第3話
魔物と遭遇しないまま、森の外へと出ることができた。
このまま森にいても仕方ないので、街を探して歩いていく。
その途中で俺は自分の格好がかなり怪しいことに気づく。
森を歩いていたこともあって服は全体的に汚れが目立つ。
……街についたら、色々とやりたいことがあるな。
そもそも、街を見つけなければ意味のない話だ。
途中、喉が渇いたら、【ウィンドショット】を水系の魔法に変えて水分補給をする。
自分の魔力から生み出した水で水分補給できるのだから便利だ。
整備された道はないが、人が踏み固めてできたけもの道のようなものはある。
足跡のようなものに【鑑定眼】を使用するとその詳細を見ることができた。
まだ比較的新しくできた跡のようだ。【鑑定眼】がSランクだからか、そういったことも分かる。
これは便利だ。
人が通ったということはそれを操る誰かしらがいるということになる。
ひとまず、この道を頼りに進んでみようか。
そんなことを考えながら移動していく。 木々や岩々が並ぶ草原を観光気分で眺めていると……魔物と人が交戦している気配が感じ取れた。
道から少し離れた場所だ。そちらへ向かって歩いていくと、木々の奥――五人組の男女が戦闘を行っていた。
【鑑定眼】で軽く見てみると……魔物も人もレベルが高い。
魔物のレベルは31で、五人組のレベルは平均20後半ほどだ。皆きっちりとした装備に身を包んでいて、それぞれの役割に分かれて戦闘を行っているようだ。
「……くっ! おい! 回復しろ!」
盾を持っていたディフェンダーが叫ぶと、すぐにヒーラーが回復を行う。
アタッカーは剣士と魔法使いか。さらに、短剣を持った人もアタッカーではあると思うが準アタッカーという感じだろうか? ディフェンダーの人が崩れたときに、変わりにディフェンダーを務めているなど、なんでもこなしている感じだ。
そんな五人組が対面している魔物は――オーガキングというようだ。
レベル差はあるが、五対一ということもあり互角に戦えてはいるようだ。
ただ、拮抗状態であることに違いはない。
……俺の魔法がどの程度通用するか分からないが、援護したほうがいいか?
【ウィンドショット】を準備しようと思ったが……少し迷う。
ここで俺が倒してしまったら「横取りだ!」とか言われないだろうか?
だとしたら、補助くらいに徹したほうがいいかもしれない。
まだ戦闘は続いている。
……その間にスキル構成を見直す。
攻撃魔法ではなく、支援魔法を獲得していこう。
【ウィンドショット】、【魔法威力アップ】、【鑑定眼】を外し、【筋力強化】、【体力強化】、【速度強化】の魔法を獲得する。……【魔法威力アップ】は、魔法のダメージをあげるのか? それとも支援魔法の強化もするのか? 分からなかったので、ひとまず外した。
支援魔法もかなりあるな。味方を強化するのはもちろん、敵を弱体化するものもだ。
とりあえず、あのパーティーのメインのアタッカーは剣士のようだ。彼の攻撃が通りやすいように支援魔法を調整していこう。
さらに【魔力吸収】と【短剣術】、【感知力アップ】を外し、デバフ魔法として、【体力弱化】、【速度弱化】を獲得する。
残りのポイントで、【支援魔法強化アップ】も獲得してから、彼らのほうへ声をかけることにする。
……どのくらいの感じで声をかければいい? 相手は同い年に見えるが、敬語がいいか?
だが、あまり下手に出すぎると……舐められないか?
