第21話

「…」


「…」



 帰り道、その問題義妹と一緒になった。


 季節は冬。


 もう少しでクリスマスといった時期で、花岡家では例年通り綾小路家とともにクリスマス会を開く予定で、今年は綾小路家での開催予定なのだ。


 子供なら浮かれるようなイベントなのだが、ここ最近、小夜と妹どもの仲が悪い気がするのだ。


 どうにかしたいが、この頃の小夜は陸上部に所属していて、進学スクールにも通い、運動と共に勉強にもせいを出していた。


 帰りに一緒に帰ることは少なくなっていて、話せるのは朝の登校か窓越しである。


 朝は集団登校だし、おいそれとそんなことは相談出来ない。


 窓も自室も隣が義妹の部屋なので筒抜けになる恐れがある。


 ならばと小夜部屋を思いつくが、相変わらず部屋にはお邪魔したことがなく、いまだに興奮させて来やがるのだ。


 俺の興奮はさておき、そこは原作通りであるし仕方ないのだが、そんな描写がないだけで普通は隣の幼馴染なのだし、お邪魔し合ったりするものではないだろうか。


 あいつ普通に部屋に招待してくれないんだよな。


 ヒョロガリ時代なら窓からの侵入もいけたと思うが、もはやデブだし普通に落ちて死んでしまうのである。


 まあ、最近はネトラレラの宝石たる成長具合に俺の心臓が耐えられないのもあった。


 それくらいの美少女に成長したのだ。


 運動はしつこく誘ってくるのだが、それは設定ゆえだろうことはわかっている。それ以外はかなり冷たい対応なのだ。


 そこにデレは見当たらない。


 ロリ時代にもっと優しくすればよかったのだが、ずるむけのクレヨンとか、ロリに目覚めたくないとか、クラスのこととかリーサ先生の調査とかで邪険にし過ぎた行動の結果であり、後の祭りなのである。


 そう、後の祭り。つまりBSSである。


 デブの双璧たる俺の夢。


 もう一つの俺の望みなのだ。


 限界痴態の件もあるにはあるが、あれから何年も経っていて、記憶は薄れていき、もうそこまでは気にしてないのだが、本当のところ、欲っしたところで、無くなってしまうのが怖いのだ。


 ラレオどもはあんな態度だが、原作より遥かに魅力を増していた。俺と小夜の存在によって内向的な性格は吹き飛んだのだ。


 相対的に脳破壊力が増してる気もするが、各ネトラレラ達も小夜と天華によって遥かに魅力を増していったのだ。


 だが、俺はその逆を行ったのだ。


 こんな酷いビジュアルと醜悪な性格ではざまおたる二階竜也に勝てないのである。


 まあ、それが正史なのだ。


 わざわざネトラレたくはないのだ。


 だからそれでいいのだ…。



『…』


『……』



 まあ、そんなブルーな事より義妹である。


 それにしても相変わらずのこの兄妹のコミュ力の無さよ。仕方ない。ここは話題を振ってやろうじゃないか。



「アリスはサンタに何お願いしたんだ?」


「…」



 無視である。


 無視は正直なところ人として一番やってはいけないことだと俺は思うのだが、こいつは平気でするのだ。


 旧姓山之内有栖。


 現、花岡有栖はなおか ありす


 ビジュアルは文句なしの美少女で、つまり当然の如くネトラレラ…だと思うのだが、正直なところ俺の記憶にはないのである。


 「の」を間に冠すると言っても母上殿の苗字だし、おそらく違うのだと思いたいがビジュアル面では文句なしの一級品である。


 流れる金の髪に大きな碧眼の双眸、肌は果てしないほどの透明感でシミ一つなく毛穴すら見当たらないような透明感溢れる美少女なのだ。


 リーサ先生もしかして…もしかすると外国人との外伝があったのかと俺の業のストライク、業ストがはぁはぁと囁いたのだが、どうやら違うらしく、そういえばここは漫画世界であり、何でもござれだったと遅れて気づいたのだった。


 ちなみに俺は元からの金髪は苦手なのである。なんとなく怖いのだ。


 これは前世の俺が、いわゆる洋モノはいけない口だったのだと思われる。


 まあ、変えられた金髪が好物なのは言わずもがなである。


 それでも、もう三年以上も兄妹しているので、最初ほどビクビクはしてないのだが、いまだに謎の多い義妹である。


 まあ、コミュニケーションをとってないのだから当然なのだが。


 しかし、荒ぶる神んてらが遣わせたネトラレラだと思うのだが、この一つ下の義妹には番が見当たらないのだ。


 一度下のクラスにお邪魔したのだが、その時は和気藹々とクラスメイトと話していたのに、俺の登場に一瞬で静まり返り、みんな絶句していてその様子に逃げ帰ったのだった。


 いかに戦略的にデブ化したとはいえ、あの怯えたような蔑んだような視線には耐えられないのである。


 ラレオ? それは逆に今やご褒美でやんす。


 小夜? まあまあキツいでやんす…。


 逃げ帰りながらも一つ思い出したのは、義妹的作品は神んてらは描かないということだった。


 ちゃんと血が繋がってるものしか描かなかったのは、邪神ゆえの背徳の矜持であったと理解しているので、俺は該当しない。


 もう一人の妹は、親父殿とリーサ先生の子供なので俺が托卵でない限り血は繋がっているので懸念はあるが、まだまだ可愛らしい保育園児である。


 見た目は。


 今では義妹アリスを真似しているのか、俺への風当たりが冷たく、天使な幼児の親孝行は三歳までとの風説は本当だったのだなと理解した出来事であった。


 まあ、親ではないのだが。


 しかし、んてら作品に普通のエロ漫画ってあったかな。


 もしくは俺の死後、キャリアを積んで普通の漫画家デビューしたのかな。


 そういや幼馴染ものというかNTRものしかほぼ覚えてないな。


 そうやってもう何年も思い出そうと頑張っているのだが、俺の業のせいか、俺の死後の話なのか、やはり何も思い出せなかったのだ。


 強いて言うならクラスの女子に一人だけ似てるネトラレラがいるが、その原作にも出てこない。


 一度転生者かと疑ってみたのだが、まあ字は汚いし、頭もそこそこ。だからおそらく違うとは思う。


 まあ、例え拒否られたとしても、全力でお兄ちゃんサンタしてやるけどな。


 今の俺はサンタの格好をさせれば先生方を差し置いて学校一の恰幅なのだ。


 おそらく似合うだろう。



『何ニヤニヤしてんの。キモ』


『…』



 さっそく心が折れそうである。


 俺の前世に兄妹が居たのかはわからないが、こいつぁひでぇや。


 義妹ゆえ仕方ないのかもしれないが、普通の妹とというのは、こんな悪魔みたいなことを平気で言うのだろうか。


 いかに鋼のメンタルを身につけた俺とはいえ、普通に怖いのである。

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