第16話
連れていかれた先には結構な人数のラレオらがいたのだ。
え、こっわ。
群れた小学生など、物事のわからない獣同然なのだ。普通に怖いのである。
しかしよく観察してみると、この時期一番のヤンチャ系主人公が三人いて、どうもそいつらが扇動しているように見える。
花山院天華の相方、菊川海里。通称真面目もやしメガネ。
萩ノ内萌美の相方、楠木大地。通称タンクトップ鼻垂れ小僧。
相之俣ヒナの相方、紫原将暉。通称通年長袖色白男である。
『なあ、花岡、ちょっとお前小夜ちゃんに冷たすぎないか?』
そんなことを代表して楠木が言ってきた。はぁ。わかってない。全然わかってないのである。この後何が待ってるか知らないからそんなことを言えるのだ。
俺はそれに備えているだけなのだ。
つまり投資である。
備えると口だけなら誰にでも言えるのだ。
先に金を使い血と肉に変えることこそが、真に備えるというもの。
金を使わずに血と肉に変わるならなるで、それはなおよしである。ただただ今の俺のエンゲルの敵は全て敵だということだけなのだ。
後はPC筋を鍛えていくのみである。
二度と悲劇のジョンジョバーなど繰り返してなるものか。
とりあえず俺は小5まではこのスタンスでいかせてもらうつもりだ。
少女から女の身体に生まれ変わる時がおそらく恋の自覚の芽生えのはずなのだ。お前らのNTRトリガーはおそらく小夜が消してくれるが、俺は自力で何とかするしかないのだ。
というか出来るなら変わって欲しいものである。
『あいつは何て言ってるんだ?』
『あいつ? 小夜さんのことそんな風に言ってるのかい?』
いや、そりゃそう言うし、お前らもお前らの番をそう言ってるだろう。それに呼び方なんて、どうでも良くないか?
しかしこいつら、ラレオだし、こうやって一人の女に執着してしまうのはわかるが、小夜は手に負えないと思うのだが。
『あのさ、菊川、花山院さんのことどう思ってる?』
『なんでテンカさんが出てくるんだよ』
『楠木、モエミは?』
『今モエは関係ないだろ』
『紫原、ヒナ氏は?』
『ヒナ氏? 変な言い方するなよ。とりあえず小夜ちゃんの事聞いてるんだよ』
『…はぁ』
なんだその態度とばかりにジリジリと近づいてくるラレオ達。小学生って意外とというか、結構汗臭いんだよな。
小夜はよく耐えるな…。匂いフェチでもあんのかあいつは。
しかし、このままでは時間の問題かもしれない。NTRとは、一応精通前はカウントしないのが世界のルールブック。とはいえ、みんながそのクレヨンを小夜に剥かれた日には俺のダメージがデカそうだ。
やはりここは早めに手を打っておくとしよう。
『そんなことより、みんなの友達の女の子が好きだな。いらないならみんなオラにくれよん』
これでこいつらも目が覚めるだろう。
寝取られてからじゃもう何もかも遅いのだ。
◆
『いてて…』
目が覚めるくらい痛いのである。あの直後追いかけ回され何発か良いのをもらってしまった。おかしい。やはりラレオ達も運命に抗っているのか…。
『…大丈夫? 花岡くん』
そう言ってハンカチを差し出してくれたのは、薄紫髪のお団子頭がチャームポイントの相之俣ヒナ氏である。今日もロリロリとした可愛い系の服が童顔の彼女に似合っていて、正直推せる。
彼女とはたまにこんな校舎と校舎の隙間である薄暗いところで出会うのだ。おそらく紫原と上手くいって無いのだろうが、一人で何をしてたんだろうか。
『痛そう…何があったの?』
『おっぱいの話したらマザコンって言われた』
男なんて猥談好きに決まっているのであって、あいつら本当にエロ漫画世界の住人なのかってくらいにウブだったのは予想外で計算外である。
誤魔化すためでもあるが、せっかくこちらから歩み寄ったのに失礼なやつばかりである。
『そうなんだ。わたしもお母さんのおっぱい好きだけどな』
『そういう話じゃない』
お前もか。何故にエロ漫画世界の主人公達は揃いも揃ってピュアなのだ。そういえばAVとかどう見てもエロアニメにしか見えないから頭が狂いそうではあったな…。
いかに神んてらの世界とはいえ、俺はエロアニメは苦手で、認めていないのだ。
『あれ? でも花岡くんってお母さん…』
『…』
それは言わないで欲しいのである。
『…吸ってみる…?』
『なんでだよ。ありがとう』
とりあえず礼は言うが、何が悲しくてそんなぺたーんなおっぱいを吸わねばならぬのだ。
あ、こら、見せるんじゃない。またあらぬ誤解が積み重なってしまうだろう。
『いッだ──いッ!?』
『女の子が公の場でそんなことすんな』
『こ、こうのば? 違う! 千切れるかと思ったんだよっ!』
『馬鹿な子供に教育的お仕置きなのだ』
『馬鹿じゃないもん! 酷いよっ! せっかくママの代わりヒナがしてあげようとしたのにっ! 痛い! ビリビリするっ!』
『ほら絆創膏』
『まったくもぉ…ほんとにもぉだよ』
ぶつぶつ言いながらも、やはりすんなり貼りやがったか…。
別にそんな趣味はないのだが、ついでにエロおかしいかどうかの確認である。
たまにこの世界って実は割と普通なんじゃ無いかなと思う俺への戒めでもあるのだ。
原作のヒナ氏はガチコス勢になるはずの女の子で、カメコの一人にいいように乗せられマゾっ気を開花させられ、後は言わずもがなである。
そうして彼女は異世界コスえちちが好きなネトラレラになるのだ。そんなNTR作品「こすぷれしんどろ〜む」の主人公、紫原将暉は高校に入ったらコスがしたいと言う彼女を応援しつつも次第に豹変していく彼女に戸惑いながら真実(裏垢)に辿り着き絶望の鬱ニーをするのである。
その中でも特にまだまだバレていない時、ヒナとは知らないままヌいた紫原将暉の罪悪感を知ったヒナは「ふふ、マサキィィ」とペロリと舌を舐めるのだが、本人マゾ気質なのに、主人公にはサディスティックなその一面にとても興奮するのだ。
『……興奮?』
『…何か俺言った?』
『う、ううん、何にもっ! あ、ほらお昼休み終わっちゃう! 戻ろっ!』
そう言って俺の手をぐいぐい引き、絆創膏を装備し駆けるヒナ氏。
痛い痛い痛い。そして何か熱い。
何でみんなこんなに力が強いのだろうか。
しかしこの子、原作ではもうちょっとオドオドして暗くなかったか。まあ、クラス最下層に生きる人間の前ならそんなものか。
それに元気はいいのだがやはり元々のエロおかしい設定は、彼女達ネトラレラの中に最初からあるようだ。
大変に度し難い世界である。
ん? あ、手のひらにゴミ捩じ込んできた。
こういうところは普通に可愛いよな、こいつ。
『…将暉には内緒なんだからね』
『任せろでやんす』
何のことかは知らないが、内緒も何も、コスもロリもエロアニメ同様、俺の守備範囲にはないのである。
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