第4話


 それにしても、異世界の人たちは全員容姿が整っているのがデフォルトなのだろうか?

 俺は支援魔法使いだからか、後衛組のミリナとフィアの間くらいに収まっていた。


 レヴィートとゴーグルが先導し、万が一に備えてイルンが最後尾についている。

 【鑑定眼】で確認したが、イルンは盗賊系のスキルを所持していて、【感知力アップ】も習得していたしな。彼が背後にいれば、奇襲される可能性もないだろう。

 そんなことを考えていると、フィアがひょこりと顔を覗いてきた。


「それにしても、支援魔法が使えるなんて珍しいですね」

「……そうなのか?」

「支援魔法使いはなかなかいないんですよ。そもそも、支援魔法って難しいですからね。志望する人はあまりいないし、支援魔法系のスキルボード所持者が少ないんですよ」

「……そうなんだな」


 支援魔法系のスキルボード所持者が少ない?

 わざわざ、そう表現するということは……俺のスキルボードは彼らとは少し違う……?


 ……役割をもって戦闘をしているのは、彼らは【ボーナスポイント獲得量アップ】を持っていないからだと思っていた。

 一人で複数の役割をこなそうとすると、ポイントがかつかつで足りなくなるから……と。


 しかし……実はそうではない?

 もしかして、スキルボードってすべて解放されているのはありえないのだろうか?


 俺が特別で、すべてのスキルボードが解放されている……とかか?

 だとしたら、フィアの発言も理解できる。

 ……どうにも、この世界の常識のようなのであまり質問しないほうがいいだろう。


「他のタイプのスキルボードも所持しているんですか?」


 フィアが続けて質問してくる。

 ……これに、頷いても大丈夫だよな?


「一応、持ってるな」

「でしたら、支援魔法というのはいい選択をしましたね。ある程度の実力があれば食っていけますから。酒にギャンブル、やりたい放題です」


 やりたい放題ではないだろう。

 ただ、この話をしていて分かったのは、人によって解放されているスキルボードがいくつかあるというのは確定でいいだろう。

 そして、そこから人々はスキルを選んで獲得していく、と。

 目を輝かせているフィアに、ミリナが呆れた様子で答える。


「あんた、またそんなこと言って……教会に怒られるわよ?」

「大丈夫ですよー。聖女の仕事はバイトですから」

「聖女ってバイトで務めるものなのか?」


 この世界の常識がまだ理解しきれていないな。

 俺の問いに、ミリナが苦笑する。


「いや、しないわよ。この子、もともと教会の所属だったんだけど、酒とギャンブルをやるために聖女の立場捨てて冒険者になっただけ。まあ、聖女関係のユニークスキルを持ってるから、たまに手伝ってるんだけどね」

「そんな、人をダメ人間みたいに言わないでくれますか? 安心してください、レンさん。聖女として振る舞えと言われれば、多少は振る舞えますからね」


 多少かい。

 そう思ったが、口には出さず苦笑を返しているとミリナが呆れた様子で声をかけてくる。


「まあ、このパーティーの常識人はあたしくらいしかいないわ。フィアはこんな感じだし、レヴィートとゴーグルは女好きでいつも夜の店に行くし。イルンは女性の下着を集めるのが趣味。入るなら、覚悟しなさい」


 ……まあ、癖のある人たちではあるが今の俺よりかなり強い。

 彼らのもとで、レベルアップできれば安全に強くなれるよな?

 それに、支援魔法だけでいいなら、俺が前に出て戦う必要もないしな。


「ミリナ。誤解しないように。僕はあくまで、誰かが履いたあとの下着じゃないとダメだからね? そして――ブラは大きいのじゃないと盗る気もしない。だから、安心してほしい」


 美しい顔で、なんてことを言うんだ。


「悪かったわね! 胸なくて!」


 ミリナがぶちぎれ、フィアがここぞとばかりに胸をアピールしていた。

 ……ミリナとフィアの間には絶望的な格差があった。

 そんなことを話していると、街が見えてきた。

 街は壁に囲まれており、その壁の上には見張り台が設置されている。かなり立派な街だ。


 ……まだこの世界のすべてを把握できたわけではないが、見たところ大都市と呼ばれるような場所ではないだろうか?

