第4話 口入屋で仕事を探しましょう

 術理を練習していくと、時は時間、空は空間、聖は浄化や回復、魔はデバフという事も分かって来た。バフに関する術理はないようなのでステータスをあげる事がそのままの強化と思っていいようだ。


 水汲みの手伝いを終えたら固いパンと水みたいなクズ野菜のスープという朝食があり各自自由時間となる。

 不真面目な人は部屋でゴロゴロして過ごしたりただ広場で遊んで時間を潰すけれど、真面目な人は独り立ちの時の為に剣術の真似事をしたり術理の練習をしたり、外の手伝いをして手間賃を稼ぎにいったりして居る。

 ニケロは来たばかりという事もあるけど、浮世離れした部分があったため生活に馴染めず周囲からは貴族出身の馬鹿と思われて居た。だからなのか食事の時にパンを奪われて居たし、泣きべそかいても誰も助けなかった。どんくさいと押し倒されたり叩かれたりしていた。カカラに蹴られたのも僕が何をしたら良いから分からず手伝いの時間にベッドに転がっていたのも原因ではあったけれど、元貴族だからと嫌われていた事に原因があった。


 僕は自由時間を外で過ごして情報収集をする事にした。孤児院を出る事はいつでもできるけれど、出るには生活の手段を見つけなくてはならない。

 それにニケロは多くのステータスポイントを5歳にして持っていたし、攻撃力以外のステータスが年齢にしては異常に高かった。3歳から5歳まで受けていたあの虐待の様な生活のおかげだとすると体を無理に酷使すればステータスが上がったりポイントを得られるのではと考えた。それなら無駄に体を酷使するより働いてお金にする方が良い。

 けれどこの街は僕を捨てた親が管理する領地にある。

 僕のステータスは高いけれど年齢があがれば今の僕にも匹敵する様な存在は居る。

 あのウィンドウ画面にはステータスが100近くありスキルの熟練度が5以上ある存在が何人か居た。僕のステータスはともかくスキルは最高な状態ではない。


 手間賃を稼いでいる人はスラムの口入屋にお願いしている人が多い。役所の組合窓口で仕事を斡旋しているけれど、7歳以下の仕事は基本的には無いのでそちらに頼むしかない。

 スラムの口入屋に入ると仕事求めるスラムの孤児や孤児院の孤児が張り紙が張られたボードの前で喧嘩の様な事をしている。

 受付にギロッとした目つきの男が居るけれど特に静止はしないようだ。

 僕もそのボードを見ると雑用が書かれた紙がいっぱいあるけど争奪戦が行われた理由が分かった。ドブさらい、荷運び、庭の草むしり、食堂の皿洗いと芋の皮むきなどが貼られて居るけれど、賄いが付くという食堂の皿洗いと芋の皮むきをみんなやりたいからだった。

 15人は子供達が居るけれど3人分しか求人が無いからそうなるのだろう。

 僕はその争奪戦に加わらず給料が高い怪しい薬の実験台とドブさらいの張り紙を取ってギロッとした目つきの男の所に持って行った。


「これの話を聞きたいんだけど」

「おめえはあれに加わらねぇのか?」

「賄いは魅力的だけど給料が安いからね」

「給料が高いからってドブさらいはきついぞ?」

「体は丈夫なんだよ」

「依頼失敗なら金は出ねぇからな?」

「大丈夫だよ」

「ふーん・・・ヒョロっこく見えるけど大丈夫なのかよ」

「その辺のゴロツキには負けない自信があるよ」

「それなら大丈夫か?」

「任せてよ」

「まぁ・・・ずっと塩漬けになってた依頼だからな・・・良いか・・・」

「嫌われてる仕事なんだねぇ」

「大人がやらねぇから給料が安いスラムの子供に回って来る仕事だしな」

「なるほどね」

「じゃあこの紙持って街の役所に行け」

「ありがとう」


 ギロッとした目つきの男から受け取ると争奪戦を勝ち抜いて僕の後ろに並んでいた子供に受付を譲り、ボードの前で別の仕事を探し始めた子供の前も抜けて口入屋を出た。

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