そんなことを悩んでいると、ディフェンダーが弾かれた。
あまり悩んでいたら大変なことになるかもしれない。
とりあえず、俺は支援魔法を使用してみることにした。
【筋力強化】と【速度強化】を剣士に使用し、ディフェンダーに【体力強化】と【速度強化】を使用する。
まだ余裕があったので、【体力弱化】と【速度弱化】をオーガキングに使用する。
「え!?」
「な、なんだ!? 体が軽くなったぞ!?」
「……必要ないかもしれないが、支援魔法を使わせてもらった」
……結局、そんな意味深な雰囲気とともに俺は登場する。今の俺ちょっとかっこすぎたか? なんて少し恥ずかしく思いながら。
俺に対して驚いたような視線も集まるが、すぐに剣士のアタッカーとディフェンダーはオーガキングへと向かっていく。
その動きは、先ほどよりも明らかに違う。
オーガキングは俺のデバフを自力で解除してくる。……そういうこともできるのか。
なら、剣士の攻撃が当たるこの瞬間だな。
剣士が突っ込んでいき、剣を振り上げたその一瞬に、【体力弱化】を放つ。これなら、解除は間に合わないだろう。
「くらえ! 【ブレイクバースト】!」
剣士の一閃が激しい音をあげ、オーガキングの体を吹き飛ばした。
オーガキングが吹き飛び、その体が動かなくなった。
……戦闘は終了したようだ。
「……よしっ! なんとかなったな!」
「これならもうCランクパーティーを名乗ってもいいんじゃないか?」
「さすがにそれはまだ早いだろ」
剣士とディフェンダーの人が嬉しそうに話していた。
ほっとしたように息を吐いているのは、後衛の魔法使いとヒーラーだ。
俺はそんな彼らの様子を見ながら、レベルを確認する。
レベル7か。ボーナスポイントは22に増えていた。
俺が倒したわけではないが、経験値は入っているんだな。
……貢献度とかか?
レベル差もあったので、俺にとっては多い経験値だったのかもしれないな。
もしも、俺がトドメを差していたらもっともらえたかもしれないが、こればかりは仕方ないな。
少しでももらえただけ喜ぶべき……なのだろうか? これはこれで横取りでは?
まずいのではないだろうか、と冷静に考えていると、剣士の男性がこちらへやってきた。
「さっきの支援魔法、助かったぜ。あんたも冒険者なのか?」
穏やかな雰囲気の彼に、俺も笑顔を返す。
「いや……冒険者というか……迷子になっていたというか」
そういうしかないが、疑われないだろうか?
不安に思っていたが、向こうの反応は予想していたものとは違った。
「え? あんたじゃあ、冒険者登録とかしてないの? ていうか、どこのパーティーにも所属してないのかよ?」
どこか期待するような声音だ。俺はそれに対してゆっくりと頷いた。
「してないが」
「なら、オレたちのパーティーに入ってくれよ。今ちょうど支援魔法使いを探していてな。そいつさえ見つかればSランクパーティーにだってなれるはずなんだよ!」
……Sランクパーティーというのはたぶん、かなり大変なんだろうな。
いきなりパーティーへの勧誘をされて驚きはあったが、彼らはせっかく出会えた現地人だ。
パーティーを組む組まないはともかく、街までは案内してもらいたい。
「まだ、冒険者とかもよく分からなくて……ずっとそういうのとは無縁で過ごしてきてな。とりあえず、街についてからまた考えてもいいか?」
「それはまた珍しいな。オレは、レヴィートだ。あんたの名前は?」
「俺は、レンだ」
「そんじゃ、よろしくなレン。んじゃ、さっさと街に戻ろうぜ」
レヴィートがそういって歩き出し、俺は彼のあとをついていくように歩き出す。
それに合わせ、メンバーの人たちが挨拶をしてくる。
「オレはゴーグルだ。このパーティーじゃディフェンダーを務めてる。さっきの支援魔法助かったぜ、ありがとよ」
がたいのいい男性がそういって、盾を背中に背負い、レヴィルの隣に並ぶ。
あとは短剣を持っていた男性と魔法使いとヒーラーか。
短剣の男性は容姿の整った爽やかなイケメンだ。
目が合うと微笑を浮かべた。
「僕はイルンだ。パーティーだと、アタッカーとディフェンダーの兼業かな? 前二人の状況を見て動いている感じだよ。よろしくね」
「あたしはミリナよ。魔法アタッカーみたいなものね。ま、パーティーに入るならよろしく」
「私は、ヒーラーを務めているフィアと申します」
……とりあえずこれで全員か。
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