第20話
転生してからの毎日は、俺を送り込んで楽しんでいるであろう某、もしくは神んてら、あるいはこの世界そのものと言うべき何かからのリアクションは感じられなかったのだ。
原作の始まりは高二。それはその通りの当たり前の事実かも知れないのだが攻略本などないのである。
だからこそ自分本位な、それこそ手探りの毎日だったのだ。
俺とラレオらのNTRトリガーは、おそらく駆逐出来たのだと思っている。
ラレオは小夜によって。
俺はデブ化によって。
原作破壊さえすれば恐ろしい未来に至る確率はグンと下がるのだと信じて。
だが、そのラレオらから俺は小学五年に至る今の今まで、あらゆる迫害を受けてきたのである。
せっかくネトラレラ達との仲を取り持とうと尽力していたというのにそれはもう酷いものであった。
まあ、だいたいは無自覚にも俺の握り拳の中指を勃起させるようなことをしでかす小夜のせいなのだが。
『花岡…お前またそんな嘘でみくるちゃんを丸め込んで…』
『ちっ、また罠かよ…小夜ちゃんに言いつけるからな』
それは今の俺には無駄である。何故なら今の小夜は俺から少し距離を取っているのだから。
『はーん、かかってこい』
『なんだその自信は…ちょっと頭良いからって調子のんな、このタクろー!』
『そうだぞ! ただのオタクのくせに! 次は勝つからな!』
地頭は別に良くないが、テストが良いのは転生者ゆえ仕方ないのである。
まあ、地理や歴史や社会など、微妙に違う名称を覚え直すのだけはいまだに苦労するのだが。
ことわざなんかは元世界のままだしどうなってるのか興味はあるがもはやデブゆえ面倒である。
そんな話は置いておいて、もう一つのあだ名があったのを気づいただろうか。
それはデブ系に並ぶオタク系である。
あれから俺はギャルゲーに目覚めたのだ。
いくら小夜にゲームを隠されても監視カメラによって暴き、窓から捨てられてもめげなかったのだ。
狂気の世界には狂気的行動しかなかったのである。
今ではこの世界のAVもエロアニメも余裕でいける口にまで仕上がったのだ。俺はすっかりこの狂気のエロ漫画世界に迎合したのである。
まあ、つまり今の俺はデブの上にオタクで、しかも一度噛まれれば美少女を盾にしその脇からイキり散らかすという人としてどうかなと思う業深き所業を、結果的にではあるが、ネトラレラ達にのみ受け入れられるカタチで神に反逆しているのであった。
ラレオはもちろんただの被害者である。
だが、俺の存在をバネに逞しく育って欲しい。
来るべきNTRの時のために。
しかし…デブの上さらにオタクとか嫌だ嫌だと慎一郎氏が泣いてるような気もするが、これもおそらく気のせいである。
この神んてらの世界において、何も行動を起こさないままでは将来食い散らかされてしまうのだ。
すまないピュアボーイ慎一郎氏…。
イキり散らかして。
ぬはははは。
『あーテストとか面倒でやんすよねぇ〜』
『このッ…!』
『おいやめろって。こいつには何言っても無駄だって』
その通りである。
『ちょっと、さっきから聞いていたら何? オタクの何がいけないのよ。シンくんはいっつも楽しい話してくれるんだから絡まないでよ』
『そうだよ。テストも毎回一番なんだし、だからって嫉妬とか醜いからやめた方がいいよ』
『くっ! 何でお前だけ…』
それは心の先行投資のおかげである。
ただ、このように異世界コス好きやギャルゲエロゲ好きネトラレラにも妙な人気が出てしまい、これまた微妙な立ち位置になってしまったのだった。
今までひたすらに優しくしてきたのだからある意味当然の結果なのだが、女の子として成長した彼女達は、みんな原作通り馬鹿みたいに可愛いのだ。
だが、これは世界の強制力によっていずれあるべきカタチへと収束するのだろうし、本気になってはいけないのである。
それにざまおが合流する中学までの束の間の癒しというか、せめて少しくらいは優越感に浸らせて欲しいものである。
これがいわゆる転生者特典なのだと俺は思っているのだ。
「おはようございます。みんな席についてね」
そう言ってから俺にウィンクかましてきたのは、現在俺の母上殿でもあるリーサ先生だ。
これもまた大きな変化である。
親父殿は小二の夏に再婚したのだ。
再婚してからのリーサ先生の授業は、次第に統率力を増していって、今では一瞬にして静まり返り、みな一段と真剣に授業を受けるようになったのだ。
『あは、はは……今日もみんなヤる気いっぱいね…』
『……』
痛いくらいの静寂である。
うむ。今日もリーサ先生は輝いているのである。おそらく昨日の夜10時以降の営みのおかげだろう。
親父殿もそうなのだが、結婚によって自信というのか、生きる活力がみなぎったのだ。
今もギラギラとした小学生の幼気な眼がリーサ先生に痛いくらい突き刺さっていて、少し引き攣っている気もするのだが気にする必要はないのである。
皆が勉学に燃えているのだ。
おそらく小夜と天華の競い合いのおかげだろう。
これは教師冥利に尽きるというか、嬉しいことではないだろうか。
『ちっ……花岡先生、早く点呼を』
『そ、そうね。みんな出席取るわね〜…相変わらず冗談が通じないんだから…』
クラス委員長様である天華の一言に、リーサ先生は何かごにょごにょ言っているが、俺は一番後ろのど真ん中、ガタイのいい邪魔ものが鎮座するべき席なのだ。
小さな声だと聞こえないのである。
しかしまぁ結婚から三年ほど経ち、ここまでずっと観察してきたのだが、不倫も浮気の証拠もついに見つけられなかった。だからもう大丈夫だと一応は思っているし、何より親父殿と彼女は上手くいっているのでこれ以上は野暮である。
夜もいまだに大変お盛んなご様子で、流石は人妻リーサというか、呂布というか、無双というか、SEKITOBAに勝てて一安心なのである。
俺の男の子の日はまだなのだが、いつナニがあるかわからない。
だからそろそろ返して欲しい。
初めての相手はSEKITOBAに俺は決めているのだ。
というのは半ば冗談なのである。
半分は本気で、新たに購入したバージョンはすでに10.2なのだ。旧型など最早必要ないし、GINGAさんの本気がマンを辞して味わえるのかと、その未知との遭遇を今か今かと待っているのである。
小夜? あいつはいいんだよ…。
それにしても俺は親父殿のために頑張った。
今なお続くレス無し両親の源泉は、おそらく玄関に設置した大鏡を筆頭に、家の中のあらゆる場所に設置した各種鏡とか、庭に植えた目隠しの植木や夫婦の寝室のあるベランダに設置した日除けという名の遮蔽物とかが、良い仕事をしているからだと思われる。
これは俺の異能、名付けて性癖予知能力によるものである。
まあ、これも冗談なのだが。
そんな冗談をつきたいくらいの問題が、幸せに満ちた我が家に、実は一つある。
それは義妹の存在なのである。
あいつめっちゃ俺に冷たいのだ。
まあ、鏡を買いまくったり、ギャルゲーに精を出しまくったり、人の飯まで浅ましくも摂取し続けたり、そんな怪しい行動をぶちかましまくったりと、今までしてきたのだ。
その上更に学校一のデブなのだ。
俺も普通にこんな兄は嫌なのである。
辛辣な言葉を投げつけてくるのはわからなくもないが、いかに強メンタルに成長した俺とはいえ、それはたまに傷つくのである。
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