第4話、甘い誘惑
うさぎの開き in 腕の中
膝の上には仰向けなうさぎさん。
左手は落ちないように枕となり、右手はうさぎさんに抱え込まれて顔を撫でる。
寝起きから気怠い、至福な時間だけど、いいのかな。
・・・このうさぎさんの尊厳は何処に?
うさぎさんは腕の中で、とっても幸せそうに無防備な姿をさらしている。
コンサバティブなシルエットのジャケットに、はだけたシャツ。
ズボンはタイトなテーパード。青灰生地に濃紺で織糸に変化のシャドーストライプと同系色のブルーのストライプの二重ストライプと大変おしゃれなうさぎさん。
「いいんだヨ。お前にしか見せないシ」
「え、やだ?ちょっと、ときめいちゃったじゃないですか」
「ん?俺、かわいい?」
腕を掴んだまま流し目。
きゅん。心臓鷲掴みな可愛さ。
「うわっ?!腹、吸うなよ!!」
これはうさぎさんが悪い。ワタシ悪くないです。
嫌がるうさぎさんをたっぷりと堪能させて頂きました。
「で、うさぎさんの後遺症は何ですか?」
「うぅ、いきなり本題だナ。変わり身早すぎてついてけねーゾ、おじさん」
この病気の致死率は先進国で5%。
体力が無ければ3割を超えた。後遺症も酷く、特効薬もない。ワクチンも副反応があり賛否が分かれた。拡散スピードも早く、スペイン風や黒死病のように世界を覆い、暗闇の3年間を作り上げた「地球からの警告」。
10年に渡り繰り返される病気の中で生き残ったのは70億人中45億人。途上国を中心にだいぶ減った。だけど、地球上の人類が今の暮らしを続けて地球の回復能力を上回らない人数は37億人。1971年が限界値。
地球的には、あと少し「削らない」といけない。
また、これ以上人口を増やさないためにも「遺伝子組み換え」が必要になる。
この病気の恐ろしさは地球にとって「バカ」じゃない人類だけを選別したように見えるところ。頭の良さとか、運の良さは、結局のところ遺伝するから優等生学的に選別を掛けられた。
生まれ持った「権利」なんて、所詮は人間が「自分が転落したら困るから言っている綺麗事」や「民衆が権利者に立ち向かわないようにする方便」であって、他の何かではない。
「お前、ドライすぎなイ?」
「え?そうですか?ていうか、人の考えを聞くのやめてほしいです」
「やーダ。って、ヒゲを引っ張るな!根元触るな!」
「ぷっくりしていて、つつきたくなる魔力が」
「ねーよ!」
生き残った人類は、この病気で選別され、進化を促された。
7億人の生物学的男女に遺伝子組み換えが発生。
「まあ、だから俺はうさぎの姿になっちまったんだけド」
腕の中でうっとりと微睡んでいるうさぎさんを見ていると、なんか、どうでもいい感じがする。
「ご飯、何食べます?」
「うーん。酒?」
「それ、ご飯って言いません。にんじんスティック買って来ます」
「うさぎ扱いするなヨ。人に戻るからちょっと待ってろ。服着替えるから」
今日のブランチはサラダかな。
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