第34話 白月《パイユエ》の秘密と黒幕
林の奥へと進むと、広い場所に出た。そこには小さな湖があって、とても静かなところだ。
「……で? どういうことだ?」
足を組み、不機嫌丸出しになった。
「……そう、ですね。まずはこの、
「この
「お師匠様が? ……あれ? そう言えばこの
けれど眼前にある
──ああ、そう言えば……昔、お師匠様から聞いたことあった。確か、國を揺るがす争いを止めるため、二代仙家が手を組んだって。それが黒と黄で、お師匠様は見届け役のような、まとめ役みたいなのを
彼は、自他ともに認める物覚えの悪さはある。それでも忘れることなく、しっかりと脳の奥にしまっていたようだ。
そんな自分に驚きながら、
「はい。父上のおっしゃるとおり、これは
「……何でそれを持ってるんだ?」
そう問われ、
「僕のいた未来では、彼ら……
「動けないって……」
──そんなに、お師匠様たちは忙しいのか? だって、友好の証でもある
岩の上で胡座をかきながら腕を組んだ。うーんと、唸りながら百面相する。眉間にシワをよせては苦笑いし、唇を尖らせながらしょんぼりした。
「……父上は、表情筋が軟らかですね」
くすくすと、子供は朗らかに頬を緩ませる。場の空気が和らいでいきますねと言い、話の続きを始めた。
「僕はそういった経緯から
ようやく、理解したのだと呟く。
それは黒髪のせいかもしれないし、謎を秘めた雰囲気からくるものなのかもしれない。
──まあ、今重要なのはそれじゃないしな。その答えは、
「
そのような体質、妖怪ですら存在しないのだろう。けれどこの世には、絶体などという言葉は存在しない。ほんの僅かでも、希少な体質ならば。
そう考えていた。
すると
「この姿は、本来のものです。時を渡るという行為は、非常に危険を伴う。赤ん坊の姿になっていたのは、その過程で起きた副作用みたいなもです」
最初はこの姿で、
「……ん? え、俺?
自分を指差す。驚きのあまり、起き上がった。その拍子に足を滑らせて、岩から落ちてしまう。あげく、そばにある湖の中へと落下してしまった。
「………」
それを池の中で、鼻から上だけを出す
水浸しになった服が気持ち悪いと思いながらも、己のドジを呪った。
「あー、くそぉ! ビショビショだ……じゃなくて! 何で俺なんだよ? お前、
濡れた髪絞りながら、じっと子供を見つめる。
「僕の知る歴史なら、あの場所……僕と母上が氷漬けになった地、
「ん? 俺が何で、そんな場所に? 用はないはずだぞ?」
今度は岩の上ではなく、草の
「いいえ。父上が、あの町に行くはずだったんです。でも強力な歴史改変の力が働き、なぜか母上が来てしまった……」
「えっと……そのあたりは、俺にはわからないんだけど」
こんがらがってきた。頭を抱え、必死に脳内で整理していく。
──そもそも、何で俺が
腕組みし、もの思いに
「……ああ、そう言えば三年ぐらい前、お師匠様に修行のためにって、
──そうだ。思いだしてきた。確かあのとき、
そのことを、包み隠さず伝えた。
「…………もう、そのときから、彼の計画は始まっていたのでしょうね」
「彼? 計画?」
「……」
「……」
ふたりの間には、言い知れぬ無言の時間が流れていった。お互いを見てはいる。けれど、何も言わなかった。
けれど、騒がしさが命のような
「やめだ、やめ! 腹の探りあいみたいで好かない! 今の俺には
いつ、腹の探りあいをしたのだろうか。そう、問いたくなるような唐突な叫びを発した。
一緒にいる
「そんな状況で、お互いが秘密にする理由はないだろ?」
──そうだ。俺は、知らなければならないんだ。
裏などいっさいない、素直なまでの笑みで話した。
「……わかりました」
どこまでも、底抜けに明るい
きっかけは、滅びたはずの
寂れて、妖怪ですら住めなくなった土地ではなくなっていた。
それを不信に思い、過去が書き換えられているのではと考査する。
けれど、
「そのときに、
過去や未来へ渡るということが、どれほど危なのか。それを知ってはいた。けれど過去が変わってしまい、結果として
「過去や未来を改変するのには、
その石の持ち主は、無理やり力を解放させられた。そのせいで何十年も眠り続けている。
そう口にする
「どうして……どうして母上が、あんな酷いめにあわねばならなかったんでしょう」
「母上って……」
──ちょっと待て。こいつの話をまとめると、母上ってのは
考えた瞬間、ズキッと胸が痛んだ。
「…………?」
痛みの原因がわからず、小首を傾げた。胸を華服の上から触り、きょとんとする。
そんな彼の鈍さを知ってか知らずか。
「父上、よく聞いてください。裏で何もかもの糸を引いていたのは、間違いなく
「は? あ、え?」
子供の真面目な声に、彼の思考は今に戻っていく。
「すべての元凶は、あの男……」
淡々と告げる。
「
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