第13話



 さらに戦闘を重ねていき、俺のレベルは16まで上がった。

 ボーナスポイントは合計41獲得し、途中色々とスキルをとっていった。

 真っ先に取得したのは【並列魔法】だ。複数の魔法を同時に使用できるスキルで、支援魔法使いには必須なのではと思ってしまった。

 これは想像通り、便利だった。

 これまで一つずつ準備していた魔法をまとめて準備できるようになった。


 今俺は、レヴィートに【筋力強化】、【体力強化】、【速度強化】を使っている。一瞬でこの三つを使えるようになったので、これまでよりかなり負担が減った。


 【並列魔法】はランクに応じて魔法の同時使用の効率が変わるようだが、Sランクになれば特にデメリットなく使える。【並列魔法】と【詠唱時間短縮】を使えば、様々な魔法を魔力が続く限り連発できるようになる、というわけだ。


 そして、戦闘中に魔力を使うことが増え、魔物に狙われることも出てきた。

 なので、【隠密】も取得した。これは盗賊系スキルの一つで、敵に狙われにくくなるというものだ。【短剣術】をDランクまで上げたときにはとれるようになっていた。

 今までは使う機会がないと思っていたのだが、これは後衛とも非常に相性がいい。

 【隠密】を取得してからは、魔法を連発しても狙われにくくなったしな。


 残りのポイントで取得したのは、【体力弱化】と【精神弱化】だ。これはこちらのダメージを上げるためのスキルで使い方は他の支援魔法と同じだ。

 こちらの攻撃が当たる直前に使えば、魔物もデバフを解除する暇もないので便利だ。


 そして、最後に取得したスキルが【武器強化】だ。

 これは、こちらの火力を上げるための支援魔法を探していたときに見つけた支援魔法だ。

 効果としては、武器自体を強化する、というものだ。初めは性能に関して懐疑的だったが、使用してみて分かったのは……明らかに剣の強度、斬れ味などが上がっていた。


 これまで中々刃の通らなかったエリートゴブリンを、レヴィートが簡単に斬っていたからな。


 ここまでで40ポイントを使い、残りは1ポイントだったので、【ドロップアップ】をFランクにあげて終了だ。


 レン レベル16 筋力:7 体力:7 速度:15 魔法力:7 器用:0 精神:7 運:7

 ボーナスポイント:0(合計253)

 Sランク:【鑑定眼】、【ボーナスポイント獲得量アップ】、【魔力アップ】、【詠唱時間短縮】、【魔力自然回復量アップ】、【感知力アップ】、【筋力強化】、【体力強化】、【速度強化】、【速度弱化】【支援魔法強化アップ】、【偽装】、【魔法力強化】、【器用強化】、【精神強化】、【運強化】、【マナリジェネ】、【スタミナリジェネ】、【筋力弱化】、【並列魔法】、【隠密】、【体力弱化】、【精神弱化】、【武器強化】

 Aランク:

 Bランク:

 Cランク:

 Dランク:【アイテムボックス】、【短剣術】

 Eランク:

 Fランク:【ドロップアップ】

 Gランク:

