第27話

 突然だが説明しよう!


 キャピタルゲインとは、株式や債券など、保有している資産を売却することによって得られる売買差による利益のことだねっ! たとえば株価50万円で購入した株式が、55万円になったときに売却した場合の差額5万円をキャピタルゲインと呼ぶんだっ!


 ただし手数料と税金は別だよっ!


 あとこれは投資ではなく投機って言うべきなんだよっ! 詳しくは調べてねっ!



『は、はは、はははははッ! 見つけたぞ! 打ち出の小槌を見つけたぞッッ!』


『し、慎くん? 何を言ってるんだい? それはなかったって話だよ?』


『くっくっく。親父殿、あるにはあ…おっと何でもないでござるよ』


『その言葉遣いはやめなさい』


『はいでやんす』


『慎一郎』


『ごめん父ちゃん』



 つまりある意味未来人としての俺は、微妙な名称にさえ気をつければ、当然のごとく勝てるのであるし、不祥事前に売ればいいと思ったのだ。


 そうして血管が切れるくらいうんうん唸りながら思い出そうとしたのだ。


 俺自身のことはやはり思い出せないのだが、両親友人知人くらいは覚えていてもいいと思うのだが思い出せない。


 あまり想像したくないがおそらく子供部屋ヒキニートおじさんだったのだろう。


 邪神んてらの活動年数は長かった。最初は同人だったのだが、小さなショートストーリーは出していて、絶版も少なくなかった。


 その中で、携帯がスマホに変わるくらい前のものもあったのだ。そんな記憶のきっかけを頼りに、各ネトラレラ達の記録ノートの記述を見ながら、頑張って頑張って大きな事件とか世界情勢などを思い出したのだ。


 すると、やはり勝てたのだ。



『は、はは、ははははは。いける! いけるぞッッ!! 待ってろ静香! 火燐! 裕美! はははははッ!!』



 そうして俺は魔法を使った。


 でも、魔力(資金)のない俺がなぜ出来たのかと不思議に思うだろう。


 それは人妻リーサの魔力である。


 違う意味に聞こえるのは本当で、借りた魔力はお金である。


 つまり原資や銀行関係の手続きは全て母となったリーサ先生にしてもらっただけなんだぁぁあああッ!


 あの人、やはり有能であった。





 そうして俺は計画した。


 まずはイントロとして、小学校では資産運用などを習うかなとさらっと尋ねたのだ。


 確かにそんな話は出てるねと、乗ってくれたのだ。


 興味があるから先んじて習いたいと、またもや計算カードを用いて、リーサ先生を口説くつもりで全力で将来設計を説明したのだ。


 ピンクのローターを買って同級生にばら撒きたい未来などもちろん言っていない。


 資料を集めてくるから少し待っててと言われて手応えを感じたのだが、問題は親父殿である。


 だが、俺には確信があった。


 だから一番最初は親父殿のクレカと口座で黙って試そうとしたのだ。


 当然怒られたのだが、わざとであった。


 これは母となったリーサ先生の前で怒られることを想定した俺の罠だったのだッ!


 かかったな、父ちゃん!


 母ちゃんは俺の味方だぜッ!


 なぜなら母ちゃんと呼んでから、母上殿は俺に激甘だったのだ。


 まあ、漢検もこなしていたし、私的に定期的に出されるテストも満点だったし、もしかするともしかするのではと、一縷の望みに賭けたのだ。


 それでも普通に普通は親父殿と同じように止めると思うのだが、「そんな将来のことを考えて……慎一郎くん…いえ、慎一郎って呼ばせてね。私、いいえ、ママは味方よ……雄大さんっ!」と逆に不安になるくらい思い込みと流されやすい母上殿のフォローのおかげで助かった。


