捕縛
男は庭で「放せ、放せ!」と喚いていた。なにやら二、三人の、暗色の着物の男に囲まれて拘束されようとしている。
男は體に縄を掛けられぬようにと身を捩って喚いた。「おれは悪くない、あんなのをおいていては、おれたちの方が危険に曝されることになる!」
「おとなしくしろ」「暴れるな」と暗色の着物の男の声があがる。
「やめろ! なあ、どうしろっていうんだよ! あんな、あんな鬼みたいな子どもをおいて、どうして平和な暮らしができるんだ! なあ、どうすればよかったんだ! おれが悪いのか、自己犠牲の美徳に逆らった、おれが悪いのかよ!」
男はとうとう縄を掛けられて、庭から出てきた。番犬のように縄に繋がれた
「冬吉さん」女がいった。「あのお方はなにをなさったんでしょうか」
「鬼のような子どもを捨てたんだろう。子が
「鬼のような子とは、どのような子でしょう」
冬吉は
女はしばらく黙っていたが、歩きながら再度「冬吉さん」と隣を歩く少年を呼んだ。冬吉は女に一瞥くれて続きを促した。「あのお方は、どうなるんでしょうか」
「二十年、牢屋敷で過ごすことになる」と冬吉は応じた。「簡単だ、子の生まれた者には二十年、その子が元服するまで養育の義務が課せられるが、それに逆らえば牢屋敷で二十年過ごすことになる。この
尤もこの二十年との定めには、子に冷酷に接した者、子を捨てた者に対する処罰としてあまりに短い、いいや彼らにも事情があるのだから長いくらいだとそこかしこで談論されている。
冬吉はそれについてまるで関心を持たなかった。自分が子を持つ将来はないように思われた。ひとというのがすでに、女であろうと男であろうと疎ましいものだったのである。対する者がひとりでも
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