三人の美少女に呼び出されて
「情報が必要だ。君たちがランキングをつけるとしたら? 上位三名を教えてくれ」
「人をランキングするなど…… いいのか?」
「気持ちのいいもんじゃないが。アイドルだって人気投票はあるんだ。アイドル研究会の感想でいい」
「わかった。隠し撮りの写真でもあればいいんだが」
隠し撮りはやめろ。犯罪だ。
「あったよ! 写真が! GW中に行われた学園祭の写真だ! 生徒に配布されたこれなら合法だ!」
やはりこいつらも気にしているんだな。
名前を聞いたところ、部長の眼鏡をかけた飯山という男だ。部員の田中と佐藤。こいつらとはうまくやれそうだ。
「まず暫定ランカー一位。北条真衣だな。芸能事務所に所属して、学生ながら女優志望だ」
「絵に描いたような正統派美少女だな」
黒髪ストレートロングの正統派。学生らしい清楚感を出しながらも内巻きのパーマでふっくら感を出している。黒髪が輝いている。マニキュアを入れているな。
「次は運動部。三年生の岡島那姫。春のインターハイで惜しくも敗れて部活も辞めたようだ」
運動部。ショートカットで勝ち気な女の子だ。
日焼けした肌が健康的な魅力をアピールしている。女子にも人気があるタイプだな。
「日下部ミキ。これも根強いファンが多いが浮いた噂がない」
可愛くなる努力をしている系女子だ。こういうのは好感度が高い。巨乳だ。??スタイルは大切だが全てではない。
オリーブベージュのショートヘアに触角スタイル。清潔感もあり、魅せ方が上手い。
「これがランキングトップ3か。レベルが高いな」
「そうとも。君はどうみる?」
「第一印象で学園一の美少女を決めるわけにはいかないだろ?」
「おお」
「本職っぽい!」
何の本職だ。
「これは期待できそうだ」
何を期待するんだか。
当然のことをいったまでだが、三人が呆然と呟いている。これはヒロインガイドの司令塔である編集長の受け売りだ。
俺はどこにでもいる高校二年生だ。
「この子もおすすめかな。生駒歩美。文学系少女といった感じだ」
切れ目が特徴の美人。眼鏡でやぼったくみえるがコンタクトすると周囲を引きつけるタイプだな、これ。
さらさらのストレートは確かに文学少女といった感じである。
といってもキャラ創を作っている感はある。
むしろこの子は理系ではないのかと推測する。
「本田美優も捨てがたいぞ。クラスで三番目に可愛い系だな」
クラスで三番目に可愛い女の子には失礼だよな。ようは彼女になってくれそう、かつ可愛い子って場合に使われることが多い。
矢継ぎ早に紹介してくれるが、レベルは高い。
「さて…… ん。この子は?」
アッシュグレイに染めたヤポニテの女子がいる。睨むような目付きだが顔立ちが整っている。ツカサだな。
「さすがヒロインガイド調査員。その子は八坂司。少々派手な姿でギャル系に見えるかもしれないな」
「田中それは違うぞ。たんに母親がアパレルショップ経営ってだけだぞ」
田中の言葉に飯山が訂正を入れる。そういうフォローは助かる。
「とはいっても見た目だけだな。第一印象はよくないわ、目付きが睨んでいる感あるからランキング外といったところか。学校をサボって同学年の女子とゲーセンやカラオケに行く程度だ」
ゲーセンとカラオケ程度でギャル扱いか。お前ら平成からきたのか。
「一部の男性にはすこぶる評判が悪い。ウェイ系やチャラ男と呼ばれる部類には暴力沙汰まで起こすという噂もあるが。??我々アイドル研にそんな偏見はないぞ。何故なら八坂さんは我々のようなオタ男子にアイドル育成音ゲーの話をしてくれるんだ」
極端だな。むしろそういう系統に人気がある子かと思ったら、オタ人気が高いのか。ゲームや深夜アニメが好きだって本人が言っていたしな。
そして偏見がないアイドル研究会。見直したぜ。
「あとは我々のような男子には何故か優しいんだが、にわかゲーマーにすこぶる厳しい。ゲームをきっかけにナンパしようものなら、そのゲームのやりこみ度合いで怒鳴って追い返すという噂もある」
ゲーマーの俺にもポイントが高い情報だ。それにしても極端な対応だな。
「いい子だよなー。あの俺口調がなければもっとモテるのに」
「モテないためにやっているという噂もあるな。あれは確か……」
「よせ。噂話はよくない。調査員にはその目で見て貰おう」
そういう気遣いは助かる。先入観をもってはいけない。
「いいこというじゃないか。そういうの嫌いじゃない」
私情を交えてはいけないが、ヒロインガイド調査員たるもの。ツカサの可能性を追求したいところだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
授業が終わる。
転校したばかりなのでクラスメートとも特に話すこともない。学期末のテストを考えると今から憂鬱だ。
学校が終わりそそくさと帰ろうとすると、俺の机の前で腕を組んで立ちはだかる女子生徒がいた。
同じクラスではないが、見たことはある。
北条真衣。
この学園の美少女ランカー暫定一位だ。なんでここにいるんだ?
「ボクに何のようですか?」
授業が終わったばかりだぞ。転校生だぞ。ボク呼びなど自分でも気持ち悪いが、早く帰りたい。
気弱な青年のふりをしよう。
「あなたに話があってね。ついてきてもらうわ」
有無を言わせない迫力。怖い怖い。やや演技臭いな。演技には演技で対抗するか。
「校舎裏での決闘はごめんですよ」
「なんでそうなるのよ!」
「新人の歓迎式、ってヤツなんですよね。あなたがこの学園のボスだと聞いているから……」
「誰がボスよ! 頭おかしいんじゃないのあなた!」
「よく言われます」
呆れて帰ってくれないかな。
「とにかく! ついてきて!」
スルーされたか。
仕方なく帰り支度をすませ、彼女についていく。
連れて行かれたのは??おいおい。屋上だ。普通は鍵がかかっているだろ。
その場所には先客が二人いた。
これも初対面だが見覚えがある。岡島那姫と日下部ミキだ。
「まさか三人同時に告白とか、嬉しいなァ」
「その棒読み口調はやめたほうがいいわね。白々しくてむかつく」
ぴしゃりと北条さんに言われてしまう。
「ここに呼ばれた理由はわかっていますよね?」
日下部ミキがそう言う。
胸が大きいな。視線をずらそうにも目がいってしまうレベルってやつだ。
「へへ…… なんのことやらあっしにはさっぱり……」
目を逸らしながら心当たり満載です! 感を出す。
こういう演技なら任せろ。
「こいつ。おかしいのよ。どうおかしいかは言いにくいけど、つかみ所がないというか」
北条さん。初対面の人に対しては、もう少し言いようがあるんじゃないか。
「さすがは美少女を狙う変態覆面調査員といったところか」
呆れたように岡島さんがいう。
「人を変質者のように言うのはやめたまえ。ただの転校生だ」
「もう少し高校生らしい口調にしよう? ボケ続けられるとツッコミ疲れるからね?」
何故か日下部さんに諭される俺。
これが柳瀬川東の学園一の美少女候補である彼女たちとの邂逅だった。
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