最弱チート『検討士』

刻堂元記

第1話 先送りしてきた後悔

 なんてツイてない人生なんだ。何かあるごとに他人の責任にし、自らに降りかかる災難をすべて払いのけてきたというのに、身体には病気を治すほどの体力が残っていないらしい。治療や手術を医師から提案されても、どうにかなると思って、その都度拒否してきたからだろうか。


(思えば、先送りばかりの人生だったな……)


 俺はいつも、重要なことをその場しのぎで先送りしてきた。だが最終的には、何もしないという選択を尊重した。なのにどうだろう。俺は、オトモダチ以外から感謝された記憶がない。


(別に良いじゃないか。みんなが稼いだ金で遊んだって)


 何が悪いと言うんだろう。俺は国民の税金で、視察という名の旅行を楽しんでいただけなのに。どうして国民は、些細な問題に、そこまで神経質になるのか。


(第一、俺を選んだのは国民だろ)


 総理を指名する選挙。そこで俺は、国民から選ばれ、与党議員から選ばれて、総理に就任した。にも関わらず、批判は日を追うごとに増えていった。


『早く首相を辞めろ』

『余計なことをするな!』

『海外に資金をばら撒くな!』


 なぜそんな批判が出るのか。少なくとも、俺はそんなことを言われる筋合いはない。海外には積極的に投資してきたし、貧困した国民を救うために、増税の実行を決断した。しかし、政策は全く評価されなかった。


(何かあるたびに聞く力をアピールし、政権幹部に不祥事が見つかれば、国民の望むとおりに辞任や更迭をしてやったというのに)


 俺は、先送りしてきた人生に多くの後悔を感じながら、なぜ、総理として国民に支持されなかったのか、その答えが分からず永遠の眠りについた、はずだった。だが俺はすぐに目を覚まし、驚きの声を発してしまった。


「ここはどこだ……?」

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