第224話
謁見の翌日、ユリシーズ殿下と共に研究所所長と魔法師団長に会った。
「魔法陣を教えるにしても、君一人で全員教えられるわけじゃないだろう?」というユリシーズ殿下の助言のもとだ。
まずはこの二人の推薦してくれた人に魔法陣を教え、その人たちから魔法陣を広めていくという方法のようだ。
魔法陣を教えることは考えていたけれど、どうやってまで考えられていなかった。
本当にユリシーズ殿下には助けられている。
到着した部屋には、二人の男性がいた。
一人は白髪の混じったニコニコと笑顔のお爺さんで、もう一人は眉根を寄せて少し気難しそうな青年だ。
青年が口を開く。
「賢者って、こんな子供が?」
「確かに驚いた。だが、お前さんも最年少じゃろうが」
お爺さんもそう言う。
互いに自己紹介をする。
お爺さんの方が研究所所長エイベル様、青年の方はウォーレン様といって最年少の魔法師団長なのだそうだ。
すごく若そうなのに、もうそんな地位にいるのかと驚く。
自己紹介が終わるとウォーレン様から早速質問があがった。
「皇帝陛下から魔法陣が竜に対抗できるという話は聞いている。だが、正直俺は分からん。時代遅れの魔法陣はスキルと何が違う? 魔法陣を描かなければならないだけじゃないのか」
そうか。魔法陣は役立たずとして廃れた。
だから皆スキルで魔法を使っている。だからそもそも知らないのだ。
スキルで発動する魔法をわざわざ魔法陣を描いて魔法を使っているのだと思っているのだ。
私は紙をもらい、久しぶりに魔法陣を描く。
描くのは、火、水、風、地の魔法陣だ。
「
小さな
「魔法陣なら、複数スキルを使えます。いえ、スキルとはちょっと違いますね。私はこれらを属性だと思っています。つまり複数の属性を扱うことができるようになります」
二人とも何も言わないのをいいことに、魔法陣の説明を続ける。
「またスキルならこのサイズの
浮かんでいる火、水、風、地の球を少し大きくしたり、小さくしたり、柱状に伸ばしてみたり、ドーナツ型にしてみたり。
百聞は一見に如かず。
魔法陣でできることを存分に知ってもらおうと思ったのだ。
「賢者様、魔法陣を使えば複数の属性を使える。それは分かった。つまり、それを組み合わせて今のスキルでは使えないような技も使えるようになるじゃろう。だが、それで竜は追い返せるのかい?」
「いえ無理です。竜の魔力量は私たちの何倍もあります。けれど、身を守ることはできます。私がしたように」
「結界か?」
すぐさまウォーレン様が反応する。
それに対してユリシーズ殿下が解説してくださる。
説明したのは、皇帝陛下に話したのと同じ内容だ。
結界の使い手を増やす。
それが一番どこに竜が現れようとも被害を最小限にする方法だと。
そして魔法陣ならそれができると。
エイベル様もウォーレン様も研究所所長、魔法師団長ということで、魔法についてはとても詳しく、そして興味津々だ。
二人とも魔法陣を習うと言ってくれた。
「けれど、賢者様はどこで魔法陣を習ったんじゃ?」
エイベル様が問いかける。
「え? 本を読んで学びました」
そう言うと間髪入れずに今度はウォーレン様から質問が飛ぶ。
「どこで?」
な、なに? 何か悪いことしたの?
二人の勢いに押されながら、ライブラリアンの本を出す。
「私は、ライブラリアンですから」
目を見開く二人。
「その本は、本当に儂らには見えんのか?」
エイベル様がそう聞くので、本を見せる。ウォーレン様も見たいというので、見せる。
二人ともやはり見えないと大層肩を落としていた。
よくわからなくて、ユリシーズ殿下の方を見れば、殿下はなんてことないように言った。
「あぁ、君には言っていなかったか。魔法陣についての本は残っていないのだ。国一番の蔵書があるのはもちろんここ宮殿の図書館だ。だがここには1冊も魔法陣についての本がおさめられていない。オスニエルにも聞いたことがあるが、トリフォニアの図書館も同様だそうだ。だから、君が魔法陣を知る唯一の人だよ」
魔法陣は役立たず。
だから学ぼうという人がいないのだと思っていた。
けれど、それ以前に魔法陣を学ぶ術も残っていなかったのか。
私のライブラリアンの本は、どこかにある本だと思っていたが……違ったのだろうか。
<作者からのお知らせ>
近況ノートではお知らせしましたが、昨日投稿した223話を本日修正しました。
既に読んでしまった方はすみません。
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