第10話




 支援魔法使い。

 これは思っていたよりも大変で奥が深いかもしれない。

 始めは、後ろでのんびり前衛の強化をしていればいいと思ったが、どうにもそういうわけではないようだ。


 まず、支援魔法の効果時間が人によって違う。


 これは恐らく、それぞれが持つ魔法への耐性が関わっているのでは、というのがフィアの話だ。


「回復魔法もそうですけど、相手の抵抗力が高いとそれだけ本来の回復量よりも下がってしまうんです。所詮、他人の魔力ですから体が拒絶しちゃうんですよね」


 ……だ、そうだ。

 それは攻撃魔法もそうだ。相手の抵抗力が高いと、ダメージが通りにくいそうだ。

 

 また魔力への抵抗力はそのときの体の状態でも変わってくるようだ。


 調子がいいときは抵抗力が高くなり、より効果時間が短くなる。

 調子が悪いときは、抵抗力が低くなるため、効果時間が長くなる。


 それは少し歩いて疲労しているとき、休んだあとの状態でも変わる。

 効果時間がまったく同じというのは滅多にない。


 そして……もっとも厄介なのが、バフのかけなおしができないことだ。

 効果時間中は、再度のかけなおしができないため、効果が切れた瞬間にすぐかけなおす必要がある。

 ゲームとかだと、切れる前にもう一度使えばいいのだが……この世界ではそれができない。


 効果が切れたタイミングは本人の感覚が変わるらしいので、教えてもらわないといけないが、戦闘中に教えてもらうのは時間の無駄になる。


 だから、なるべくこちらで判断して、無駄のないように支援魔法を使う必要がある。

 最初はこれが滅茶苦茶大変だと思ったし、支援魔法使いが少ない理由もよくわかる、となったのだが……レベルアップでボーナスポイントに余裕が生まれ、【鑑定眼】を手に入れた今、状況が変わった。


 これは相手のステータスを見るだけではなく、そのときの状態を確かめることもできる。

 バフやデバフ、その他状態異常状態についての効果時間もだ。


 なので、【鑑定眼】を使っていれば、誰があと何秒で効果が切れるか一目で分かる。

 ほぼ無駄なく、支援魔法を常に維持できるようになってからは、非常に楽だ。


 【鑑定眼】はどちらかというと商人とかが使うものなのかもしれないが、支援魔法とも滅茶苦茶相性がいい。

 そうして、順調に戦闘を重ね、俺たちは次の階層へと進む。


 話し合った結果。今の俺たちなら問題ないという判断だ。

 階層が進めば出現する魔物の能力は上がり、数も増える。それでも、今の俺たちなら勝てるのでは、と考えている。


「支援魔法使いがいると……こんなにラクになるものなのね」

「これならCランク迷宮も攻略できるかもしれませんね」


 ミリナとフィアの言葉に、レヴィートが笑みを浮かべる。


「はっ。この程度の支援魔法使いでも、ってのは間違えないようにな。本職の奴らならオレたちはSランク冒険者になってるかもしれないんだぜ?」


 本職の人を俺は知らないので、今の俺が支援魔法使いとして正しいのかどうかも不明だ。

 あまりいないらしいので、参考に見させてもらうなんてこともできない。

 とりあえず、俺は俺のやり方で支援魔法使いとして強くなっていくしかないだろう。


 二階層に降りたところで、俺の仕事は変わらない。

 俺はバフ魔法とデバフ魔法をばらまきつつ、魔物の標的にされないように後退しているだけ。


 ……戦闘中に魔法を使うとどうやら敵の注目を集めやすくなるからな。

 何度か近づいてきた魔物をイルンに倒してもらっていた。

 イルンは前衛が集中できるように立ち回るのが仕事だ。


「前に来た時は苦戦したけど、二階層も問題なさそうね」


 ミリナの言葉に、レヴィートは余裕げに笑う。


「オレたちのレベルも上がってるからな。ひとまず、まだオレ様が一撃で敵を倒せるし、倒せなくなる階層まで行ってみようぜ」

「そうね。ていうか、レン。ずっと魔法使ってるけど魔力は大丈夫なの?」

「今のところは問題ないな」

「そうなのね。レンの魔力、かなり多いのかもしれないわね」


 ……実際そこまで多くはないんだけどな。

 前衛二人に支援魔法三つ使うと、三割くらい減っている。

 ただ、【魔力自然回復量アップ】で誤魔化しているだけである。


「支援魔法って大して魔力使わないだけなんじゃないか? 追放者が多いなんてありえねぇよ

「追放者だって例外もあるんじゃないの? 今のところレンは役立ってるんだからあんまりそういう言い方するんじゃないわよ。聞かされるこっちもムカついてくるわよ」

「はん。そんなに追放者の肩持つとか、おまえも追放者なのかよ?」

「違うわよ。現状を正しく評価しなさいっていう話よ」


 ミリナが苛立った様子でそういうが、レヴィートの態度は特に変わる様子はない。

 

「まあまあ、ミリナ。そう怒るな」

「あんたがまったく怒らないから言ってやってるのよっ」

「別に俺は気にしてないから、ミリナも気にするなって」

「……はあ、まったく」


 俺だってまったく不満を覚えていないといえば、嘘になる。

 でも、俺が怒ったからってレヴィートたちの態度が変わるわけではない。

 ミリナを宥めつつ、俺たちは迷宮を進んでいく。

 俺に関しては、別に評価してくれてもしてくれなくてもどちらでも良い。


 今は経験値さえ稼げればな。

 このCランク迷宮の魔物は、レベル35程度のようだ。

 だからか、俺のレベルアップ効率もなかなかだ。


 半日ほど迷宮に潜り、現在の俺のレベルは7から13まで上がった。

 他の人たちも、レベル2程度は上がっている。


 ここまで成長できたのは彼らのおかげだ、感謝しかない。



―――――――――――

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!


楽しかった! 続きが気になる! という方は☆☆☆やブクマをしていただけると嬉しいです!

ランキングに影響があり、作者のモチベーションの一つになりますのでよろしくお願いします!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る