第5話 ドブさらいを始めましょう

 ドブさらいというけれど、この世界にとってドブとは家庭の汚水を川に流す仕組みだ。基本的に詰まる様なものは流さないルールになっているけれど、底に少しづつ砂や泥が溜まっていく。

 木の蓋がされているけれど外れてしまっている場所はあるし、そこから風で舞い上がった木の枝なんかが侵入すれば、詰まって流れなくなってしまう。そうなると汚水がドブからあふれ出し木の蓋が浮き上がって汚水が逆流したり、道路に汚水があふれ出す事になる。

 定期的に底の泥や砂を掬い取れば良いのだけれど、悪臭が凄いので誰もやりたがらないという状態のようだ。

 役所に行って口入屋から受け取った紙を手渡すとギョロっとした顔をされるけどきちんと受付が行われた。

 重い木製の蓋を外す金属製の引っかけ棒と泥を救ったり攪拌する道具と木製の平たい道具と泥を運ぶためのバケツが手渡され仕事の範囲を示された。

 道具を壊したり紛失したら報酬から引くと説明を受けたので、術理を使っても良いか聞いたら、汚れをドブの周囲に飛び散らせなければ問題無いと説明を受けた。


 依頼された範囲は汚水の流れが緩やかで溜まりやすいとされるスラムの横のドブだった。蓋が外れて溢れている場所もあるけれどスラムの人は気にしないらしい。

 このままここの流れが滞るとスラムの外でも蓋が外れて汚水が溢れる事になるだろう。よくもまぁここまで放置し続けた事だと呆れてしまう。


 蓋が外れないのなら上流の方から水を流して押し流してやりたいところだけど、下流が既に詰まって居るのならそれは無理だろう。だから下流側から汚泥を川に流してやった方が良さそうだと思った。

 汚水が川に流される場所はすごい悪臭がしていた。溢れていた場所に比べて流れて来る量が少ないので、途中で詰まっている事がよく分かった。

 ドブの奥からは猛烈な臭いが噴き出してガスでも発生しているのではないだろうか。火を近づけたら着火して爆発とかなったりしないだろうな?


 下流側5か所の蓋を外していくと、詰まっている場所が見つかった。

 水の術理を使って流して詰まった泥を柔らかくしながら木の平たい道具でかき混ぜていくと詰まりが外れて一気に流れ下っていく。

 しばらく猛烈な勢いで流れるけれどすぐにそれが治まっていく。

 もっと上流に詰まっている場所があってそこも除去しないと上流まで綺麗に流れてくれないだろう。

 まだまだ依頼された範囲の最初だ、ずっと先まで続けないといけない。

 僕は先の蓋を外しては新たな詰まりを取り、そのつまりがまた下流で溜まるので、そこの詰まりを取って川まで流したら蓋を取って新たな詰まりを探しに行くという作業を繰り返していった。

 段々上流の詰まりになるたび川までの距離が長くなって大変だけど、依頼された仕事の範囲はしっかりやって、きちんと報酬を受け取りたい。そう思いながらドブさらいの仕事を続けていた。

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