第7話、ピルスナーとハンバーガー

ハンバーガーショップ。


ちょっとレトロなアメリカンなお店。


2方向に開け放たれた店内は日影だけど明るく、草息れな風が流れる快適空間。


目の前にはお皿にハンバーガー。


細かいフライドポテトに濃いオレンジ色のチーズディップソース。オリーブオイルと塩胡椒のサラダに、野菜ステックが並んでいます。


「え?うさぎさんがお肉?」

「お前、なんかそれ、ハンバーガーがうさぎ肉みたいだろ」

「これ、ビーフ?」

「やめろよ、お前、そこ、疑うなよ」


シロさん、めっちゃ嫌そうな顔してハンバーガーをナイフとフォークで綺麗に切り分けています。


「やっぱ、ハンバーガーはコーラだな」

「です、です」


「うさぎになってから食べ物とか変わらない?」

「変わんねーな。そもそも菜食に近いし」

「あー、すいません。宗教さんはちょっと」

「お前、どうしてそんなに全方向に喧嘩売らないとダメなの?」

「まさか。そんなつもりないですよ。あ、このポテトにチェダーソース、まじうま。それください」

「遠慮なく食べるのは、まあ、気分いいからいいけどよ。サラダ食えよ」

「もしよければどうぞ」

「にんじんばっかじゃねーか。残すな!カロチン!」


細かいシロさんに、にんじんを食べさせられてしまいました。


「ほれ、あーん」

「お嫁に行けません!」

「いつの時代だよ?本当に32歳なのか?」

「ちょっ!!乙女の秘密になんてことを!」


あとで覚えておけよ、このシロうさぎ。


「殺意漲りすぎだ。冗談だよ。大丈夫、俺が貰ってやるから、落ち着けよ」

「シロさん、おいくつ?」

「内緒」


口止めに「ほら」とシロさんは、さっき追加で頼んでくれたバッファローウィングを口元に運んでくれます。


「おいしい」

「だろ?俺のお気に入り」


それにしても、シロさんは英語で注文しているけど、ここどこだろ?


「ん?ここはチェコだな。ドイツとの国境近く」

「あれ?その姿でも能力変わらないんですね」

「まあな。ここはマジでおすすめ。サラダもうまいし、ビールもいい。プレミアムなビールのホップはここのなんだ。あとでビール博物館とか行くか?」


人になっても変わらない、きゅるんとしたぱっちりおめめに騙されてしまいそうになりますが、お昼からお酒はダメです。


「ちぇー」

「でも、私、そういう歴史系、大好きです」

「そりゃよかった。時間がある限り、楽しもうぜ」


・・・。


「シロさん」

「そんな顔するな。お前がいれば、もう急激に悪化しない。なんだよ、お前が治してくれるんだろ?」


せっかくのハンバーガーがちょっと、冷めてしまう。

遅効性の毒。ゆっくりと壊されてるDNA。


姿を変えるなんて、普通に身体の負担が大きい。

共にあれば一時的に抑えることができるけど、治すには。


私の持つ「魔法」は、シロさん、どう思うんだろ?

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