 ユニークスキル:【ボーナスポイント再割り振り】


 スキルはだいぶ取得してきたが、取った矢先からまた新しい強化魔法が出てくる。

 おかげで、まったくステータスを強化できていないが、現状特に困ることはないのでとりあえずは良しとしよう。


 現在俺たちがいるのは九階層だ。

 なんだかんだゴーグルが崩れない場所まで進んでいた結果、ここまでくることができた。


 現在時刻は夕方だそうだ。イルンが持っていた時計で確認していたが、まだレヴィートは帰る気配を見せない。

 再び、九階層での戦闘が始まる。

 イルンから出現については教えられていたので、すでに全員へすべてのバフをかけている。


「よし、こい!」


 現れた六体のエリートゴブリンたちを見て、即座にゴーグルが【挑発】を放つ。

 そこにすかさずフィアが、【痛覚遮断】のスキルを放ち、ゴーグルの援護体制に入る。

 エリートゴブリンたちがゴーグルへと迫り、それぞれ持っていた武器を叩きつけていく。


 ゴーグルは、すべて捌けるほどの力はない。剣と盾で防いだが、魔物を弾けるほどのステータスは持っていない。

 押し込まれるように他のエリートゴブリンたちの攻撃をくらい、腕や足に傷を負っていく。


 ただ、急所は避けている。フィアの【痛覚遮断】の影響もあり、ゴーグルはまったくダメージを感じていないようで笑顔さえも浮かべている。


 ……これ、あんまり正しいディフェンダーではない気がする。

 まあゴーグル本人は気にしていないようだからいっか。


 ゴーグルはひたすら【挑発】を放ち続けているので、そちらに【マナリジェネ】で支援しつつ、エリートゴブリンたちにすべてのデバフ魔法を叩き込む。

 これでもう俺のやることはない。あとは、バフとデバフを維持し続けるだけだ。

 バフ魔法は皆1分程度持つので、どちらかといえば、デバフを維持するほうが大事だ。


 エリートゴブリンがデバフを解除するように全身に魔力を込めている。そして、解除されたそばから、すかさずそこに叩き込む。

 苛立った様子で魔法を使っている俺を探し出したが、俺の【隠密】とゴーグルの【挑発】連打のおかげで標的にされることはない。


 ゴーグルにばかり注目が集まっている間に、レヴィートとイルンがそれぞれの武器を叩き込む。

 【武器強化】の影響もあるからか、それまでエリートゴブリンの皮膚に阻まれていた彼の武器はすっと紙でも斬るかのように通った。


 レヴィートは力強い一閃で、イルンは舞のような動きとともにエリートゴブリンの首を跳ねる。

 血は出ない。魔物たちの体は霧で構成されているため、首からは霧が吹きだし、魔石を二つドロップする。


 【ドロップアップ】の効果もちょっとは上がったか? そんなことを考えながら、バフ魔法の状態を【鑑定眼】で確かめる。

 ……レヴィートから順番に切れそうになっているので、【並列魔法】でそれぞれに使用する支援魔法を準備し、効果時間が0秒になって消えた瞬間にバフを再度使用する。


 前衛がそれだけ動ければ、後衛も自由だ。

 準備を終えたミリナが範囲魔法を放った。

 【ファイアトルネード】だ。火の竜巻は【魔法力強化】も影響しているようで、それまでとは比べ物にならないほどの範囲だ。

 天井にまで届く火の竜巻は、エリートゴブリンを飲み込み、ゴーグルも飲み込まれる。


 ……ただ、パーティーを組んでいると味方の攻撃スキルなどの影響は受けないらしい。

 だからこそ、俺たちはパーティーを組んでいるというわけだ。


 エリートゴブリンたちは全員消滅し、アイテムをドロップしていた。

 フィアはゴーグルの細かな傷を完全に治療し、これで戦闘は完全に終了となる。

 戦闘を終えてすぐだった。ミリナが声をあげる。


「ちょっとレヴィート。もうそろそろ帰ってもいいんじゃないの?」

「今日はボスモンスターの攻略まで行くって言ってるだろ」

「はぁ? それ本気なの? いくらレンが増えて余裕が出てきたからってさすがにボスモンスターはいきなりすぎない?」

「さっさとランクを上げたくなったんだよ」

「別に急ぐ必要ないでしょうが。とりあえずもう少しレベル上げて、それからでもいいんじゃないの?」

「セオリー通りならな。レベル40くらいまではここであげて、それから挑戦したほうがいいかもしれないが……そこの追放者が、それなりに使えることは分かったからな」


 レヴィートは……俺を褒めたわけではないようだ。すぐに馬鹿にしたような笑みを浮かべた。




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