 街には何か所かの門から入れるようになっているようだ。

 先頭を歩いていたレヴィートがこちらを見てくる。


「そういえば、冒険者登録とかしてないんだよな? まず、ギルド行って受付しないとな」

「すぐ……登録はできるのか?」

「ああ。名前とスキルの確認で終わりだな」

「……そうか」


 スキル、となると少しまずいよな。

 他の人たちに比べ、俺のスキルやステータスはおかしな部分がある。

 ……どうにか誤魔化したほうがいいだろう。


 盗賊系スキルを探していると、【偽装】のスキルを見つける。これは、ステータスやスキルを誤魔化すためのもののようだ。

 ……どこで誰に見られるか分からないし、常にこれは所持しておいたほうがいいかもしれないな。

 一般人……とまではいかなくても、普通の冒険者として振る舞ったほうがいいはずだ。少なくとも、力をつけるまでは。


 下手に目立ち、誰かの嫉妬をかいたくはない。

 とりあえず、道中の人たちのステータスを確認しながら、ステータスを調整する。

 できた。

 これが、俺の【偽装】されたステータスだ。


 レン(偽装) レベル7 筋力31 体力:31 速度:32 魔法力:35 器用:38 精神:36 運:32

 ボーナスポイント:0

 Sランク:

 Aランク:

 Bランク:

 Cランク:

 Dランク:【詠唱時間短縮】

 Eランク:【筋力強化】、【体力強化】、【速度強化】、【体力弱化】、【速度弱化】

 Fランク:

 Gランク:


 周りの人を見た感じ、このくらいなら違和感はないようだった。

 というか、周りの人たちを見た感じ、レベルとスキルの数やステータスの数値が俺と比較して多いんだよな。


 例えばレベル1の段階ですでにいくつかスキルを持っている人もいる。

 俺と同じようにボーナスポイントをもらっているとかなのだろうか? それとも、スキルを生まれた瞬間から持っているとか?

 そういえばフィアも、ユニークスキルで、【聖女の力】を持っていた。


 よく分からん。

 ステータスの偽装は終えたが、とりあえず俺の正規のステータスも見直さないとな。


 まず確定しているものから行こうか。【ボーナスポイント再割り振り】は確定。

 【ボーナスポイント獲得量アップ】と【偽装】はSランク確定。

 【偽装】をとるには、【短剣術】Dランクと【感知力アップ】Sランクも必要なので、ここまでは割り振る。


 ここまでで、29ポイントだ。残りは108ポイント。

 攻撃魔法は……ひとまずいいとして、ステータスも全体的に割り振っておいたほうがいいかもしれない。

 運の数値が低いせいで、さっきのオークキングに遭遇した可能性もあるしな……。


 ただ、器用はたぶん今のところ使わないよな? これは0のままでいいか。

 器用を除いたステータスを7まで割り振り、速度は15ほどにしておく。これで合計50ポイント使ったので、残りは58ポイント。

 あと欲しいものは、ひとまず支援魔法使いとして誤解されているのでその関連のスキルか。

 支援魔法も魔法なので、まずは【詠唱時間短縮】Sランクが必須だろう。残りは50ポイント。


 【筋力強化】、【体力強化】、【速度強化】、【体力弱化】、【速度弱化】を取得したらもうほとんど使い果たすな。

 俺のパッシブスキルとして、【魔力アップ】、【魔力自然回復量アップ】【支援魔法強化アップ】も欲しいんだよな。

 ……とりあえず、【魔力アップ】、【魔力自然回復量アップ】、【支援魔法強化アップ】をSランクで取得しようか。


 これで残りは26ポイントだ。これで五つのスキルを獲得していくのだが、まあ支援系の魔法を優先して取得すればいいだろう。

 なので、【筋力強化】、【体力強化】、【速度強化】をSランクで取得し、【体力弱化】と【速度弱化】をGランクで獲得。

 これで完成だ。


 レン レベル7 筋力:7 体力:7 速度:15 魔法力:7 器用:0 精神:7 運:7

 ボーナスポイント:0(合計137)

 Sランク:【ボーナスポイント獲得量アップ】、【魔力アップ】、【詠唱時間短縮】、【魔力自然回復量アップ】、【感知力アップ】、【筋力強化】、【体力強化】、【速度強化】、【支援魔法強化アップ】、【偽装】

 Aランク:

 Bランク:

 Cランク:

 Dランク:【短剣術】

 Eランク:

 Fランク:

 Gランク:【体力弱化】、【速度弱化】

 ユニークスキル:【ボーナスポイント再割り振り】


 これで完成だ。ステータスは他の人たちより劣るくらいだが、スキルのランクとパッシブスキルの数で誤魔化している。

 中々の支援魔法使いになれたのではないだろうか?

 そんなことを考えていると、ギルドに到着した。


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