第3話

 △月□日、事務所も大きくなってきて、いままでの部屋に追加で、一つ上のフロア全体を借りることになった。


 引っ越しは終わり、あとはダンボールを片付けるだけだ。


 部屋には俺と所長、それと数人の部下が残っていて、部下たちは打ち上げをどこでするかという話をしていた。


「〇〇、そろそろばーべるが届くからそいつ等を連れて下に行ってくれ」


ばぁベルですか?

 新しいおばあちゃんでも来たんですか?」


「は?」


「?」


 また、言葉が噛み合わない。


「いや、スポーツ道具のバーベルだぞ?

 最近、力仕事が多くなってきたから所員の力を上げるためにもって注文したんだ」


「なるほど」


「下の部屋の奥に置いてくれ。

 シャワーの近くだ」


 俺はその場にいた何人かを連れて、ビルの出口に向かった。


 ビルから出ると、ちょうどトラックがビルの前に着いた。


「××事務所の方ですね。

 上まで運びましょうか?」


「いえ、私たちでします」


 俺と部下で部品を手分けしてもち、部屋にバーベルを運び込む。


 組み立てが終わり、これで終わりというときに内線が鳴った。


『今日はお疲れさん。

 晩飯は俺の奢りで食いに行くぞ。

 どっか、いいところないか?』


 スピーカーにしていたので、部下たちにも聞こえたようで、後ろからは歓声が上がっている。


「君たち、さっき考えてたよね?

 その中で一番いいところ──金がかかるところってどこ?」

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