第21話 さんにんの仮面の男は何者だ?
太陽が沈み、漆黒の時間が訪れた。それを期に、
建物の一階には、
一階に窓はなく、他の部屋へと通じる扉もなかった。
広さは、大きな城一個分といったところだろう。
「──すっげぇ。本当に、夜になったら姿が現れたよ。しかも鍵開けしなくても入れた……どうなってんの?」
ひそひそと。誰が潜んでいるのかもわからない場所での大声は控え、柱の影に隠れながら問いかける。
「この建物は、影を吸収して姿を消しています。そうなると影が存在しない夜は、どうなると思います?」
眉根をよせて悩む
真剣に考えているであろう
「では、言い方を変えます。昼間は隠れる必要があったものは、夜にはどうなると思いますか?」
「え? ……うーん、と。影を使ってまで建物は隠れてたわけだろ? それが必要なくなったわけだから……あっ! 昼間とは逆……つまりは、隠れる必要がないから姿を見せる!」
無垢ともいえる笑顔で答えていった。
胸をはり、賢いだろと、白い歯を見せる。
「ふふ。ええ、そうです。だけどそうなると、ひとつの問題が浮かび上がります」
扇子隠した口を軽く上げ、妖艶さを瞳に乗せた。
銀の髪が月明かりに染まれば、妖しく、とても美しい。
「んんっ!
「……今、そんな話してませんよ?」
彼の不可解な言動に、
睨みつければ、
「ちゃんと聞きなさい。……いいですか? 影を望み、夜を好む。そんな存在がどういうものなのか。あなただって、わかるはずでしょう?」
そう、教えた。
「……妖怪、か」
たどり着いた答えを呟いた。
肯定するように、
「ええ。おそらくここは、妖怪の住み家なのでしょう。……ああ、
ふたりは子供を危険なめに合わせたくないからと、
「で?
無闇に動くのは得策ではない。かと言って、ずっと柱の影に隠れているわけにもいなかった。
「……そう、ですね。一階は何もないようですし、二階へ行って……っ!?」
足を一歩踏み出した直後、二階の両端から、たくさんの妖怪が現れる。妓女の格好をしている者もいれば、貴族のような豪華な華服を身につけている妖怪もいた。見た目は普通の人間と大差ない者から、明らかに妖怪だとわかる輩もいる。
彼らは、楽しそうにお喋りをしながら一階へと降りてきた。
「おい、聞いたか? あのお方の行方が、掴めたそうだ」
「何ぃ!? それは本当か?」
「ああ、確かな情報だぞ。何せ、あの男のお墨付きの者が、見つけてくれたらしいからな」
「おお、それはよかっ……んん?」
「ん? どうした?」
妖怪だと丸わかりな外見の者が立ち止まる。骨は大丈夫なのかと心配になるほどに首を回転させ、あろうことか
「…………んん?」
「おいおい、本当にどうしたんだよ?」
隣を歩く妖怪が訝しげな眼差しを、首が回転している者へと向ける。
瞬間、首が回転している妖怪は目をパッと明るくさせた。
「いや。悪い悪い。何か、人間の匂いがしたなぁって思ったけど、気のせいだったようだ」
「ハッハッハッ、しっかりしてくれよ? これから人間たちを驚かせに行くってのに」
物騒なことを口走りながらぞろぞろと、建物の出入り口へと向かっていく。そして扉を開け、外へと出て行ってしまった。
この場にいた妖怪たちがすべていなくなったのを見計らい、ふたりはドッと肩の力を抜く。
「あ、ぶなかったぁ~。俺、半分人間だから、それでバレちゃいそうになったのかも」
ごめんな
「……で? どうするんだ? 二階、行くか?」
キョロキョロ。柱から顔だけを出し、周囲の様子を伺う。誰もいないことを確認し、よしっと言って中央へ進んだ。
広いけれど何もない寂しい空間に、彼はすっと立つ。
美しく整った顔立ちと長身。長い濡れ場色の髪がさらりと揺れれば、
正された姿勢で立つ姿には、普段から想像もつかないような気品さが垣間見れる。
そんな彼の姿を目に焼きつけた
──
この気持ちは何だろうか。自身の胸に手をあてて、小首を傾げた。
「ん?
「え? あ、いえ……っ!?」
何でもありませんと返事をしようとしたとき、ふたりを不気味なまでの空気が包む。
ふたりは互いの姿を見合い、頷いて、空気が淀む原因を探った。
──これは、先ほどの妖怪たちとは比べ物にならないほどの霊力が溢れている。いったい誰の……っ!?
二階の両端にある扉のひとつ、右側がゆっくりと開かれていく。するとそこから、さんにんの男たちが現れた。
ひとりは頭の上で、髪の毛をお団子にしている。青い華服を着ていて、腰には八角形の
その男の左隣には頭ひとつ分ほど背が低く、猫背な男がいる。黄色の華服を着ていて、手に札を数枚持っていた。
さんにんめは、青い華服の男の右隣にいる男。ふたりよりも体格がよく、肩幅が広い。肩ほどまでの黒髪と同色の華服を着、背中には背丈よりも大きな剣をしょっていた。
さんにんは皆が皆、
「…………気のせいか」
青い華服の男が、低い声で呟いた。そしてふたりを連れて、右側の扉の奥へと消えていく。
「──
野生の勘とでもいうのか。それが働いているようで、冷や汗を拭いながら床へと降りてきた。
戦ったら勝てないのが目に見えているらしく「早く出よう」と、急かす。
「そうは言いますけど、この建物の陣を破壊しない限り、私たちはこの付近から出ることすらできませんよ?」
「あちゃー。そうだったぁ!」
手詰まりなのは同じで、ふたりはどうしたものかと悩んでしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます