第12話 白黒の髪は好きですか? 嫌いですか?
──何だろう?
逆光を浴びて金色に輝く銀髪を目で追う。さらりと、蜘蛛の糸のように細い髪が、輝き続けていた。
ついと、きれいだなと呟く。
「……?
「え? あ、ああ、いや……うっ!」
ズイッと、
長いまつ毛の下から見えるのは、男とは思えないほだに大きな瞳だ。白くきめ細かな肌や、艶めかしい薄い唇。少し力を入れただけでもポッキリと折れてしまいそうな首も、細い体も、すべてが悩ましいほどの色香を放っている。
そんな彼に、口づけができそうなほどに近づかれ、
心臓が高鳴る。鼓動が早まり、渇いていないはずののどがカラカラになっていった。
冷たい風を体に受けているのに両手が熱くなっていく。
──本当に、きれいな顔してるな。これだけ美人だとやっぱりもう、誰かのものなんだろうな。
そう考えた瞬間、胸の奥がチクりと痛んだ。
「……?」
未だに、この痛みの理由がわからない。
小首を傾げて、きょとんとなった。
「
「え!? あ、えっと……いてっ!」
「変な人ですね」
「あ、あはははは……ん?」
笑って誤魔化していたとき、違和感の正体を知った。起き上がり、今度は彼自身が
けれど頭のよくない
あまりにもきれいに流れる扱いに、
「……
「はい?」
「いや。何か、
「むっ! どうせ私は、女みたいな顔ですよ!」
「え? いやいやいや。違うって。そうじゃなくて……」
機嫌を損ねてしまったようだ。
しばらくそれが続いた。
「……
問題の箇所を指差す。そこには、耳に近い左右の一部が黒へと変色した髪があった。一房というべきか。夜にも負けないほどの漆黒で、銀髪の中にあって、かなり目立つ。
「……っ!?」
指摘を受けた
黒髪になっている部分で口を隠し、ううーと唸った。
「と、時々、髪の一部がこうなるんです。理由も、いつ、戻るかもわかりません」
恥ずかしそうに、そっぽを向く。耳まで真っ赤にさせながら、黒髪部分だけを引っぱったりしていた。
その姿勢のまま、上目遣いで見つめられる。
「へ、変、ですよね?」
「うっ、ぐぅ! んんっー!」
──やっべぇ。めちゃくちゃ可愛い。こんなの見せられたら、ギュッてしたくなっちゃうじゃないか。
「……こほんっ! べ、別にいいんじゃねーの?」
その場で四つん這いになりたい気持ちを押さえ、平常心を装う。
そう言いつつも、チラチラと
遊んでほしいとじゃれつく
──
そう考えるだけで、にやけてしまった。
「よーし! 気を取りなおして、目的地へ行くか!」
──やべぇ。何かよくわからないけど、めちゃくちゃ嬉しい。
心の中に生まれた不思議な感覚に疑問を持ちながら、
こうしてふたりは本来の目的地へと向かうため、来た道を引き返していった。
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