第6話:俺は世界で初めて幽霊とエッチした日本人。

死んだ人が生き返ったって話は聞いたことがない。

どんなことしたって生き返らせることは神様でさえにできない。


幽霊であっても俺は「茲沢 瑠奈ここさわ るな」といられるだけ幸せなのかもな。


「さあさあ、起きて、朝ご飯にしましょ」

「顔洗ってきて、叶多」


「姉ちゃん起きてるのか?」


「お姉さん、まだ寝てるよ」


「え?じゃ〜朝飯は?・・・まさかおまえが作ったのか?」


「私以外誰がいるの・・・」


「え?できてるのか?」

「さっきも言ったけど、幽霊なんだから料理道具だって触れないだろ?、

朝メシなんか作れないだろ?」


「気合と根性だよ・・・15分は実体化維持できるようになったからね、私。

朝ご飯なんかちょちょいだよ」


「本当に作ったのか?朝メシ」


「もち」


「やるな〜」

「姉ちゃんは朝弱いからな・・・朝メシいつもギリなんだわ」

「こんなに早くに朝メシ食ったことないよ・・・」


「今日から、私が毎日朝ご飯作ってあげるからね」


「ふわ〜ああ〜〜〜〜おっはよ〜・・・」

「あんたら、早いわね」


大あくびしながら姉ちゃんが起きてきた。


「おはよう、姉ちゃん」

「瑠奈に4時に起こされたんだよ」


「あ〜そうなんだ・・・可哀想・・・4時になんて起こされたら私ならキレてるね」


「おまたせ〜朝ご飯よ〜」


「え?瑠奈ちゃんが作ったの?」


「料理できるみたいだぜ・・・だから朝メシも・・・も?・・・」

「・・・・・・」

「なにこれ?・・・」


「朝ご飯だってば・・・」


「え?この四角くて真っ黒いやつ、もしかしてパンってやつか?・・・

もはやトーストじゃねえじゃん・・・」


「バターとかジャムとかヌリヌリしたら食べられるよ?」


「まじでか〜・・・」

「それになに?、え?え?え?・・・こっちのも真っ黒じゃん」


「スクランブルエッグ」


「うそ〜・・・こ、これが?」

「この黒焦げの物体が?、スクランブルエッグ?」


「あのな瑠奈、ご飯ってのはさ、普通食えなきゃ意味ないの」

「どうやったらこんなふうになるんだよ・・・」


「そんなの知らない・・・」


「知らないって・・・こんなんじゃ朝ご飯って言えないだろ?」


「だって生きてる時、朝ごはんなんて作ったことなかったんだもん」


「じゃ〜なんで作ろうなんてって思ったんだよ」


「だって〜」


「にしたって、朝食用レシピとか、ネットでいくらでも落ちてるだろ?」


「レシピとか見ながらなんてそんな器用なことできないもん」


「待て待て、レシピ見たって作れない人は作れないの・・・料理だってセンス」

「あのさ、明日からまた私が朝ご飯作るから、いいよ・・・」


瑠奈が作った食えない朝ご飯らしきものを見て姉ちゃんが言った。


「お姉さん、ごめんなさい・・・」


「いいのいいの・・・瑠奈ちゃん素直だから、好きよ・・・大丈夫だからね」


「叶多、あんたも瑠奈ちゃんにもう少し優しくしてあげなよ」

「食べられなくても一生懸命作ったんだからさ・・・」

「あんまり偉そうにしてると瑠奈ちゃんあの世に帰っちゃうよ」


「そ、それは絶対困るって・・・俺、瑠奈がいなくなったら生きてらんないもん」

「瑠奈、ずっと俺のそばにいてくれるよな?」


「叶多が、あまり冷たくしたらもう一回くらい死んじゃうかもよ、私」

「も一回って・・・一度死んでるだろ・・・幽霊が二度も死ねるわけないだろ」


「だから・・・いちいちツッコムなって・・・」

「こういう子なんだから、おまえの大きな心で、包み込んでやりなよ」

「もっとも叶多に大きな心なんてないのかもしれないけどさ・・・」


「包容力ってやつだろ・・・あるよ俺にだって、でっかくはないかも

しれないけどさ・・・」

「ごめんな瑠奈・・・朝メシがんばってくれたんだよな悪かったよツッコミ

まくって・・・」


「でもさ・・・ひとつだけ・・・朝ご飯ちゃんと作れないんじゃ実体化

何分維持したって意味ないって」


「じゃ〜実体化しなくていいの?」

「叶多は瑠奈とエッチしたくないんだ?」


「え?・・・」

「・・・・んな訳ないだろ・・・そんな夢も希望もないこと言わないの」


「分かったよ・・・もっと大事にするから・・・」

「だからさ、朝食は姉ちゃんに任せて・・・瑠奈は完全実体化だけに全集中

したまえよ」


「たまえよ?って・・・なにそれ?」


その後、三途の河の管理人「馬草把 礼奈衣うまくさわ れない」さんからテレパシー「霊感」

とかで連絡があったらしいが、瑠奈はそれを無視して向こうには帰らなかった。


それからの瑠奈はヨガや気功をやり始め、完全実体化に成功した。


なもんで俺は世界で初めて幽霊とエッチした日本人になった。


おしまい。

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彼女は異なもの味なもの。〜幽霊じゃダメ?〜 猫野 尻尾 @amanotenshi

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