第43話 すべての真実はここにある
【
きれいな字ではある。けれど紙はくしゃくしゃで、何度も書き直したような痕があった。
【……まずは、ふたりに謝りたいッス。俺が仕出かしたことで、ふたりに傷を負わせてしまった。長い間
手紙を読んでいけば、なぜあのような奇行に走ったのか。それが記載されていた。
【俺は実の父親に、半妖であることを馬鹿にされていたッス。だからこそ功績を残して、見返してやりたい! そんな気持ちでいっぱいだった。そんなある日、俺の前に、幼い
ここまで読み、
隣で一緒に見ている
「……わかりません。なにぶん幼かったせいもあって、記憶が……」
「まあ、そうだろうな。俺だって、二歳のときのことなんて覚えてねーし」
それより続きを読もうと、ふたりは紙に視線を戻す。
【初めて会った
やがてその気持ちが憎悪へと代わり、しつこいまでに追い求めていったことも書かれている。
【実の父親は
そしてついに、とある町で
どうやら宿屋の店主が金欲しさに、
【
「……
「あなたは何も悪くありません。世界中の人を救うというのは、無理がありますから」
涙を拭きながら続きを読む。
【だけど……見つけた
この発言に、ふたりは苦笑いをしてしまった。
【俺が先に出会ってたのだから、
「いやいやいや。確かに俺たちの子供ではあったけど、あいつは未来の子供で……ん?
「こ、子供とか、そ、そ、そういうこと言うの、や、やめてくだ……さい」
とまらない彼の口を、
ゆっくりと顔を上げる。耳の先まで真っ赤にさせながら涙を溜め、「恥ずかしいこと言わないでください!」と、照れた。
「……んんっ!
「か、可愛いとか、そ、そういう言葉を簡単に言わないで!」
髪の毛の両端を掴み、口を尖らせる。うるうると目元を潤ませ、上目遣いで彼を見つめた。
「は、
感極まった
「……ちょ、ちょっと
続き読んでいいですかと、恥ずかしそうにごにょる。強く咳払いをして、引っついてくる彼を剥がした。
顔をタコのように真っ赤にさせながら、紙の内容を読んでいく。
【
──そうか。だから叔父上は、私を孫として迎え入れたのか。私が、冥王の本当の子供だと知っていたから。だけど確信がなかったから、冥王には伝えることができなかった。
大方、そんなところなのだろう。
心の中で、妙に納得してしまった。
【同時に、俺が
数行、空白の部分があった。そして最後の行にはこう、書かれている。
【初めから、俺に勝ち目なんてなかったんだ】
諦めたような、吹っ切れたような。そんな文字があった。それを見て、
隣で文字を確認している
「……手紙は、ここで終わってますね」
「ってかあいつ、本当に反省してんのかね?」
「ふふ。さあ、どうなんでしょう?」
ふたりは朗らかに笑う。ふと、紙の角に小さな文字列を見つけた。それは何かと凝視する。
【
書き連ねられた文字は、ここで終わっていた。
けれどふたりは答えが出ず、大きなため息だけが響かせる。
「……まあ、わかんねーもんはしょうがない。それはそれとして……」
大きく背伸びをした。そして彼らのやり取りを外で見ている青年──冥王──へ、睨みを利かせる。
青年は話は終わったのを見計らい、手にあるものを持ってふたりのそばへとやってきた。
「……っ!? 親父、それは!?」
「妻の遺品だ。生前、何も欲しがることのなかった妻が、たったひとつ望んだ物。それが、この鏡だ」
この建物で、
そんなふたりの仲のよさに、青年の瞳は静かに緩んでいく。
「安心するといい。この鏡には、もう何の霊力も残ってはいないからね。おそらくだがこの鏡には、思念のようなものが残っていたんだろう。それが、我が子である
子を想う母の心は、いつまでたっても変わらない。そう、優しい声で伝えた。鏡を撫でながら
亡くなった妻を想いながら鏡を包容し続ける青年を、誰も咎めはしなかった。むしろ、冥王というのが嘘のように感情豊かで、人となんら変わらないように見える。
「…………」
「……鏡の中にいたとき、誰かの声が聞こえました。とても優しくて、暖かくて……懐かしい。そんな声でした」
”ありがとう、母上。”
誰にも聞き取れないほどの小声で、そっと呟いた。
青年はふっと、表情を綻ばせる。踵を返し、建物の扉へと向かった。
「私からの話は終わりだ。後は、お前たち自身の選択次第。ふたりで生きていくのもよし。愛を重ねていくなり何なり、好きにしなさい」
それは事実上、ふたりの交際を認めるものだのだろう。
これからの行く末を見守るだけだと言い、黒い羽を撒き散らしてこの場から消えていった。
残されたふたりは無言の時間を過ごす。けれど……
「あ、
口から生まれたような、喋っていないと生きていけないような性格の
「最初からやり直したい。出会いからじゃなくて、その……
「……っ!?」
彼の言葉の意味を理解できないほど、
顔を赤らめ、火照った体を
「……はい。もう一度、私のすべてをあなたにあげます」
少しだけ背伸びをする。そして両目を瞑り、
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