 渋る親父殿は母、リーサ先生には夜も含めて弱かったのは想定通りである。


 ガチ恋している親父殿を見抜いていたし、鈍感系のくせに妹を結婚前に仕込めていた事実から導き出した、ただのヌルゲーであったのだが。


 そしてこれが大勢を左右するフォロミー女神効果に味をしめた最初の一例でもあった。


 小夜との仲の誤解も手伝っている節はあるのだが、条件付きではあるものの、応援してくれたのだ。


 しかしまあ、だいたいのラノベでは幼い頃の努力部分がぼかされてることが多いが、気持ちはわかる。


 これはチートだ。


 唾棄すべき人生舐めプである。


 そんなモノを少年少女に見せてはいけないのだ。


 それに、俺が稼ぐということは、その分反対側に負ける人が必ずどこかにいるのが経済の常識なのだ。


 誰かの赤字は、必ず誰かの黒字なのだ。


 そんな当たり前のことを彼ら彼女らは知らないのだ。


 だが、俺のエロ漫画転生でプラマイゼロである。


 それは全世界の通貨の赤字と黒字を足すとゼロという当たり前の話と同じことなのである。


 だからこの魔法は仕方ないのだ。


 ごく普通の経済的倫理観しか持たない俺はもちろん葛藤したのだが、邪神に抵抗するため仕方なかったのだ。


 そうして俺は母上殿から資金を借り受け、資産を得て、運用し出し、ちょいちょい投機にせいを出したのだ。


 俺は必死だった。


 彼女達の件もあるが、ヒョロガリを必ずや何とかせねばと。


 先立つものが無ければ、先勃てないと血走りながら頑張ったのだ。


 まあ、社会がどうなるか予め知っているとはいえ、リスク張るのは精神的にマジきつかったとだけ言っておこう。


 投機は自己責任だから気をつけようね。



『あー転生人生辛いわー。金しかなくて辛いわー』



 そうして、そんな一度は言ってみたいセリフを言えるくらいぶいぶいと資産は貯まっていき、どすけべな彼女達には次のステップであるランクカッパー相当のブツを与えることに成功したのだった。


 中身は怖くて見ていないが、彼女達は喜んでくれたらしいのだ。


 モエミの談ではあるが、流石ネトラレラ、いやエロラレラ達である。


 ちなみにGINGAさんの最上位はゴールドではなく、ギャラクシーらしいが、おそらく俺の精神では耐えられないからそれも見ていない。


 SEKITOBA? それはなんか格好いいレッドで別の専用ウェブサイトだったのでおそらく大丈夫だろう。


 ちなみに購入者は母上殿になっているのだが、説明してないのもあるが、彼女はよくわかっておらず、気づかれる前にパスワードとメアドは変えた。


 男をダメにし、自分もダメになるパターンは原作からの深読み通りなので、少し心が痛いが、それより何より少し怖い。


 まあ、親父殿と出会えて良かったから結果オーライである。


 だから大量の鏡は母上殿への恩返しだったのだ。


 何も言わず施工を許してくれたことから、おそらくストライクだと思い配置したのだ。


 親父殿? いや、当然の如くこんなに鏡買ってどうするつもりだと怒ってきたのだが、俺の「あー最近太ったかも」という呟きだけで「慎一郎のダイエットの為よ、あなた…」と、俺が頼る前に先んじて説得してくれていた。


 まあ、信じたものを無条件に信じる全肯定なダメな女神様なのは予想通りではあったが、同時に怖くもあった。


 とりあえず夜の営みを満たしておけば大丈夫かなと、妹達には夜10時以降は自室を出てはいけないと伝えた。


 一階にはある意味恐ろしいお化けが出るとかなり脅しておいた。


 子供のくせに、最初は信じなかったが、効果は抜群にあった。何故あったのかは言わずもがなである。


 ちなみにこの世界の人妻リーサは発動していなかった。浮気されての離婚だったらしく、離婚による示談金がまあまああったらしいのは幸いであった。


 その中から俺は使わせて貰ったのだ。


 でもそれは後で知った事で、こんな小学二年のクソガキの戯言をよく信じて大金突っ込むなと少し引き気味だったのだが、もしかすると過去との決別の意味も含まれていたのかもしれない。


 まあ、そんなだから母上殿にはマジ頭が上がらないのである。


 そうして、それからの俺はこの転生チートと、母上殿の「いっぱい食べる子? ふふっ、そうね、私のお料理、沢山美味しそうに残さず食べてくれるし、もちろん好きよ。ねぇあなた?」という免罪符の下、渋る親父殿を黙らせ、デブレ化の道に突入していったのである。


 そしてエロアイテムはもちろんの事、大量のゲームや飲み食いや監視カメラなどの自室改造は、魔法による賜物であり、当然エンゲルを相対的に減らしながらぶひぶひとなっていったのであった。

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