第三章 懐かしい顔ぶれ
第13話 鳥さんは鳥さん。でも、妖怪は鳥さんではありません!
関所を出てしばらくすると、雑草生い茂る山へと入った。
太陽の光を遮るように並ぶ木々は、先が見えないほどに高い。それでも、木々の合間から陽光が射しこんでいた。豊かな緑と、冬に咲く花が美しい。空気も清んでいて、呼吸をするだけで自然の香りが嗅覚を誘った。
「あっ。しろい子がいます。ははうえ、あれはなんですか?」
「ああ、あれは兎ですよ。とてもふわふわしてて、可愛らしいですよね」
ここには野うさぎや野良猫など。野生動物がたくさん生息していてる。
「ほら、あそこにいるのは梟と呼ばれる鳥ですよ」
指差した先には、白い羽に黒が混じった鳥がいる。首をくるくると左右に動かし、羽を大きく拡げては両眼をぱちくりしていた。
その梟を興味津々に見ながら、きゃっきゃっと笑う
「では、ははうえ。あれはなんという鳥ですか?」
今度は、茶色い羽毛の鳥を指差した。
「あれは……鳥です!」
「鳥、ですか?」
「そうです。鳥です」
「鳥ですかぁ~」
あっさりと、
「…………いや。ちゃんと名前、教えてやれよ」
ふたりの微笑ましい姿を見物していた
「仕方ないじゃないですか。私は鷹と鷲の違いなんて、わからないんです」
視線を鳥へと移す。
茶色い羽毛と、かわいらしい眼が特徴の鳥が、枝に乗ってすやすやと寝入っていた。
茶色い鳥ということしかわからず、
ふと、先ほどまで楽しそうにしていた
「……ん?
動物観察に飽きたのだろうか。ロバの背中に乗りながら、足をぶらぶらとさせていた。その表情は不貞腐れている。
「
心配になってしまう。そう口にした。
すると
「ちち、うえ。ははうえと、いっしょに……」
右手で
顔をあげてふたりを見ては、物言いたげに瞳を潤ませる。
「
「……ん」
子供が頷く。恥ずかしそうにもじもじとしながら、ちょっとだけ頬を膨らせた。
──ふふ。
「……
今にも泣きだしそうな子供の頬を触る。もちもちとした柔らかさに頬を緩ませながら、むにむにと手で遊んだ。
「私も、彼も大人です。そんな大人がふたり乗れるほど、このロバさんは力持ちではありません。それに、どちらかが歩いてロバさんを引っぱっていかないと、進むことができません」
ですよねと、
「こいつめ! ……まあ、
優しく諭した。
「はは。
「うーん。日が落ち始めてますし……このまま進むのは得策ではありませんね。この辺りで、野宿するしかないかもです」
空を見上げれば、既に太陽の光が降りている。まだ青空ではあるものの、うっすらと星が見えはじめていた。月は確認できないけれど、寒さが数時間前よりも増している。
「まあ、それしかないか。よし! じゃあ、俺は薪を用意するよ。
できるかと腰を低くして、子供に尋ねた。
「
隣でせっせと小石を手にする子供を見守り、言葉は彼へと向ける。視線も送り、薪を取りに出かけようとする
「……お師匠様が、すっげぇ厳しい人でさ。ひとりで生きていくために、よく野宿を強いられたんだよ」
そう語る背中は、少しばかり丸くなっているようにも見える。はあーと盛大なため息を溢し、頭を掻いた。ぶつぶつと、師匠への怨み節を呟き続けている。
そんな彼に、
──
申し訳ないと思いつつ、声をかけようと腰を上げた。そのとき、くいっと、
「ん? どうしました?」
「……っ!? あれは、妖怪!」
それに気づいた彼らは警戒を強めていった。
「
「──よーやく、見つけたッス」
烏の妖怪がいる木の天辺に、全身真っ黒な姿をした何者かがいた。片腕を止まり木のように差し出せば、烏の妖怪は羽を拡げてそこに四本肢を降ろす。
謎の人物は烏の妖怪を撫で、
「探したっスよ。
布で隠された顔の中で唯一確認できる瞳を、強く光らせた。
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