第17話 戯山《ぎざん》は王都への近道。だから向かいます
太陽の光が真上に差しかかった頃、一行は山を抜けて参道を歩いてた。人通りはあまりなく、猫やうさぎなどの野生動物が行き交いしている。
周囲を雑草に囲まれた整備されていない砂利道を進み、彼らは王都へと向かっていた。
「──
旅の途中から加わった男、
國の地理を把握していない
「そうッス。ここから南東へと進むと、そういう名前の古びた建物があるらしいッスよ。何でもそこは、昔は村だったらしいッスよ。だけど村人全員が妖怪に殺されて、誰も住まなくなったらしいッスけど。で、そこが王都へと近道でもあるんッスよ」
けれど抱きつかれた彼は苦笑いだけで済ませ、振り払おうともしない。
「…………」
それを見ていた
「な、なあ
慌てふためきながら、話題をすり替えようとした。けれどすぐに
「ちょ……
強気になれない彼を相手に、
微妙な空気の原因とも言える
ロバに跨がる
「
パッカパッカと、ロバの
そんな
漆黒の髪色を揺らす
──私のように、血色が悪い顔色をしているわけではない。そこだけが救いですね。
──髪も、肌も。私は普通の人間より薄い色だ。それが、どうしても好きになれない。
髪や肌の色が原因で、誰にも言えない闇を抱えてしまっている。それを言葉にしないのは、
黙って時がすぎるのを待つ。言われるがまま、言われたい放題に罵倒を浴びたとしても、我慢すればいい。そんな気持ちで日々を過ごしていた。
──
苛められることを恐れ、過保護になりつつある。そんな自分の性格を把握していながらも、とめられるものではなかった。だからそこ、
──彼は、私とまったく違う。誰とでも仲良くなれて、人当たりだっていい。常に前だけを見て、弱気になったりしない。
そんな性格が羨ましいと思う反面、憎らしいとすら感じていた。けれど、口にすると関係が拗れてしまう可能性がある。
そう気づき、ため息だけにとどめた。
「──
「え? ああ……
腕を組みながら、一生懸命考えているよう。間違ってるかなと、
「
砂利道の小石を退け、土を晒けだした。そこに枝で丸を描く。丸の中に
「あの山には、確かに妖怪がいます。ですが、とるに足らない……何の力も持たない普通の人間ですら、退治できるほどに弱い妖怪ばかりです」
「え? そ、そうなのか!? 俺はてっきり、闇の世界を統べる王様並みの強さを持つ妖怪たちがいるものとばかり……」
こりゃあ驚きだ。
素直な気持ちで、声をあげる。
「そう言われているのには、ちゃんとした理由があります」
彼の実直なまでの表現に微笑みを送り、枝を持ちなおした。
これは人間の深層心理にある恐怖が見せる、幻の一種でもあった。
「誰でも苦手ものはあります。ましてやそれが妖怪となればなおのこと、嫌悪感や恐怖心が強くなります」
人の心が作りだした幻影が独り歩きし、口伝てで広まったのではないだろうか。
「……昔は妖怪だらけの地だったそうです。けれど百五十年ぐらい前からは、花が咲き乱れる美しい地になったと聞きます」
「…………あっ!」
何かを思い出したかのように、
「そう言えば、お師匠様からそんな話を聞いてたよう……な?」
「いや、何で疑問系なんです?」
「え? だって、あんまり覚えてないって言うか……勉強苦手で、歴史の殆ど覚えてねーもん」
両腰に手を置いて開きなおる。
「誉めてませんからね?」
彼は小さな悲鳴をだす。
「──話を戻しますが、その
「うっ……お、おう! そ、そうそう」
そんなやり取りを横目に
彼の落ち着かない行動に疑問を浮かべながら、ロバの背中に乗って
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます