第35話 待っててくれ! 絶体に助けるから
そんな
「
常に旅のお供として一緒にいるロバ……ではなく、白い馬に跨がって話す。
子供の愛玩用となったロバには、
そんなふたりは動物たちの背に乗り、目的地へと進んでいた。
町を出発する直前、
当然、
これ以上ないほどの衝撃だったようで、
代わりに口を開いたのは
「
そしてもうひとつ。彼らは秘密にしていた真実を打ち明ける。
「私が孫を助けていたとき、
それが
「あの町で孤児になった子供は多い。残念なことに、すべての子供は救えまい。それでも、ほんの一握りだけでもと、私と
偽善者と言われようともかまわなかった。少しでも子供に未来をあげられるのなら、それでいいに越したことはない。
彼らは、淡々と打ち明けていった──
「身勝手な大人だからこその選択だ。こればかりは、な」
そう口にする
彼らの行いがどうだったにせよ、すべての決断は自分で考えなくてはならない。いつまでも子供でいることができない世の中だからこそ、彼らの行動を咎めることができなかった──
「俺だってさ、もう大人だ。だけど……」
必死に走る馬の頭部を見つめ、紐を軽く引っぱった。
──多分、俺も同じ立場だったら、そうしてたんだろうな。すべてを救おうなんて、思わないはずだ。目の前にあることだけしか考えられない俺だからこそ、お師匠様たちの意見に反発なんてできなかったんだろうな。
自分はまだ、子供でありたいわけではない。それでも、
「……子供を引き取るってのは、本当に大変だからな」
「なあ
少し後ろを走るロバに乗る
するとロバは足を早め、彼の隣に並んだ。ロバの手綱をひく子供は首を左右にふり、申し訳なさそうに眉根をよせる。
「
ふたりは走るロバや馬たちの背に乗りながら、風の抵抗を体に受けていった。髪が邪魔をして前を見えなくしてしまえば、無理やり退かす。寒さに負けそうになったら脇をしめて、抵抗を軽くしていった。
そうでもしないと、体が吹き飛ばされてしまう。
ふたりはそれほどまでの速度で、動物たちを走らせていた。しかしそんなことをしていれば、動物たちの体力にも限界がくるというもので……砂利道のど真ん中で二匹は動かなくなってしまった。
「……頼むよぉ、走ってくれ」
情けないほどに眉を曲げている
ロバの方は起きている。けれどぜぇはぁと、呼吸がかなり荒くなってしまっていた。
「父上、今日は無理だと思います。明日にしましょう」
早く
「……そう、だな。俺たちよりも足が速いこいつらにバテられたら、終わりだし」
──
大切な人の顔を思い浮かべながら、焚き火を視界に入れた。ふと、ある疑問が脳裏に浮かび、それを焚き火を囲んだ向かい側にいる子供へと投げてみる。
「……なあ
それが、真実となっている。
「……僕も詳しくは知りませんが、
「そうなると、だ。あいつは妖怪の可能性あるな」
──どちらにせよ、情報が少なすぎる。
「
うーんと、頭を捻った。腕を組んで、ない脳ミソを必死に絞りだす。
「……
思考を放棄して、そばにいる二匹の動物を睨んだ。見れば、ロバは彼の髪の先を口に入れていた。馬にいたっては
──こ、こいつら。俺らが、お前たちの足がないと困るのをいいことに、人間を下に見てやがる!
「人間様を馬鹿にしやがって……って、何で
いつの間にかロバは、
「ひょーー! お、俺は、家畜以下かよーー! ぶっ飛ばす!」
頭にきた彼は、二匹の動物と争いを始めた。
髪を引っぱられては蹴られ、鼻で笑われてはキレて……
そんな彼を、
「…………動物に鼻で笑われる人、初めて見ましたよ」
子供の乾いた笑い声だけが、焚き火の中に消えていった。
□ □ □ ■ ■ ■
謎の陣に吸いこまれた
そんな場所に、ひとつだけ椅子がある。豪華な椅子は所要、玉座と呼ばれるものだ。
「…………」
その玉座に、
コツコツ……
「…………」
音の主は、長いまつ毛を震わすことすらしない
「……ようやく、手に入れた」
眠る
「俺たちはずっと、この日を待ち焦がれてたッスよ」
暗闇の中、突然、
「
誰も聞いていない地で、静かに語る。
光が声の主の顔を照らした。
「俺が、
その声の主の正体は、
もはや黒髪だった頃の面影など、ありはしなかった。
それでも彼は、くつくつと不気味に笑う。
響き渡るのは
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