孤独
第36話 逃げ出せない過去と、追いかけてくる恐怖
『──どうして父上と母上は、わたしをあいしてくれないのだろう?』
それが親子の在り方なのだと、
それが三歳の子供にとって、どれだけ辛くて悲しいことなのか。
大人たちの自分勝手さに心を痛め、それでも生きていかなければならない。泣いても喚いても、味方などいなかった。
そんな
『実の両親がいる以上は養子としては無理だ。しかし、大人の力が必要なときがあった場合、私たちが祖父となろう。それから
『…………はい』
ほんの少しだけの光が、孤独な
それ以降、彼は公の場以外では
誰にも頼れない。誰も信じられない逃亡生活の中では、名前をくれた人たちなど、心の隅に追いやられるだけ。
『もちろん感謝はしています。こんな私でも、気にかけてくれたのだから。だけど……』
心が折れていく。バラバラと、かろうじて繋がっていた名前というものが、あっけなく砕けてしまった。
『きっと私は、ひねくれているのでしょうね。彼らの想いを無にしてまで、心を闇へと沈めてしまうのだから』
──ああ、謝らなくては……。名前をくれて、助けようとしてしていた叔父上たちに。彼らは私が逃亡生活を続ける最中、ときどき私の元を訪れては道を示してくれていた。逃げ道ではない。術の扱い方や、字の読み書きなど。叔父上たちだけが唯一の救い。
『
そのとき、
『ああ……私を捕まえるために、
幼かった
その魔の手が、すぐそこまで迫っていることを知る。
『……もう、逃げ道すらない』
唯一差していた光ですら、
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