第4話
「その小説ってのは何かに連載とかしてたの? 作家さんってこと?」
―― とんでもない。ネット小説です。書きたければ誰でも書けます。仕組みはブログと変わりません。
小説自体に全く興味のないアリサは、そんなサイトがあるとは全く知らなかった。
―― ずっとろくに読者もいなかったんですけど、ある作品を書き始めてから、夢のように読者が増えて喜んでたんですけど……。
「なんてサイト?」
―― YOMOKAKOです。
アリサはサイトに飛び、女幽霊がいう小説タイトルを検索した。
ずらっと並んだ回ごとに数万の数字が並んでいる。You Tubeを見ているアリサにはさほどの数字にも思えないが、寄せられたコメントを見ると、なるほど大勢のファンがいるようだ。
ここ最近のコメントは、突然止まった更新に「更新止まっちゃったけど……作者さん何かあったのかな?」「さっさと更新!」そんな心配や催促の声が入り乱れている。
「さっき、書いても書いても読まれなかったって言ったよね。なんでこの小説は読まれるようになったの?」
―― 正直なところ自分でもよくわかってなくて。ただ一つだけ思い当たるとすれば、この小説は自分のためでもなく、不特定の読者に向けたものでもなく、ある一人の人に向けて書いてたんです。
「ある一人の人? 知り合い?」
―― あ……申し訳ありません。もっと聴いて頂きたいんですけどそろそろ夜が明けてしまう。もう行かないと……」
「そういうもんなの?」
―― 幽霊になって日が浅くて、私もよくわからない事が多いんですけど、どうもそんな感じです。
「ああ、店が変わっても店ごとのしきたりとかって何んとなくわかったりするもんね」
―― きっと同じだと思います。実は、前にもこの部屋の方に話しかけたんですけど。
はじめの人は私の気配だけ、もう一人の方は私の姿は見えないけど、声だけは聴こえるようで……。お二人ともすぐ引っ越していかれました……。
今日も申し訳ないと思いつつ、何とか話を聴いてもらえたらと思って。はじめて話を聴いていただけて、とてもうれしいです。
いや、三人目のアタシも困ってんだけどな……と思いつつ、アリサはその言葉は飲み込んだ。
―― あの……また来てもいいですか?
「うーん……来ないでって言ったら来ないの?」
―― そう言われてしまうと哀しいです。
アリサは、またボリボリと頭をかく
「ああ、うん、じゃあ、いいよ、また来なよ」
―― ありがとうございます! 今晩また来ます!
そう言うと女幽霊は、すーっと部屋の光景になじむように消えていった。
「まいったね」アリサはボリボリと頭を掻いた。
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