第38話 暴力ではなく口で対決。これ絶体
意識をなくしたまま玉座に座る
それが
指先に
「ひゅー。
口笛を鳴らし、挑発した。
けれど
そのことに気づいた
「…………
「…………?」
「……
本気で困惑しているのだろう。どう、捉えたらいいのかを視線で訴えていた。彼の隣にいる
けれど
「真面目にやってほしいんッスけど?」
「あん? やってるさ。俺的には、な」
いつもの、
「……なあ
「……?」
片や
奇妙で、釣り合わないふたりの行動だ。それでも
「お前は
一見すると純粋な興味。されど、それが今の状況と何の関係があるというのか。
これにはともにいる
背中越しに受けるあきれを含む吐息に、
「いや、だってさ。気になるじゃん。
「……空気読んだ方がいいッスよ?」
「だからって、いちいち
いつの間にか
「ちょっ……あんた、本当に空気読むべきっしょ!?」
この緊迫した事態で、なぜこのようなことができるのか。子供染みた行動だと、非難する。
「俺が、平和主義なの知ってるだろ? 争いは好まないんだよ」
「いやいや、おかしいッスよ!? ここまで来ておいて、その台詞! 能天気にもほどが……っ!?」
「いやぁ、俺ってば小心者だからさ。こればかりは、な」
玉座のある階段に足を乗せた。そして頭を掻き、仁王立ちで
「俺、考えるとか本当に苦手でさ。でも、ときにはそういうのが必要なんだって思う」
「なあ、本当に教えてくんない? お前、人間なの? それとも妖怪?」
「……
「え? そうなの?」
緊張感の欠片もない会話が飛び交った。
「ってことは、半妖か。何の妖怪なんだ? ちなみに俺は、冥界の王と人間の半妖な」
それでも視線だけは
「……俺は、鬼の一族ッス。
キッと睨むように
「……鬼、か。あの町の出身ってのも、頷ける。だけど、わからないな」
警戒心を全身で現す
案の定、彼の言葉を挑発と捉えたようで、敵意剥きだしの眉をしている。瞳をギラギラと燃やしながら、憎い相手でも見てるかのような眼差しをしていた。
「
一歩、階段を登る。
「そうッスよ!
唾を飛ばすほどの勢いで語る。けれど瞳は揺れ、どこか後ろめたさがあるかのようだ。
「俺の目的は、
我を忘れて
「……
──なるほどな。実父の言葉に縛られてるってわけか。死んだやつの言葉だけを継いで……いや、違うな。多分こいつは……
壊れる寸前。
亡き父の言葉が呪いとなり、
そんな
「
この場にきてから覚えた違和感。それは、
「
ぐいっと男の肩を掴んで、無理やり立たせる。瞳を深紅に染め、答えを要求した。
「…………しょうがないじゃないッスか」
「うん?」
「親父は、俺を可哀想な目でしか見ない! 父上が死んで、親なしになった俺を可哀想って思いながら引き取ったんッスよ!? 愛情とかじゃなく、ただ哀れみだけで!」
これほど惨めなことがあっていいのだろうか。泣きたくなるのを堪えながら、声を震わせてるかのように怒濤していた。
「父上も、親父も、俺自身を見てれなかったんッスよ。便利な道具として……哀れな親なし子として。だから俺は……」
「
「
──ああ、こいつも同じだったんだ。俺や
父は自分に似て、黒髪だ。身長も高いし、何よりも強くて高貴な空気を持っていた。気品をもちながらも、冥界の民に信頼されている。それが父親だ。
そして美しい銀髪をなびかせた、女性のような見目の母。儚げで、どこか小動物のようなところがある、美しい人だった。
ふと、彼は、ある疑問を浮かべる。
──あれ?
これが何を意味するのか。残念ながら、彼にはわからなかった。
それでも今は、目の前にある問題を優先する必要に駆られる。深呼吸し、
「ふぐっ! あにふるっふか!?」
「
「尋ねもしないで勝手に決めるのは、よくないと思うけどな?」
そう言うと、扉の方へと視線をやる。すると見計らったかのように扉が開き、そこからひとりの男が現れた。
「……お、やじ?」
誰もが視線を伸ばした先にいたのは、黄色い華服を着た男──
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます