第7話:ハードボイルドは黄昏に染まっていく。

俺と古都華は、俺の親父が抱えていた事件を見事に解決した功績で

古都華は念願なかって親父からクローン猫を買ってもらった。


親父が持ってきた大規模な誘拐事件を、古都華と覚醒したゼルが片付けて

しまって、おまけに誘拐組織まで壊滅してしまった。


俺はそれをいいことに親父の後をゆいで探偵にでもなろうかと思っている。

古都華がそばにいれば怖いものなしだからな。


彼女と組んでハードボイルドもいいかなって思った。


古都華は親父から買ってもらった電気猫を可愛がった。

考えてみたら古都華の不思議なチカラがあったら、マグカップでも

本物の猫に変えられたんだけど、それは時間が経てば元に戻るから一時的な

ものになるそれじゃ意味がなかった。


って言うか本物の猫なんか、今の時代めちゃ珍しい。

だから本物のペットを飼ってるってやからは偉ぶってるセレブって金持ち。


ストロベリー♡プライムの近所には倉庫街があってその通りに怪しげな

ジャンクな店もあって欲しいものは金さえ出せば、なんでも手に入った。


おネエちゃんのパンツから核ミサイルまで・・なんでも。


俺のおやじは古都華のクローン猫をそのどこかの激安ペットショップで

手に入れたらしかった。

昔に比べたら今の都会は多種雑多・・・諸外国から人がたくさん入り

込んできて生活にあぶれた難民なんかも秘密裏に日本に紛れ込んでした。


地域一帯はもうどこの国か分からない混沌とした街になっている。


そんなどんよりした街にあってそれでもストロベリー♡プライムは元気だった。

古都華の人気で店は繁盛していた。


俺と古都華の関係はというとお互い好き同士なんだけどあまり深くは進展して

ない・・・微妙な関係?


でも俺はそんな関係、まんざらでもない・・・古都華にはっきり告ったことは

まだないけど

無理に想いを言葉にしなくてもなんとなくお互い分かってる。


古都華は気のないそぶりをしていながら時々俺を誘惑したりする。


ある日のこと、店に俺の親父がやってきた。

また何やら事件に首を突っ込んでるらしい。 

親父はたまにしか店にやって来ないんだけど今回は古都華に買ってやった

猫の様子を見に店に顔を出した・・・ってのは口実。


とうぜん古都華は喜んだわけで親父にありがとうのハグなんかしていた。

この間の誘拐事件以来、親父は古都華に全面的信頼を置いていた。


で、親父の話によると・・・家政婦のガイノイドがオーナーに怪我を負わせて

逃亡したらしいって話だった。

そのオーナーってのは大手企業を経営している社長。


ちなみにアンドロイドは男性型、ガイノイドは女性型をいう。


で、そのオーナーは、家政婦のガイノイドをすこぶる気に入っていて

警察には届けたくないから極秘裏に家政婦ガイノイドのいどころを

探してほしいと親父の探偵事務所に依頼があったらしい。


「オーナーを私を傷つけるような、そんな子じゃないとオーナーは言い張る」

「なにか理由がるはずだと・・・」


一般的にロボットやガイノイドが人を傷つけたり犯罪を犯すことなど

普通はないはず・・・ロボット三原則ってのがあってそういうことは

できないようプログラムされている。


誰かが改ざんしないかぎり、普通そんなことは起こらない。


この事件の裏にはガイノイドのオーナーに対する誰かの逆恨み?

あるいは企業の乗っ取り。

または、いやがらせ・・・そんなことを企んだ奴の仕業じゃないかと

親父は睨んでいた。


ガイノイドのオーナーは大きな声では言えないが裏社会の大物でも

あって商売に関しては、かなりえげつない男らしい・・・金のためなら

平気でなんでもやる・・・。

その主人のせいで自殺した人もいるらしい。

だから、誰かに恨まれてもおかしくはなかった。


で、親父は情報集めに今、あちこち奔走してるらしいんだが、今の所

ガイノイドがどこに逃げ込んでるのか未だ不明なんだそうだ。


自分一人じゃ、時間がかかりすぎると思った親父は俺と古都華を

このアンドロイド探しに巻き込もうという魂胆らしい。


店にいて代わり映えしない客を相手にしてるよりハードボイルドが

したい古都華はすぐに話に乗った。


ってことは当然俺も引っ張り込まれる訳で・・・古都華ひとり危険なことは

させられない・・・って言っても多分助けられるのは俺のほうだと思うけど・・・。


さっそく、俺たちは親父とは別行動でガイノイドの行方を探し始めた。


それにしても、そんなことに利用されたガイノイドが一番可哀想だ。

下手するとガイノイドも犯人によって証拠隠滅のため破壊されてる可能性がある。


ロボットやアンドロイド、ガイノイドなどはいつでも犯罪に利用される。

人間でいうのはなんて自分勝手なんだろうってつくづく思う。


そんな訳で、しばらく店は自主的営業停止だな。


で店を出た古都華は、隣の散髪屋の店の前に立っていたサインポールを

ひょいっと触ってベスパに変えた。

そしてサインポールの横に置いてあった鉢植えふたつをヘルメットに変えた。


いつも思うけどなんて便利、至れり尽くせりだよな。


俺はバイクの免許は持ってないから運転はとうぜん古都華、でもって

俺はベスパの後ろに乗る。


「ハードボイルドだよ、マッケン飛ばすからね、しっかり捕まって」


年下女だけど頼れる姉御みたい・・・ほんっと、まじで惚れるわ・・・。

盗んだパンツ大事にするから・・・。


古都華とマッケンジーは、ほどよい関係のままハードボイルドを追いかけて

横浜の港の黄昏に染まっていくのだった。


END.

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ストロベリー♡プライム。〜メイドさんはクローン猫の夢を見る〜 猫野 尻尾 @amanotenshi

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