第6話
あの膨大なスキルの中から何が必要かを見定めることができるかどうかの。
……強そうなスキルがいくつもあったが、それらを獲得していては恐らく使いこなすことはできないだろう。
【ボーナスポイント再割り振り】と【ボーナスポイント獲得量アップ】。
最低でもこの二つは取得していなければ、この世界では平均レベルの強さを得ることはできなかったはずだ。
……俺が選んだこのスキルたちだって、もしかしたら地雷の可能性もある。まだまだ気は抜けないな。
あんだけ目移りするようなスキル一覧の数々を見せておいて、必要なスキルが決まっているなんてあの声の主はずいぶんと意地悪だ。
この世界の情報なんて何もないと言うのにどう判断すればいいのやら。
ギルド職員は一枚の板を持ってきて、そこに手をかざす。
板が光を放つと、そこには俺の名前と冒険者ランク、サポーター(支援魔法使い、追放者)と書かれていた。
Gランク冒険者か。まあ、まだ何もしてないのだから当然か。
「こちらが、あなたの冒険者カードになります」
「ありがとうございます」
渡された冒険者カードを眺める。
……普通なら、この冒険者カードがあれば初対面の相手でもパーティーなどを組みやすいのかもしれないが、追放者という文字ですべて台無しになってしまっているのだろう。
それでも、これで身分証明は手に入れた。追放者だとしても、ギルドによって身分を証明してもらえている立場のほうが何かといいはずだ。
「これで完了となります。何かあればいつでも相談してください」
冒険者カードを受け取った俺はぺこりと頭を下げ、ミリナたちとともにギルドを出た。
外に出たところで、フィアが笑顔とともにこちらを見てきた。
……そこにレヴィートたちから感じた嫌悪のようなものは感じられない。
「それにしても追放者だとは驚きましたね」
「……そんなに驚いているようには見えないぞ? フィアは別に嫌じゃないのか?」
「はい。私、一応教会に所属していたときにそういった方々と接する機会が多かったんです。教会は様々な人の救済を行っていますので」
「そうなんだな」
「ですので、もし心配であれば教会に案内しますので、いつでも申してくださいね。あっ、すみませんミリナさん。私アルコール切れてきたんで、そろそろお酒飲みに行きますね」
「……ああ、もう分かったわよ。ほら、行ってきなさい」
ミリナがそう答えると、
「僕は……古着屋に行ってくるよ。掘り出し物の女性下着があるかもしれないからね」
爽やかな笑顔で何を言っているんだこいつは。微笑を残し、イルンは歩きさっていった。
ミリナは不満げに頬を膨らませてから腕を組む。そして、こちらを見てきた。
「ねえレン。あんたこれからどうするのよ?」
「……とりあえず、パーティーに入ってレベルを上げたいんだけど、このパーティーに入れてもらえると思うか?」
「え? うちに……? でもあんた追放者でしょ? 危険じゃない?」
ミリナは俺のことを本気で心配してくれているようだ。
「まあ、危険かもしれないが……レベルをあげればボーナスポイントはもらえるみたいだからな。それで、何かしらのスキルを獲得して生活できるようにしたいと思ってな」
「うーん……まあでも、レヴィートも支援魔法使いは欲しいって言ってたし、代わりの人が見つかるまでは入れてもらえると思うわ。でもいいの? たぶん……色々と雑用とかも押し付けられると思うわよ?」
……さっきのレヴィートたちの様子を見るに、その姿は手に取るように想像できてしまった。
ただ、それでも……高レベルの冒険者たちにレベリングを手伝ってもらえる可能性がある状況を手放すことはできない。
「でもまあ、ミリナがいるしな」
「うえ!? い、いきなり何よ……っ。どういう意味よ!?」
「追放者でも優しくしてくれてるし……そういう冒険者を見つけるほうが大変だと思ってな」
「別にあたしは優しくとかしてないわ……っ。普通にしてるだけ!」
「なら、普段から優しいってことだな」
「……っ! ああ、もう! それ以上アホなことぬかすなっ。……ほら。あたしたちの宿まで案内するから、ついてきなさい!」
「おお、ありがとな」
「どういたしましてっ」
レヴィートとゴーグルに明らかに敵視されているが、それを差し引いても、追放者にここまで優しくしてくれるミリナがいるパーティーに参加できれば、今後の生活が楽になるはずだ。
もちろん、もっと仲良くできるパーティーを見つけられる可能性はあるが……さっきのギルドの反応を見るに、その道は至難だと思ってしまった。
レヴィートたちが、新しい支援魔法使いを見つけるまでの間、お世話にならせてもらおう。
それである程度レベルを上げ、ステータスとスキルを自由に選択できるくらいのボーナスポイントを獲得したところで、俺は独立すればいい。
レヴィートもこっちを利用するんだ。こっちも存分に利用させてもらおう。
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