第8話


「ふふ、ミリナもそうなるといいですね」

「なるわよっ。あたし今成長期なんだからね!」

「……そういえば、皆って何歳くらいなんだ?」

「あたしは、今20歳よ。あんたは?」


 ……成長期すぎたのでは?


「俺は……たぶん、23歳くらいだったかな? その、あんまりちゃんと記憶がなくてな」

「そうなのね。それで、フィアは19歳。イルンは17歳よ。一応言っておくと、レヴィートは20歳、ゴーグルは19歳ね」

「そうなんだな……ってことは、俺が最年長になっちゃうのか」

「そうなるわね。これからは最年長の座はあんたに譲ってあげるわ」


 ミリナが笑顔とともにライスを食べ、おかわりに向かう。

 ……速い。あの小さな体のどこにそんなに入るのだろうか。

 そんなことを考えていると、フィアも微笑を浮かべる。

 ライスを山盛りにして笑顔とともに戻ってきたミリナに、フィアが声をかける。


「ミリナさんは、人間族ですから成長期はもう終わってると思いますが、成長したらいいですね」

「うるさいわよ! 諦めなければなんとかなる可能性はあるわっ! ねえイルン!?」

「でも、諦めが肝心という言葉もあるよ」

「ふんっ。あたしはナイスバディを手に入れてやるんだから」


 そういって、ミリナは食事を食べていく。……ナイスバディとか関係なく、彼女の食欲は凄まじい。

 そして、フィアのアルコール欲もだ。

 ミリナのライスのおかわりと、フィアのアルコールのおかわり。……ほぼ同じペースである。ただし、フィアのアルコールは追加料金が発生するので、フィアの支払いではあるが。

 

 ……パーティーのメンバーに関しては、なんとなく分かった。

 レヴィート、ゴーグルの二人はそれなりに仲が良く、ミリナ、イルン、フィアの三人もそれなりに仲が良いと。

 この二つのグループで完全に分かれてしまっているが、まあ誰も孤立していないのはいいと思った。


 ……俺も、孤立しないようにしないとな。




 朝食の後。

 深夜に戻ってきていたレヴィートとゴーグルたちと向かい合っていた。


「なるほどな。それで、オレたちのパーティーに入りてぇと」

「ああ」

「レヴィート。こいつ追放者だぜ? 大した成長も見込めないやつをパーティーに入れても意味なくないか?」


 レヴィートは眉間を寄せ、ゴーグルもあまり乗り気じゃない。


「そうだが……まあ、支援魔法使いを見つけるのが難しいからな。それまでの繋ぎっていう話なら別にいいけどな」

「本当か?」


 思っていたよりもすんなりと話が通ってほっとする。

 しかし、レヴィートは笑みを濃くする。


「ただし、てめぇは追放者の無能だ。報酬などに関してはこれまで通りの五等分だ。最低限、宿とかの生活費くらいは負担してやる。それで文句がなかったら、入れやるよ」

「ちょっと! それってパーティーっていうか仲間じゃないでしょ!?」

「うるせぇな。パーティーのリーダーはオレだぞ? そもそも大したレベルでもないんだろ? 文句があるなら入らなければいいだけだ。まっ、追放者を受け入れてくれる冒険者がいるのかって話だがな」


 レヴィートは完全にこちらの足元を見ている。

 ただまあ……仕方ないよな。

 俺の立場は、レヴィートのいう通り決して強くないんだしな。


「分かった。宿、食事代だけ負担してくれればそれで大丈夫だ」


 俺の発言に、レヴィートたちも納得が言った様子で頷いた。


「それなら、代わりが見つかるまでの間は面倒見てやる。お前ら、今日はCランク迷宮に挑戦する予定だ。行くぞ」


 レヴィートがそう言ってリュックサックをこちらに渡してくる。

 行商人が持っているような大きなリュックサックだ。

 今はまだいいが、ここに素材を入れていくとなると結構な重量になりそうだ。

 自分に支援魔法を使って、ステータスを強化したほうがいいかもしれない。

 【筋力強化】、【体力強化】、【速度強化】は常に切らさないように使用していく必要がでてくるかもしれない。


「ここに回収した素材とかは入れる。支援魔法しか使わないんだから、おまえが荷物持ちをやれよ」

「了解だ」

「そんで。こっちは回復用のポーションだ。傷の治療と魔力回復用の二つがあるからな」


 レヴィートがさらに、ポーチを二つ渡してくる。

 そちらの中には、すでに荷物が入っている。

 瓶に入れられたポーションが10本ずつ。計20本入っていた。


 これがポーションか。

 よくゲームや漫画などで見ているので、試しに飲んでみたい衝動にかられたが、パーティーを追い出される原因になるかもしれないので好奇心はぐっと抑えた。

 すべて身に着けたところで、ちらとこちらに視線を向けたのはミリナ、イルン、フィアの三人。代表するようにミリナが問いかけてきた。


「レン……なんか、その色々いいの?」

「俺を追放者と分かったうえでパーティーに入れてくれるだけでも十分だからな。レヴィート、ありがとな」


 声をかけると、レヴィートはにやりと笑う。


「ふん。ありがたく思えよ。そういうわけで、ゴーグル。別にいいだろ?」

「ま、オレの報酬が減らないなら別にいいぜ」

「ほらよ。追放者、パーティー申請送っておいたぜ」


 ……確かにレヴィートからパーティー申請が届いていた。

 へぇ、こんなゲームみたいなシステムがこの世界の人たちにとっては一般的にあるんだな。


 それを了承する。メニュー画面の中に、パーティー一覧というのもあり、そこで今いるパーティーメンバーの名前を見ることができた。


 そのままレヴィートたちは歩いていき、俺たちもその後ろについていった。


 ……俺としても、まだ戦闘に慣れているわけではないし、この世界にも詳しくない。

 色々な面を考慮すると、このパーティー……正確に言うなら、俺に優しくしてくれるミリナたちがいるここに所属できたほうがいいと思っている。

 ここでできる限り情報を集め、いずれ来るであろう別れのときまでに異世界で生きていけるだけの知識、技術を身につける。


 ……レヴィートの話しぶりからして、冒険者として生活する場合はソロになりそうだけど。

 それでもまあ、自由に動けて、自由に生きていけてる。

 それだけでも十分だ。



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