第2話 酷すぎる答弁

「ここは協調王国だ。お前は誰だ?」


 王様らしき人物が、上から目線で俺に尋ねる。聞くまでもなく、知っているだろ。出かかった台詞を飲み込み、丁寧な言葉で説明をした。


「私はホンニ民主国の元総理、ゼイーダ・ゾーゼイです」

「そんな国、私は知らんな。誰か知っているか?」


 王冠を被った王様に尋ねられるも、部下らしき人物たちが、一斉に目を逸らし、首を横に振っている。ダメじゃないか、お仲間は大事にしないと。


「みんな知らん様だぞ。お前、どこかで頭でも打ったんじゃないのか?」

「そんな事実はございません」

「ならお前の言うホンニ民主国が、どんな国か説明してみろ」


 俺は思った。ここは適切に対応をして、相手を注視していく方が良い。


「先送りできない課題にスピード感を持って、遺漏なく取り組む。そんな国でございます。ですが、時に慎重に考えることも大事にしています」

「ほう。どんなふうに考えるんだ?」

「検討を加速させるのです」

「検討を加速……?」


 本気で理解が不能という顔をしながら、王様が首を傾げている。王様の知らない表現を使った以上、説明責任は果たすべきだろう。


「簡単です。ただひたすらに検討を繰り返していくのです」

「なるほど。よく分からんがまあいい」


 そう言うと王様は、指パッチンで白くて丸いオーブを出現させた。


「ここにオーブがある」

「そうですね」

「これに手を触れれば、お前が思った通りのスキルを手に入れられるんだ。どうだ?このスキルで私たちの世界を救ってくれ」


 俺は検討に検討を重ね、最善の方法を模索した。


「分かりました。では、そのオーブに触らせてください」

「よかろう」


 王様の導きに従い、俺はオーブの前まで移動した。もう答えは見えている。今の俺に、後戻りなんてできるわけがなかった。


「これでスキルが手に入ったんですね」

「ああ。悪いが一応、お前のスキルを見せてくれないか?」

「もちろんです」


 俺は、期待する王様と、その部下に囲まれながら、手にしたスキルを惜しげもなく、披露することにした。

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