第16話 自覚なしイチャイチャは子供には毒です
三歳から七歳へと、成長を遂げた
それでも目的地へと進まなければならなかったため、彼らはロバをひき連れて移動を開始する。
ロバをひいて歩くのは、
「──母上、あの人……
楽しそうに昔語りをしている
──別に、
無意識なのだろう。
「……母上、焼きもちですか?」
「違います! 私はそんなの知りません!」
──そうですよ。私が焼きもちなんて焼くわけがない。だって
腹の底から涌いてくる怒りや焦りが、大きな瞳を潤ませてしまう。
「……っ!? 母上……むむっ!」
子供は
「い、てっ! は? え? な、何!?」
楽しく会話をしていた矢先の出来事に、急いで振り返る。子供に引っぱられていると知ると、困惑した表情になった。
「え?
退屈かと聞く。
子供は手を離し、頭の上でべそべそといじけている
「……あー、それは……すまん」
彼自身、
「……あなたの交友関係に口を挟む権利は、私にはありません。懐かしい人との再会が嬉しいという気持ちもわかります」
「だけど……」
ギュッと、
「えっと……寂しかったって事、か?」
「な、ば……ち、違います! 私は別に寂しいとか、ありません!」
図星だったのか、顔を真っ赤にさせた。怒り半分、恥ずかしさ半分。がーと、心の底から恨み辛みのようなものを口にしてしまう。
「私のことなんて、どうでもいいんですよね!? そりゃそうですよね。ぽっと出で、何者かもわからない私なんかより、昔から知っていて信頼できる友の方が、一緒にいて心地よいはずですから」
──とまらない。
「……
「……っ!?」
普段、にこにことしていて笑顔を絶やさない
「あのなぁ。こいつとは三年以上、ずっと会ってなかったんだ。そりゃあ、懐かしさに花を咲かせるさ。それが駄目って言うのか?」
「ち、違います! そうじゃありません。私も同じことがあれば、
反論する
「じゃあ、何が不満なんだ?」
「……わ、わかりません。何で、こんなにもイライラするのか。私にもわからないんです」
──自分の感情が押さえらえられない。私は、本当にどうしてしまったのだろう。
けれど彼が、楽しそうに誰かと話している。それだけで、胸の奥が締めつけられていった。
泣きたくなってしまう。
自分の鼓動を止めてしまいたくなる。
そんな、不思議な気持ちに駆られていった。
「うーん……熱、はないよな?」
「……よし。よくわからんが、すまん!」
「え?」
唐突に、
「んんー! かわいい! ……じゃなくて! 俺が
「……わ、わかりません」
両指をモジモジとする。笑顔の
「な、何で、こんなにも胸がざわつくのか。私にもわからないんです」
再度、上目遣いになった。
「うっ、ぐっ!」
すべてにおいて
そんなふたりを目撃していた
「……父上と母上が見えません」
「見ちゃ駄目ッス。これは、子供は見るものじゃないッスから」
「……あのぉ、一応聞くッスけど、ふたりは付き合ってるんッスよね?」
こんなに見せつけられたのに、恋人ではないのはおかしい。ハッキリと伝える。
「んん? 何、言ってんのお前。俺と
、男同士だぞ? 付き合うなんて無理だろ。ましてや、好きってわけじゃねーし」
利害の一致で行動をともにしているだけ。ふたりは曇りなき眼で答えた。
「…………」
瞬間、
「……そんなんだから、すれ違いが起きるんッスよ」
虚しく呟かれた言葉は、彼らには届かない。もう距離がどうこうではなく、ふたりの心の鈍さが問題なのではないだろうか。
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