最終話 豪釉《ハオユ》の夜
想いが通じ合った夜、灯りの消えた部屋でふたりは身をよせていた。窓から差し込む月明かりだけが彼らを照らす。
そんなふたりは、華服を上布団代わりに裸で横になっていた。
「
「……ふふ。それは、まあ……」
彼の後悔混じりな言葉に
腕を伸ばしてくる彼の手を、そっと握り返した。すると
「……んっ」
「……あー。俺、今、すっげぇ幸せだ」
彼の唇の感触が、肩から背中へと伸びていった。
「あっ……はっ、ん!」
吸い痕なのだろう……
「……
──私は嬉しい。愛する人と、こうやってひとつになれたのだから。だけど
骨と皮とまではいかないけれど、非常に細い。下手をすると十五、六歳に成長した
「え? 好きになった相手のすべてが好きだっていうのは駄目なのか?」
とどのつまり、細かろうと関係ない。だった。ニカッと白い歯を見せ、もう一度
蜘蛛の糸のように細い銀髪を救い上げ、指に絡めていった。
「俺は、
「私、だから?」
──私自身を、好きでいてくれるということでしょうか?
くりくりとした大きな瞳を彼へと向ける。
この顔に弱い
「わ、私は、あなたのそういうところが……その……」
全身を真っ赤に染めながら照れる。もじもじとし、口を尖らせた。そして瞳を潤ませ、美しい笑みを送る。
「す、好き、です」
──改めて言うのは、恥ずかしい。
かけてあった華服の中に顔を潜らせ、もう死にたいと口にした。
ふと、髪が何かに引っぱられるような感覚がする。
華服から少しだけ顔をのぞかせてみれば、そこには
そんな彼の整った顔が、笑顔でいっぱいになっている。
「ひょーー!
「か、可愛いとか……」
「……こほんっ。なあ、
彼は
両目に幸せを乗せた笑みをしながら、
「……んっ」
彼の指の動きに合わせて甘い声をだしながら、敏感になっている体が小さく跳ねる。艶を帯びた瞳を彼へ放ち、はぁと吐息を溢した。
瞬間、
「あー……えっと、な?」
軽く咳払いをした。真剣な面持ちに切り替え、
「お、親父に詳しく聞いたんだ」
「……?」
何を聞いたのだろうか。
「
「……えっと。男なのに子供が産めるという、あれですか?」
実の母は男だ。けれど得意体質ゆえか、子を成せる体だった。なぜ、そのような体質なのかまでは解明されていない。
けれどたったひとつ……愛する者と交わるときだけ、体の中に女性器が作られた。
その体質を、実子である
「
「俺と、子供作ろう。そんでもって、さんにんでまた、楽しく暮らそう」
未来からきた子供と、國のいたるところを旅した。笑って泣いて、ときどき、ちょっとした喧嘩もした。
一緒に笑いあって、
彼は朗らかな声で、静かにそう答えた。
「……はい。私も、もう一度、あの子に会いたい」
「そうか。じゃあ……」
頑張らないとなと、ふたりは額をくっつけながら微笑む。
──もしも産まれてきたら、そのときは
とさっ……
「
「わ、私もです。
おくびにもださない照れを、ふたりは溶ける時間のために使った。そうすることで、恥ずかしさから逃れられたからだ。
ふたりの夜はまだ続く。月明かりに照らされた姿を、夜空へと見せびらかしていった。
けれどふたりはまだ、知らない。
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