第26話 鏡を持って王都へ向かうよ
「……っ!?
右手の人差し指に黒い
「……っ!
半ば無理やり膝をつくかたちとなったた男は剣を離すことなく、彼を睨む。ふうーと深呼吸すると、全身の筋肉を膨らませた。そして「ムンッ!」というかけ声の後に、
「甘い!」
「ひょーー!」
そんな力業に、
「へ、
バクバクと、心臓の音が大きくなっていく。手汗だらけになっても、真っ向から立ち向かっていった。
相手は自身よりも遥かに目上、差し引いては、圧倒的強者である。それでも譲れないものがあるのだと、震える足を無理やり立たせた。
「
気丈に振る舞いながら
──やっべぇ、足の震えがとまらない。お師匠様とは違った意味で
目の前にいる大男を見上げ、ちゃんと説明してくれと懇願する。
「……む? それもそうだな、すまん」
存在に素直な人のようだ。剣先を床に刺し、腕を組んで
その姿は非常に愛らしく、痛めつけた
「……うっ、ぐっ! す、すまなかった」
「……あはは。さすがの
「みなまで言うな。俺とて、子供に手をあげたこと、早まりすぎたと思っている」
細い目が、
「──僕は、父上と母上の子供です。それ以外の何者でもありません」
エヘヘと、子供っぽい笑顔で
彼ははにかみながら子供の頭を撫でた。そして
「……
バツの悪そうに頭を掻く
「おそらく、霊力の類いなのだろうな。それが香りのような空気となって、俺の鼻をくすぐるのだ。多分だが、あのふたりも同じようなことを言うのではないか?」
あのふたりとは、
──うーん。まあ、この人は嘘つけない性格だから信用はしてるけどさ。でもそれで、どうして母上と同じ香りがするんだって話しになるんだよな。
騒動の原因となっている子供を見る。
成長した
「……なあ
──これで答えてくれたら苦労はしない。いつも聞こうとすると、
二階の部屋にこもっていた
ただ、彼らの目的は鏡のよう。腕に抱く鏡を見せてほしいと頼んできた。
「……馬鹿弟子よ」
「あ、はい」
馬鹿弟子という単語が定着してしまった
「
「……それ、
俺にはさっぱりですけどと、屈託なく笑う。
その笑顔に絆されたようで、
さんには、揃って彼の頭をもみむちゃにする。
「は? ちょっ、何すんだよ!? うわっ!」
突然おもちゃにされた彼は、両目を見開いた。けれどそれほど嫌がってはおらず、むしろ楽しそうに笑っている。
「……この鏡に関しては、残念ながら我等の手には負えん。王都に、鏡を作った職人の子孫がいるはずだ。そこで詳しく聞くしかなかろう」
視線を鏡……ではなく、
そんな子供の手を軽く握り、
──よし。もともと最終目的地は王都だったんだ。そこは変わらないな。
階段近くで寝そべっているロバを起こした。ロバの背中に
「馬鹿弟子よ。私たちは先に王都へ行っている。鏡職人には、事前に連絡しておいてやろう」
「はい、わかりました」
残され
「──よし。それじゃあ王都目指して、旅を再開させるか!」
少しばかりの心伴い想いを胸に隠し、
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