナスポイント再割り振り】を活かし、俺はポイントを24ポイント捻出する。筋力、体力、速度、運をいい感じに減らしたのだ。
……正直、全身の気だるさというか明らかに筋力が落ちたと分かるが、これでSランクスキルでもあと3つ獲得できる。
皆が耐えている間に、俺は三つのスキルをSランクで取得する。
【与ダメージ強化】、【スキル威力強化】、【支援魔法強化アップ+】。
それらをレヴィート、イルン、ミリナの三人に発動すると、状況は大きく変わった。
レヴィート、イルン、ミリナがスキルを発動すればエリートゴブリンを一撃で倒せるようになった。
それでも、エリートハイゴブリンは強い。エリートゴブリンがいない時間を見つけ、レヴィートとイルンが攻撃をしていくが、中々削り切れない。
エリートゴブリンはおおよそ十秒間隔で再出現する。だが、六体までしか出現しない。六体目がやられたときに前の出現から十秒経っているとすぐにまた出現する……というギミックだ。
倒しても倒してもきりがない。……経験値も入らないみたいだしな。経験値が入るなら、このまま戦闘を続けてもらったほうが俺としてはにっこりできるんだけど。
このままでは埒が明かない。俺はバックステップをしたイルンに問いかける。
「イルン。エリートハイゴブリン一体なら、ディフェンダーとして立ち回れるか?」
「それなら大丈夫だけど……」
「フィア。魔力は減っているか?」
「いえ、減っていませんね」
それなら、何とかなりそうか。
「ゴーグル。エリートゴブリンにだけ【挑発】を当てることはできるか?」
「できるが、何が言いたいんだよ!」
なら、この作戦でいけそうだな。
「ゴーグルはエリートゴブリン六体を引き付け、イルン、レヴィート、ミリナでひたすらエリートハイゴブリンを攻撃するんだ。エリートゴブリンは倒してもすぐ復活するから、もう放置だ。今までのを見た感じ、ゴーグルとフィアで耐えきれるだろ?」
これなら、ゴーグルとイルンが持てば比較的有利に戦える。
だが、そこで言葉を挟んできたのはレヴィートだ。
「おい追放者! 何勝手なこと言ってんだよ!」
「このままだと乱戦状態になって、皆が危険にさらされる。明確に二手に別れたほうが、お互い集中できると思うんだが」
ゴーグルがエリートハイゴブリンの攻撃を喰らったときに、今の態勢が崩れかける。
その場合、ミリナが全体攻撃魔法でエリートゴブリンたちを一掃して態勢を戻すまでの時間を稼いでいるが……そもそも、ミリナに単体攻撃魔法を使ってもらって、エリートハイゴブリンに集中してもらったほうが圧倒的に効率が上がるはずだ。
戦闘時間が長引くほど、皆の集中力が切れてくるだろう。……ゴーグルだって痛覚を無視しているとはいえ、無敵ではない。
急所を攻撃されれば、普通に死ぬ。
だからこそ、エリートゴブリンたちに集中してもらい、こらえてもらいたい。
レヴィートは苛立った様子でこちらを見て、それから声を張り上げた。
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