第39話 血が繋がっていなくても親子なんです
扉のむこうがわから現れたのは、
「………馬鹿息子が!」
神経質そうに眉をよせ、拳を握る。ギリッと歯軋りさせたかと思えば、
「……っ!?」
口から血は手でいない。けれどジンジンとした痛みがあるようで、頬をさすりながら
「親父……何をする!?」
「馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけどよ? ここまでだったとは」
「お前は! 何度、言えばわかる!
「うぎゃあーー! ま、待つッス! お、親父、お尻をたた……あぎゃーー!」
「この俺様が、子供をかわいそうだと思ったから引き取っただぁ!? いつからお前は、俺の心を代弁して動くようになった? ああ!?」
「うぎゃ! じ、事実しやないッスかーー! 俺が親に利用されて、挙句の果てに捨てられて……だから親子は、俺を哀れに思って……ぎゃーー!」
懲りずにいる
「だからてめーは! いつから俺になったんだ、よ!」
「ぎ、ぎゃーー!」
「……俺の気持ちなんざ、俺にしかわからねー。もちろん、てめーの気持ちも、てめーにしかわからねーよ」
だけどなと、尻たたきをやめた。
たくさん尻をたたかれた
そんな彼の頭を、
「──かわいそうだから引き取ったとか、そんな理由で子供養えるほど、俺の
「…………」
体を離す。下を履けと促し、
その文字は
「この
朱雀には
「お前はいずれ、空白だった白虎の位置を守護する。そのために、訓練したり作法を学ばせたりもしたんだぜ?」
ぶっきらぼうに語る。
そのことに首を傾げながら、
「お前には才能がある。他者を動かすっていう才能がな。だから、その才能を生かせ! 間違った使い方はするな」
かわいそうという気持ちから引き取ったのではない。才能を見出だしたからこそ、生かせるような場を作るために、養子てして引き取った。
恥ずかしそうに、そう、話した。
「……な、ッスか、それ……はは。だったら初めから、そう、言ってくれればいいのに……」
感情が追いつかないのだろう。
傍観者の
「……いやぁ、あれは
親子の間で起きたことを、他人がどうこうできるはずもない。
あくまでも他人事として見ていた。
──それに、本当の意味で制裁を加えるのは
天井を凝視する。そこには、自分で開けた穴があった。
「あっちは大人たちに任せようぜ。それよりも……」
踵を返し、王座で眠る美しい人──
輝いていた銀髪は、ほとんどが黒くなってしまっていた。長いまつ毛や白い肌は変わらない。
「……
そっと、優しく頬に触れた。
──冷たい。脈が止まりかけてる。このままじゃ……
ギリッと、両拳を握る。椅子に両腕を固定させている糧を
「帰ろう、
泣きたくなるのを堪え、腕を伸ばす──
瞬間、意識を失っていた
「…………」
「……
意識は戻ったのに、気持ちがここにあらずなよう。眼差しは虚ろで、何も見てはいない。表情を捨てたような、そんな姿だった。
瞬刻、立っていられないほどの
親子の喧嘩をしていた
「
ときおり
あまりの勢いに
「おい
「ち、違うッス! 俺は何もしてないッスよ! た、多分だけど、暴走してるんじゃないッスかね!? うわっ!」
「……まずい、このままじゃ!」
──どうしたんだよ
ひときしり考えてみた。けれど結論は出ない。それでもやれることはあるのだと、自分に言い聞かせた。
「……あ、ゆ……」
熱く、チリチリと、髪や服が焦げていく。体の肉に燃え移っていき、激痛が走った。
けれど前だけを見て、重たい体を引きずって
──くっそ、前が見えない。でも、
体が燃えようとも、大切な友を優先したい。そんな気持ちだけを糧に、
「
どこをどう歩いたのか。それすらわからない、方向感覚を失うほどの視界の中、椅子に座る
両目は開いているが瞳は虚ろで、何も見ていないような……すべてを放棄してしまった姿の彼だけが椅子に座っている。
「
「離して……もう、嫌だ。怖い、怖い。
「……
──はは。いまさら気づいた。ときどき胸を刺すような痛み……あれは、
ようやく気づいた想いを笑顔に乗せる。そして感情をなくしたまま泣く
「帰ろう。俺たちの日常に。楽しくて、嬉しくてしかたのない日々に、さ」
「…………」
黒く、闇しなかった
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